帝光祭 1





学校中が俄かに浮き足立っていた。

祭りの前というものはそういうものらしい。

「はあ、クレープの...」

気のない相槌を返す

「私も作る係だから!」

と桃井が弾んだ声で返す。

「...保健所が入ってくるじゃない?」

「どういう意味よ」

「胃薬はどれだけ準備したら良いかな?」

「だから、どういう意味よ」

「まあ...今、桃井の頭に浮かんでいる単語のままですよ」

が返すと桃井は苦い表情を浮かべる。

のところは?」

「展示。模擬店やるとか言う人一人もいなかったよ」

の答えに

「意外ねぇ」

と桃井が返す。

「そういうクラスがあるから模擬店が出来るクラスが増えるのよ」

「そうかもねー」

とりあえず、にクレープの引換券をあげようと思っていたが、思いなおした桃井だった。



帝光祭当日。

はひとりでてくてくと歩いていた。

文化祭は何をどうすれば良いのだろうか。

良く分からないが、模擬店で何かを買ったりするものなのだろう。

適当に模擬店を冷やかしたりしていると「あの」と誰かに声を掛けられた。

知らない男子だ。

とりあえず、クラスメイトの顔と名前は頭に入れている。

あと、バスケ部の一軍も。

(しまった、二軍とか三軍の人かな?)

そんなことを思っていると

「スタンプラリー、一緒に出てくれませんか」

と言われる。

「スタンプラリー?」

「はい。クイズ研の」

「あー...」

(なんか面倒くさい)

そう思ったは「すみません」と断る。

「先約が?黄瀬とか..緑間。赤司?青峰..は桃井さんだろうし。まさか紫原?」

意外と食いついてくる。

はにこりと微笑み、窓から飛び降りた。頭上から何か声が聞こえたが、気にせず、人ごみの中に身を隠すことにした。

人ごみの中に紛れつつ周囲を覗うと、どうもそのスタンプラリーと言うのは人気のイベントらしい。

2人1組での出場だとか。

(わー、面倒くさそう)

はとりあえず、逃げる算段をつけ始めた。


「桃っち」

黒子のクラスでカレーを食していると黄瀬がやってきた。

「きーちゃん、どうしたのそれ」

「あー、ウチのクラスの衣装」

「...何やってんだっけ?」

「演劇ですか?」

黒子も問う。

「縁日っスよ?」

「縁日でそれ...?!」

「あー、クラスの女子に衣装任せていたらこうなっちゃったんス」

「何をどうしたら、縁日でそんな軍服で勲章ジャラジャラで...」

「さあ?って、そんなことより。ちゃん知らないっスか?」

黄瀬が桃井に問う。

「知らない!」

何故か彼女は怒った。

「お、オレ。何か気に障るようなこと言ったっスかね」

黄瀬が黒子にそっと問う。

「いえ。さんの居場所を聞いただけなので。もしかしたら、喧嘩していたのかもしれませんね」

(それはまずったっスね...)

黄瀬は少しだけ反省し、「あー、じゃあ。他所当たってみるっス」と言う。

「黄瀬君は、さんに用事があるんですか?」

「そうっスよ。スタンプラリー、一緒に出たいから誘うんス」

「え、黄瀬君も出るんですか」

黒子が若干嫌そうに顔を顰める。

「そうっス。優勝目指して2人で頑張るんスよー」

黄瀬は素敵な笑顔を黒子に向け、

「じゃあ、お邪魔したっスねー」

と黒子のクラスを後にした。


「お帰りなさいませお嬢様」

「...わー」

遠い目をした客に黒子は目を丸くする。

さん」

「どうしたの、ここ」

「華麗にカレーを振舞うというのがコンセプトだそうで」

「...へー。それで執事さんですかー。緑間くんも連れてきてみたらよかったのに。執事側として」

「えっと...あの、恥ずかしいので『執事』で弄るのやめてください」

「はいはい。では、執事さん。メニューをくださるかしら?」

席に案内されてが言うと

「畏まりました」

とやはり執事な黒子に、噴出すのを堪えた。

「そういえば、さっき黄瀬君が探してましたよ」

メニューと水を持ってきて黒子が言う。

「そうなんだ?とりあえず、面倒くさそうなので絶賛逃亡中」

「ぜひ逃げ切ってくださいね」

の言葉に黒子が力強くそういった。

「へ?あ、うん。分かった。全力で逃げ切る」

「僕、さんのこと信じてますから」

「う、うん?ありがとう」

(良く分からないが、逃亡を応援されてしまった...)

首を傾げながら、はメニューに視線を向け、本日の昼食にチーズカレーを注文したのだった。









桜風
12.12.12


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