| それは2週間ほど前のことだ。 部活が終わって、部員が集められ、赤司がなにやら話をしている。 「」と自分の名前が聞こえたような気がしたが、はそもそも選手に混じって自分の名前が呼ばれるはずがないと思っていたので、気のせいとして処理をした。 しかし、 「君!」 と赤司に呼ばれる。 「はい?」 返事をして彼の元へと足を向けた。 「なに?」 「先ほどのは、聞こえていなかったのか?」 「あー、何か名前を呼ばれた空耳なら...」 赤司は溜息をつく。 「空耳じゃない」 「え、そうなの?!だって、何かのオーダーの発表でしょ??」 が問い返すと青峰が苦笑して「再来週の運動会のクラブ対抗リレーの選手のな」と言う。 「へ?わたし、マネージャー」 「所属は?」 「...男子バスケットボール部」 「何の問題もないじゃないか」 赤司が言う。 「いやいや、あるでしょ。何で選手を差し置いてマネージャーが走るデスカ」 「なぜ片言になるのかわからないが...実力順だ」 「だって、バスケ部って言ったらドリブルしながら走るんじゃないの?」 大体のクラブはその特色を出していく。 だから、柔道部はバトンの代わりに畳を背負って走ったり、テニス部はラケットをバトンにしたり。 本気で走るのは、陸上部と野球部とサッカー部と相場が決まっている。 つまり、バスケ部といえばバスケットボール。 ドリブルをしながら走るのだろうと思っていた。だったら、自分は規格外の論外だ。 「これは、勝負だ」 「あ、うん。そっかー...」 これまではどうかわからないが、どうやら赤司がキャプテンになってからは、負ける可能性を一切排除して、バトンを繋ぐ、普通のリレーをしているのだろう。 「で?わたし??」 「ああ。ここにいる全員とまでは言わないが、何人かも見たことがあると思うが、君は不用意な発言をした青峰を何度も追いかけ、追いついている。ある程度の距離までは俺たちと同等な速さを持っているということだ。そして、クラブ対抗リレーは1人100m。この距離なら君はこの部のトップ6人に入る」 (否定できない...) は遠い目をした。 そして、ここまで言い切った赤司が撤回するとは思えないので、早々に諦めたのだった。 そして、本日に至る。 午後最初のプログラムでクラブ対抗リレーが行われる。 入場門に集まった他の部の部員達は男子に混じって女子がいることを不思議がっていた。 「おいおい、バスケ部。勝負を捨てたのかよ」 気安く赤司の肩に手を置いて、そういったのは水着姿の水泳部だった。既に引退した元部長が出場するようだ。 赤司はギロリと彼を見上げた。 その迫力に押されて彼は赤司の肩に置いた手を降ろす。 スタートのピストルが鳴る。 緑間が走り、トップでにバトンを渡した。 「!」 「はーい」 そこで周囲は息を飲む。 たった100mだからこの程度で済んだのだろうと彼らは評価した。 彼女は、他の部のエース級の選手を置いてぐんぐんと伸びていく。差が開いていく。 「はい、赤司くん」 赤司にバトンを渡してはそのままトラックの内側に入る。 「 、見てみろ」 緑間が声をかけて背後を振り返った。 先ほどまでの存在を舐めていた他の部の選手達の表情が硬くなっている。 「やー、それよりもあっちだわー」 は苦笑して入場門で入場を待っている女子部のほうを見た。 陸上部が獰猛な肉食獣の目をしている。狙われている、確実に。 責任を持って、赤司に事態を収拾してもらおうとは決めた。 男子バスケットボール部はぶっちぎりで優勝した。 「水泳部は、勝負を捨てていたのですか」 赤司が、退場門に向かいながら、先ほど肩に手を置いた水泳部の元部長に声を掛けた。 「赤司」 緑間が眉間に皺を寄せて窘めた。 (ま、バスケ部を、というよりもちゃんを侮辱されたっスからねー) そんなことを思っていた黄瀬は赤司の一言で溜飲を下げた。 「...校庭にビキニって、結構セクハラの類に入る気がするんだけど。あんま見たくない」 「つか、女子部は何で水着じゃねーんだよ。ふざけんな。ユニフォーム着用って書いてあったろう」 が呟き、青峰が抗議している。 「書いてないよ。書いてあったら、わたしはどうしたらいいのよ」 「お前はどーでもいいんだよ。クラブ対抗リレーだろーが。うっわ、やる気出ねー」 「欲望に忠実な方で...陸上部は短パンみたいよ?ほら、すらりと伸びた脚が魅力的な」 「脚よりおっぱいだ」 「...相変わらず」 は心底呆れて肩を竦めた。 その後、借り物競争で紫原に小脇に抱えられたり、フォークダンスでなぜか人数の関係で男子の方に入れられてしまって桃井と躍ってみたり。 何だか賑やかで楽しい運動会を体験できた。 ちなみに、が男子の方に入ると聞いた黄瀬の落胆振りはその後当分の間、語り草になった。 そして、今年の運動会の結果は赤組勝利となった。 「集合!」 運動会があろうと、放課後は部活である。 余韻に浸るまでもなく日常に戻っていく。 (楽しかったなー...) そう思いながら体育館の中を歩いている彼女の表情を見た彼は、知らずその表情を柔らかくしていた。 |
桜風
12.10.13
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