| 学校近くの神社で待ち合わせとなっていた。 足元には、テツヤ2号。彼は軽い足取りでの隣を歩いている。 先日の打ち上げのとき、有志で初詣に行かないかという話が出た。 田舎に帰る人たちもいるだろうから、『有志』と声をかけたのだろう。 実際、田舎に帰る人もいたので、ここに集まるのはごく一部のはずだ。 日が昇ったばかりのこの時間。既に神社は人で溢れかえっていた。 神社前の鳥居に集合にしていたが、これまた同じように鳥居に集合となっているグループも多く、正直、どのグループかを確認するのが大変だった。 ただし、の場合は足元のテツヤ2号のお陰ですぐに合流できた。 やはり彼は優秀なナイトである。 「おはようございます」 声をかけると口々に挨拶が返され、年始恒例の「今年もよろしくお願いします」と続く。 「さん」 名前を呼ばれて振り返ると黒子が立っていた。 「おはよう」 「おはようございます。今年もよろしくお願いします」 「こちらこそ、よろしくね」 そう言っては笑った。 「ちょっと、皆さんに挨拶してきます」 「あれ?今来たの??」 黒子の言葉にがそう返すが、黒子は微笑んで「今年最初に言葉を交わす人はさんと決めていたので」と言って他の部員達に声をかけにいった。 「なあ、2号も連れて行くのか?」 木吉が言う。 リコは田舎に帰っていて今回は不参加だ。というわけで木吉が仕切っている。 微妙に心許ないことである。 「そうですね、危ないですよね...」 が呟く。 一緒に連れて行くとしても、足元を一緒にとなれば踏まれるかもしれないし、抱っこして歩いて人ごみの中に行けば窒息の可能性がある。 「繋いどくか?」 河原が言う。 「そうだね。けど、誰かに連れて行かれないかな?」 が心配そうに言うと 「2号はしっかりしています。連れて行かれそうになったらちゃんと逃げるんじゃないでしょうか」 黒子がそういった。 「うーん、そうだな。よし、ちょっと待っててもらうことにしよう」 木吉がそう言って、膝を折った。 「2号、お前はちょっと留守番だ」 「わうッ!」 抗議するように彼は鳴いた。 「...ん?2号はなんて言ったんだ?」 木吉がを見上げてきた。 「えーと、『イヤだ』とかじゃないのでしょうかー」 (わかるわけないじゃないですか) 「、凄いなー。分かるのか...っ!もしかして、『ホンヤクコンニャク』を「持ってません」 最後まで言わせずには突っ込んだ。 「未来の世界の猫型ロボットの知り合いはいないので」 (日向さーん!) ここにいない(主にツッコミ役として)頼りになるキャプテンの顔を思い浮かべ、助けを求めてみた。 は膝を折ってテツヤ2号の前足を持ち上げるように抱えた。 「ごめんね、危ないからちょっとここで待ってて」 「くぅん...」 テツヤ2号はしょんぼりした。尻尾も耳も下がってしまった。 「帰りは、好きなだけお散歩に付き合うから」 が言うと少しだけ尻尾が揺れた。 「わう」 仕方なく納得してくれたようだ。 「ありがとう」とテツヤ2号の頭を撫でる。 テツヤ2号は嬉しそうに目を細めていた。 「凄いな、。犬を説得するとは...やっぱりホンヤクコンニャ「もってません。ほら、行きましょう」 そう言って立ち上がり、は人ごみを見た。今更だが、げんなりした。 「肩車してやろうか?」 「結構です!」 は強く断り、気合を入れて人ごみに突進した。 (あー、ムリ。もうムリ...) ゆっくりと境内を進んでいくが、どうにも人の多さに既に疲れている。 「さん」 いつの間にか黒子が隣に立っていた。 「あー、黒子くん。あれ?」 「どうかしましたか?」 「全然疲れてないっぽい」 の指摘に黒子は困ったように笑った。 「僕、人ごみって結構得意なんです」 「えー、いいなー」 「抵抗しないことですよ。人の流れに逆らおうとしたら疲れますから」 黒子のアドバイスは最もだが... 「てか、みんなともはぐれたね」 「そうですね。これ以上はぐれないように気をつけないといけませんね」 そう言って黒子はの手を握る。 「そうだねー。集合の意味ないよね」 黒子は、自分に手をとられたことについて特に気にしていない様子のに安堵するやら、つまらないやらで少し複雑な気持ちになる。 2人で流されるままに流され、賽銭箱の前に辿り着き、賽銭を取り出すのに手を離した。 黒子は先ほどまでと繋いでいた手を眺める。彼女の体温がなくなっただけでとても冷たく感じた。 隣ではが早速お参りをしており、黒子も慌ててお参りをする。 「行こう」 そう言ってが黒子の手を取った。先ほども移動のときに繋いでいたのだからお参りが終わればやはり繋ぐという程度の認識だった。 それに対して、黒子の心臓が小さく跳ねた。 「え、さん」 「なに?」 はきょとんと振り返る。 「あ、いえ。行きましょう」 そう言って黒子が歩き出したのでも足を進める。 人ごみから少し離れてはぴょんぴょん跳んだ。手は繋いだままだ。 「木吉さんあたりなら目に入りそうなのにねー」 (現代人は意外と背高さんが多いのかなぁ...) 自分の周りにそういう人物が多いから違和感がないのだが、アレはでかすぎる方だと思っていた。 意外とそうでもないのかもしれない。 ぴょんぴょん跳ねているの隣の黒子は視線を周囲に向ける。 「さん」 「いた?」 「いえ。おみくじ引いてみませんか?」 「は?あー、うん。いいよ」 は頷いて黒子と共に社務所に向かった。 それぞれおみくじを引き、一斉に開いた。 「『中吉』です。さんは?」 「『大吉』」 の言葉に黒子は驚き、彼女の手元を覗き込む。 「本当だ。凄いですね」 「んー...」 は困ったように笑った。 大吉は頂点だから、あとは落ちるだけと言う人もいる。通るもそのタイプなのかなと思い、黒子が慰めの言葉を掛けようと口を開いた。 「わたし、大吉しか引いたことないから」 「は?」 変な声が漏れた。 「え、大吉しか引いたことがないんですか?」 「まあねー。こう見えて、ラッキーアイテムで補正した緑間くんにもじゃんけんで負けたことないし」 は苦笑する。 「そうなんですか?」 「うん。運だけは良いんだけど。でも、運って人それぞれ上限があって、それを使い果たしたらなくなっちゃうとかいう仕組みだったら、わたしもう相当やばいんだよね」 が言う。 「だったら、僕の運を分けてあげます」 「はい?」 が問い返した。 「僕は、まあまあばかりなので、まだまだ残っていると思いますよ」 黒子が言う。 は思わず噴出し、黒子はきょとんとした。 「僕、変なことを言いましたか?」 「ううん、マジメに返されたので、つい。ありがとう。その気持ちは貰っておきます」 (本気だったのに...) 少し拗ねながら黒子は改めて自分の引いたおみくじを見た。 さすが『中吉』。まあまあなことが書いてある。 でも、悪くない。とりあえず、願いは要努力で叶うことは叶うようだ。 他力本願は自分の趣味ではない黒子はそれで充分だと思った。 隣に立つがキョロキョロしている。 「どうかしたんですか?」 「これ結ぶの、どこかな?」 「読んだんですか?」 「正直、あまり興味がないから」 が苦笑した。 おみくじがたくさん結んであるところを見つけてはそこに結ぼうとした。 「あまり背が高いわけじゃないですけど」 そう言いながらのおみくじを取って背伸びをして高いところに結ぶ。 「これでさんの運が神様に還元されて、戻ってくるといいですね」 黒子が言う。 「そっか。そうだね。返せば良いんだ。ありがとう」 は新発見に笑った。 「帰り、2号の散歩するんですよね」 黒子は自分のを楽な位置に結びながら問う。 「うん。約束したからね」 「僕も一緒に行ってもいいですか?」 黒子が問う。 「うん、いいよ。テツヤ2号がどれくらいで満足してくれるかわかんないけど」 「大丈夫です」 「なら、ご一緒お願いします」 「はい」 2人は待たせているテツヤ2号の元へと足を向けた。 |
桜風
13.1.1
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