| 「君、何番だい?」 声をかけられて自分の引いたくじを赤司に見せた。 「そうか」と言って彼はどこかに行ったかと思うと戻ってきてくじを見せ、「じゃあ、いこうか」と言い、の手を取って歩き出した。 「それ、本当に赤司くんが引いたくじ?」 「俺の手にあるのが何よりの証拠だと思うけど?」 赤司がそう言う。 (じゃあ、何でさっき一旦いなくなったの...!) 盛大に突っ込みたいが、中々難しそうなので諦めた。 「そういえば、少し顔色良くなってきたね。昼間の試合のとき思ったよ」 が言う。 今は見えないが、今日は少し顔色が良かった。 「君のお陰だな」 「何か、みんな相当赤司くんのことを心配してたんだからねー。バレてないって思ってたのは赤司くんだけだったんじゃない?」 の指摘に赤司はフイとそっぽを向く。少し照れているのかもしれない。 「今回、おどかす役がいないからな。君の悲鳴を聞くことが出来ないなんて残念だよ」 「...赤司くん。肝試し苦手なら参加しなきゃいいのに」 さきほどから何となくそんな雰囲気を感じているのだ。 しかし、赤司はのこの指摘に何食わぬ顔で「俺は平気だよ」と言う。 赤司様たるもの、苦手なものがあるはずがないのだ。 「ギャー!」と遠くから悲鳴が聞こえてきた。 「何だろうね」 とが首を傾げる。 「...そうだな。騒がしい」 赤司が不愉快そうに言う。ちょっと驚いてしまったのだ。 「そういえば、この肝試しってずっとあったの?3年の先輩が毎年恒例って言ってたけど」 「さあ?去年もあったけど、ずっとかどうかまでは知らないな。さすがに合宿の内容が悪かったらこんなレクリエーションどころじゃないだろうし」 (なるほどー...) 「ねえ、先輩から聞いたんだけど。この肝試しを通じてカップルが生まれるって」 「君は俺とそれを希望していると言うことか?」 「あらやだ、赤司くん。黄瀬くんみたいなことを言うのね...さっき、似たようなことを言われたよ」 半眼になってが返す。 (...たしかに) 赤司は少し反省した。あのワンコと同じレベルのことを言ってしまったのか、と。 「それで?」 「カップル誕生までは分かるのよ。結局、吊り橋効果でしょ?」 の言葉に赤司は喉の奥で笑った。 「おそらくそうだろうね」 「続いてたの?」 つり橋効果によるものなら、どう考えてもその気持ちは一時的なものだと思うのだ。 「引退するまでは続くらしいよ」 「へー...続ける意味は何?」 眉間に皺を寄せてが言う。赤司の言い方だと、どうも気持ちはもうなさそうだ。 「さあ?見栄じゃないのかな?それこそ、つり橋効果の余韻で部活中や、校内でもそれなりに盛り上がってしまうから、それを考えるとどうしても張ってしまうんじゃないのか?俺には理解できないけど」 「そうねー、わたしもだわ」 は肩を竦める。 「そうだろうね、君なら」 赤司は苦笑した。 は基本的に感情よりも理性を優先する。だから、彼女と話をしていて楽しい。 そして、その感情を全て自分に向けさせるにはどうしたらいいか... それを考えるのが此処最近の楽しみでもある。 (本当に、君は面白いな...) ぞくりと悪寒が走ったは赤司を見上げる。 「どうかしたのかい?」 「ううん、何かゾクッと来た」 「風邪でもひいたのかな?」 赤司の問いには首を横に振り、「何かよからぬことを考えてたでしょ」と指摘した。 「何の根拠があって?」 「乙女の勘」 一瞬きょとんとした赤司はクツクツと笑う。 「それはそれは、最強の根拠だ」 「でしょ?」とどこか得意げには顎を上げた。 |
桜風
12.8.25
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