| 「やったー!」 パートナーを見つけたは目の前でパートナーが万歳をするのを静かに見つめた。 「これって、緑間っちじゃないけど『運命』っスね」 「そうですかー?」 気のないのことばもなんのその。彼には届いていないらしい。 「じゃ、行くっスよ!」 すぐに順番が回ってきて歩き出す。 「ちゃん...」 「なに?」 「手...繋がないっスか」 「暑いから、いや」 素気無く返された。 「そういえば、黄瀬くん」 「何スか?」 「初合宿どうだった?去年、部活にも入ってなかったんだってね」 「そうっスよ。何か苦労せずになんでもできるのってホントつまんないもんスよ」 「うん、自慢はいい」 (わらかないでもないけど) は黄瀬の気持ちはわからなくもないが、静かに突っ込んだ。 「んー、やっぱバスケって楽しいなって思ったっスね」 破顔していう。 「黄瀬くんってさ」 「何スか?愛の告白っスか?」 「それはない」 ばっさり切られ、黄瀬は苦笑いを浮かべる。 「何スか?」 「黄瀬くんってホントにバスケが好きなんだね」 「ちゃんも好きっスよ」 そう返されては黄瀬をじっと見た。凄くあきれた表情だ。 「ねえ、黄瀬くん」 (え、何かちょっと怒ってるスか?) 何で怒らせたのか黄瀬には良く分からない。 「わたしとバスケ、どっちが好き?」 「え...」 黄瀬は足を止めて固まった。 (え、どういうことっスか?) まさか、の口からそんな頭の悪そうな言葉が出てくるとは思わなかった。 「って、わたしが言うと思うの?そんな頭の悪そうな比較」 彼女が怒っているのはそこだった。 そんな頭の悪そうなことを言うようなそこらのバカ女と自分を同じにするなと言いたかったのだ。 バスケはバスケ。人は人。ジャンルが違うし、向ける想いというものも別物のはずだ。同じ『好き』でもそれは違う『好き』だ。 だから、バスケの話をしているのに、同じ高さで自分のことを言われて不愉快だったのだ。 「ごめんっス」 「わたしも大人気なかったね、ごめん」 そう言ってが謝る。 「バスケはバスケで好きとして。ちゃんも好きっス」 別物として改めて言う。 今度は怒らなかった。が、彼女は呆れたように笑った。 テクテク歩いていると悲鳴が遠くから聞こえる。 「あれ、おどかす役はいないって聞いたっスけど」 「役はいなくても、先に出発した人たちがやってんじゃないの?怪我しなきゃいいけど...」 「何でそんなことをするんスかね?」 黄瀬が首を傾げる。 「何か、この肝試しってカップル誕生の場になってるんでしょ?」 「そうだったスね。これがきっかけでオレたちもゴールインっスね」 「ちょっと黙ってみようか」 がすかさず言う。 「ちゃんって照れ屋さんっスよねー」 「もういいからね?で、さっきの話。色々端折って言うと、邪魔したいんじゃない?」 (ほぼ逆効果だけど...) 「邪魔っスか?」 「例えば、おどかされて、マネージャーを置いて逃げちゃう人がいたとする。マネージャー的にはどう思うかしら?」 「んー。『酷い!』スか?」 「わたしだったら『ヘタレ(嘲笑)』かなー?」 (絶対、ひとりで逃げないっス!) 黄瀬は固く心に誓う。 「というわけで、たぶんそろそろじゃない?」 「黄瀬ェー!」 先輩が突然茂みから出てきた。 「うわー!」 黄瀬は驚き、を抱えて駆け出す。 彼女を置いて逃げることはしない。固く心に誓ったそれを違わず実行している。 (何か、心から黄瀬くんを尊敬してしまったよ...) 抱えられているはどこか他人事のように心の中で黄瀬への敬意を表していた。 |
桜風
12.8.25
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