僕たちの夏休み 4 −赤司編−






君、何番だい?」

声をかけられて自分の引いたくじを赤司に見せた。

「そうか」と言って彼はどこかに行ったかと思うと戻ってきてくじを見せ、「じゃあ、いこうか」と言い、の手を取って歩き出した。


「それ、本当に赤司くんが引いたくじ?」

「俺の手にあるのが何よりの証拠だと思うけど?」

赤司がそう言う。

(じゃあ、何でさっき一旦いなくなったの...!)

盛大に突っ込みたいが、中々難しそうなので諦めた。

「そういえば、少し顔色良くなってきたね。昼間の試合のとき思ったよ」

が言う。

今は見えないが、今日は少し顔色が良かった。

君のお陰だな」

「何か、みんな相当赤司くんのことを心配してたんだからねー。バレてないって思ってたのは赤司くんだけだったんじゃない?」

の指摘に赤司はフイとそっぽを向く。少し照れているのかもしれない。

「今回、おどかす役がいないからな。君の悲鳴を聞くことが出来ないなんて残念だよ」

「...赤司くん。肝試し苦手なら参加しなきゃいいのに」

さきほどから何となくそんな雰囲気を感じているのだ。

しかし、赤司はのこの指摘に何食わぬ顔で「俺は平気だよ」と言う。

赤司様たるもの、苦手なものがあるはずがないのだ。


「ギャー!」と遠くから悲鳴が聞こえてきた。

「何だろうね」

が首を傾げる。

「...そうだな。騒がしい」

赤司が不愉快そうに言う。ちょっと驚いてしまったのだ。

「そういえば、この肝試しってずっとあったの?3年の先輩が毎年恒例って言ってたけど」

「さあ?去年もあったけど、ずっとかどうかまでは知らないな。さすがに合宿の内容が悪かったらこんなレクリエーションどころじゃないだろうし」

(なるほどー...)

「ねえ、先輩から聞いたんだけど。この肝試しを通じてカップルが生まれるって」

君は俺とそれを希望していると言うことか?」

「あらやだ、赤司くん。黄瀬くんみたいなことを言うのね...さっき、似たようなことを言われたよ」

半眼になってが返す。

(...たしかに)

赤司は少し反省した。あのワンコと同じレベルのことを言ってしまったのか、と。

「それで?」

「カップル誕生までは分かるのよ。結局、吊り橋効果でしょ?」

の言葉に赤司は喉の奥で笑った。

「おそらくそうだろうね」

「続いてたの?」

つり橋効果によるものなら、どう考えてもその気持ちは一時的なものだと思うのだ。

「引退するまでは続くらしいよ」

「へー...続ける意味は何?」

眉間に皺を寄せてが言う。赤司の言い方だと、どうも気持ちはもうなさそうだ。

「さあ?見栄じゃないのかな?それこそ、つり橋効果の余韻で部活中や、校内でもそれなりに盛り上がってしまうから、それを考えるとどうしても張ってしまうんじゃないのか?俺には理解できないけど」

「そうねー、わたしもだわ」

は肩を竦める。

「そうだろうね、君なら」

赤司は苦笑した。


は基本的に感情よりも理性を優先する。だから、彼女と話をしていて楽しい。

そして、その感情を全て自分に向けさせるにはどうしたらいいか...

それを考えるのが此処最近の楽しみでもある。

(本当に、君は面白いな...)

ぞくりと悪寒が走ったは赤司を見上げる。

「どうかしたのかい?」

「ううん、何かゾクッと来た」

「風邪でもひいたのかな?」

赤司の問いには首を横に振り、「何かよからぬことを考えてたでしょ」と指摘した。

「何の根拠があって?」

「乙女の勘」

一瞬きょとんとした赤司はクツクツと笑う。

「それはそれは、最強の根拠だ」

「でしょ?」とどこか得意げには顎を上げた。









桜風
12.8.25


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