| 昼前ののんびりした時間、は散歩に出ていた。 朝のロードワークでテツヤ2号の散歩は終えている。 そして、母親が彼のことを気に入っているので、今の彼は彼女のおもちゃとして留守番となっている。 父親が一緒なので、あまり無体なことはしないだろう。 ひとりだったら、さすがに連れて出ていたが... 「」 名前を呼ばれて振り返った。 「あけおめー。ことよろー」 適当な挨拶を口にすると 「おー」 とやっぱり適当に返って来た。 「珍しいね、ひとり?」 「あ?ああ、さつきのことか。あいつ、親戚づきあい。着物着てたぜ」 「わー、大変」 苦笑してが言う。 「は?」 「お散歩。お母さんの面倒見なくて良いと楽だからー」 の言葉に「ひでーな」と青峰が笑った。 「青峰くんはどこかに行く予定だったの?」 「いや、オレも散歩。けど、そうだな。初詣付き合えよ」 「いいよ。あ、でも、人ごみ好きじゃない」 「ちゃんと迷子になんねーように手を繋いでやるから」 そう言って青峰はの手を取って、近くの神社に向かった。 「神社に拘り無いんだ?」 少し驚いたようにが言う。自分の家の近く神社とか、大きな神社とかに行くのかと思っていたら、青峰は「ここでいっか」と言って目に入った神社に足を向けたのだ。 「あ?ああ。どっこも一緒だろう」 「氏子が聞いたら憤慨しそうな一言だね」 「いいだろ、別に」 めんどくせーと言いながら青峰は境内に向かった。 「お前、そんなにちっせーけど。大丈夫か?」 「自分がアホみたいにでかいだけと自覚して言え!」 が反論した。 「へいへい、ちびっこはうるせーなー」 青峰の言葉に気を悪くしたは、青峰と繋いでいる手にギューッと力を入れた。 「いてぇ!怪力女」 「デリカシーのなさは相変わらずね!」 そんな感じに、周囲から見たら「正月早々痴話喧嘩してんじゃねーよ」という程度の口喧嘩をしながら賽銭箱の前に辿り着く。 お賽銭を出して、手を合わせてお参りした。 (変なのー) は、ふと今の状況が可笑しくなった。 同じ学校に通っているわけでもない、寧ろライバル校に通っていると青峰が一緒に初詣とは... 思わず「ふふふ」と笑いが零れる。 一応、礼儀なので手を合わせてお参りをしているポーズを取っていた青峰はチラとを見た。 (何笑ってんだ...?) 賽銭箱の前から避難して一息つく。 「」 「んー?」 は境内の中をキョロキョロしていた。露店もある。 「お前、さっきなんで笑ってたんだ?」 「ああ。青峰くんとわたしが、今並んでお参りしてるのが可笑しかったから」 「可笑しいか?」 「学校違うし、通っている学校は所謂ライバル校だし。何か奇妙だなって思って」 「ふーん」と相槌を打った青峰はふと気付く。 「お前、お参りしてねーじゃん」 「ははっ」 は軽く笑って誤魔化した。 「何か食うか?」 露店を見て青峰が言う。 「奢るぜ。初詣に付き合わせた礼だ」 「...それなら」 は理由なくご馳走されるのが好きではない。 だから、基本的に理由がない中で奢ってやるといわれれば断る。 それを知っている青峰は適当に理由をつけた。 「でも、青峰くんはお年玉のためにお正月は大人しくしている人だと思ってた」 「はっ!もう貰ったんだよ。お年玉を貰ったら付き合うつもりはねーよ」 「わー、なんだか詐欺師みたい」 「うるせーよ。んで、何食いたい?」 「たいやき」 「たいやき?あったかぁー?」 そういいながら青峰は並んでいる露店を眺める。 「大きいと便利だねー」 「おー、ちっせーと不便だろー」 ぺちぺちと青峰を叩いて抗議する。 やはり少し痛いので彼女の手を取った青峰は、「あったぜ」と言ってそのまま手を引いて歩き出す。 その後、と青峰との間で、たいやきは頭から食べるか尻尾から食べるかについて、これまたひと悶着があった。 ただし、傍から見ればこれまた痴話喧嘩のレベルで、行きかう人は大層迷惑に思ったと思われる... |
桜風
13.1.1
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