| これから行われる競技アナウンスを聞いて「あ、」と桃井が呟いた。 「どうしたんスか?」 「これ、テツ君が出るの」 「ちゃんもこれだって言ってたっスね」 「「...」」 2人は顔を見合わせた。 と黒子が出場するのは障害物競走だ。 男子と女子で交互に走っていく。障害物に男女変更なしだ。 先にが走者になっていた。 「来年は同じチームになりたいっス...」 黄瀬はポツリと呟いた。 (そうすればこんなにこそこそと応援しなくていいのに...) さすがに声に出して応援と言うのはチームの関係上難しい。だから心の中で応援していた。 が、ピストルが鳴ってその数秒後に黄瀬は苦笑する。 障害物が全然障害になっていない。 普通に走るよりは確かにスピードは落ちるが、それでもぶっちぎりだった。 「あれで、『ピンポン玉運び』ってのがあったらアウトだったでしょうね」 苦笑して桃井が言う。 ピンポン玉運びが球技になるかどうか微妙だが、彼女はボールが苦手なので、たぶん苦手だっただろう。 「テツ君だ!」 数組を間に挟んで黒子がスタートラインに立つ。 ピストルが鳴り、すぐに「あ、あれ...」と桃井が困ったような声を零した。 「あー、見失ったっスね」 混戦の、最初の障害物の網潜りで黒子の姿が消えた。 パン!と誰かがゴールしたピストルが鳴る。 「あ、ゴールしてるみたいっスよ」 「えー!テツ君の活躍見られなかったー!!」 嘆く桃井の後ろで 「あのパン、食べたいなー」 と最後の障害物である、紐でぶら下げられているアンパンを見ながら紫原は呟いた。 「紫原くん」 後ろから声がした。 「あ、ちん」 「これ、あげる。お菓子じゃなくてこっち食べたら?」 「僕のもあげます」 先ほど、障害物競走で獲得したアンパンを持ってと黒子が言う。 「え、ほんと?ありがとー」 ほくほくと嬉しそうに紫原はそれを受け取った。 入場門は白組側で、退場門は赤組側にある。退場門を潜って白組側に戻る道すがらに、と黒子は声をかけたのだ。 ふと黄瀬と目があったが「黄瀬くん」と名を呼ぶ。 「何スか?」 嬉しそうに返事をする彼に 「騎馬戦、気をつけてね」 と言って黒子と共に白組テントに戻っていった。 「心配してもらったっス」 「良かったね、きーちゃん」 (でも、何か別の意味のような気がする...) 首を傾げながら桃井はそんなことを思っていた。 そして、桃井の女のカンはやはり当たった。 『気をつけて』と言われても彼は気のつけようがなかった。 普段、女子にキャーキャー言われている黄瀬を妬んだ男子達が、敵味方関係なく、黄瀬を追い掛け回し始めた。 「おー、おもしれーなー」 「というか、あの背の高さで上になっている時点でおかしいのだよ」 青峰と緑間は当然騎馬の馬の役だ。 「ていうか、このために上にされたんじゃね?」 「その可能性が高いのだよ」 溜息をつきながら逃げ惑っている黄瀬の騎馬を眺めた。 「酷い目に遭ったっスー」 半泣きで黄瀬が訴える。 昼休憩はみんなで弁当を食べている。 色々と諦めの境地に入っているは重箱だ。好きなだけ食べれば良いと先ほど3段のお重を開けた。 (どうりで自転車のかごに風呂敷包みがあったってわけっスねー...) 黄瀬は何と言うか、に同情しつつもありがたくその恩恵に預かる。 「だから言ったじゃない。『気をつけてね』って」 「そうっスけどー」 「ま、怪我しなくて良かったね」 「それは不幸中の幸いっスよ...」 肩を落として黄瀬が返した。 「さて、午後からクラブ対抗リレーだが、走る順番はこの間話した通りだ」 赤司が話を始める。彼の右手にはの握ったおにぎりがある。具はおかかだった。 「第一走者から順に緑間、君、俺、紫原、黄瀬の順に繋いでアンカーが青峰だ」 なぜこんなことになったのだろうか、というのが2週間前からのの疑問だった。 |
桜風
12.10.13
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