| 情報収集から戻って体育館の中をのぞく。 「お先に失礼します」 そう言っては帰るところだった。 「間に合った...!」 そう言って桃井は急いで体育館の中に入る。 「」 「わー...わたし、もう帰るところ」 そういう彼女を桃井は引っ張って視聴覚室へと連れて行った。 本日収集したデータをに渡す。 彼女はそれを受け取って整理していく。 の傍らには桃井が近くのコンビニで買ってきた、コンビニスイーツが置いてある。 この手伝いをする彼女への報酬に桃井が買ってきたものだ。 は普段あまり買い食いをしないらしい。だから、コンビニスイーツが珍しいと前に言っていた。 この情報は桃井しか知らない。 他の人、特に黄瀬と緑間に教えでもしたら自分がせっかく気付いた報酬が役に立たなくなる。 毎日何かしら買って彼女にプレゼントしてそうだ。 「けどさ、桃井は去年これを1人でやってたんでしょ?今年もできるでしょー」 そういいながらも手を動かし続けるに 「去年出来たし、今年もできるだろうけど。外から帰ると疲れるのよねー」 と悪びれることなく桃井は言う。 彼女は溜息を吐いた。 「それに、は作業が早いもの。さっすが!」 ちょっとだけ持ち上げた。本心だが、持ち上げたように言ってみた。 彼女はちらと桃井を見て軽く溜息をつく。 「でね、テツ君が...って、聞いてる?」 「うん。ウチの今日の晩御飯はコロッケにしようと思ってるよ」 「聞いてないじゃない!」 膨れっ面で桃井が言う。 「...桃井、あんた暇そうね」 「だから、さっき言ったじゃない。外を回るって結構疲れるのよ」 「中のマネージャーも疲れるのよー」 が適当に返す。 桃井の持って帰ったデータを整理している彼女の隣で、桃井は想い人の話をしている。 「中2女子が何で恋バナに興味持たないのー」 ぷぅと膨れて桃井が言う。 「桃井の周りには中2女子がたくさんいるでしょう。恋バナ好きな友達に話を聞いてもらいなって」 自分は興味がないといわんばかりのに「けちー」と零す。 桃井のクラスの友人には、それはそれは恋バナが好きな子がいる。 だが、何と言うか...これは、とても純粋な大切な気持ちなのであまりからかわれたくない。 その点、はからかうことないだろう。 真剣に聞いてもくれないらしいというのは、今初めて良く分かった。 「じゃあ、さ」 「なに?」 が手を止める。データの整理が終わったらしい。 彼女は作業が終わるまで基本的に手を止めない。手を止めたときが作業の終了で、そこでやっと報酬に手を伸ばす。 今日は、『なめらか生クリームプリン』なるものを買ってみた。 「いただきます」 そう桃井に言って彼女はスプーンでそれを掬う。 「美味しい?」 「ちょっと甘いかなー。疲れてるから今は丁度いいけど」 そういいながらは桃井にそれを渡す。 桃井は受け取って一口食べた。 「えー、丁度いいよ」 「そう?」 桃井の返してきたプリンを受け取り、口に運ぶ。 「そうそう、さっきの話の続き」 「なに?」 少し面倒くさそうにが返す。 「は、きーちゃんと、みどりんのどっち?」 「何でわたしだけそんな究極の選択を迫られてるの?」 真顔で返された。 「えー...きーちゃんはカッコイイし、みどりんは意外と優しいと思うよ。あ、勿論テツ君の方がカッコイイし、優しいけどね」 少し前、桃井のハートをガシッと掴んだのは黒子のアイスのアタリ棒だった。 部活帰りに皆でアイスを食べている姿を桃井は少し羨ましがりながら見ていた。 男子の中に入ってアイスをワイワイ食べるのが少しだけ気が引けていた。がいれば、おそらく入れたのだろうが、彼女は帰る方向が逆なので大抵正門で手を振って別れるのだ。 そんな桃井の心境を察したのか、黒子は桃井にアイスのアタリ棒をあげた。 その行為が桃井の心にドストライクだったため、彼女は黒子を意識し、そして、彼に向いている感情が『恋』だと最近自覚した。 「じゃあ、赤司君?」 「もう一度言おうか?何でわたしは究極の選択を迫られているの?」 やはり真顔で返された。 「えー、つまんない。ねえ、今度ダブルデートしない?」 「シングルデートにしておいて」 つれなく返された。 「えー、けちー」 「はいはい、ケチですよ。今日はもういい?今日の晩御飯はコロッケにするってさっき決めたの。下拵えにちょっと時間が掛かりそう」 「あ、うん。ありがとう」 そう言って桃井は彼女が整理したデータを見る。 「ああ、そうだ。今度新しいデジカメが導入されるんだって。使い方教えて」 「そこまでが桃井の仕事だと思うんだけどね」 溜息を吐きながらは椅子から立ち上がる。 「よろしくー」 そういった桃井に軽く手を挙げては視聴覚室を出て行く。 「うーん、やっぱり...」 彼女のまとめたデータを見てそれを元に桃井は解析を行う。 次の公式戦の緒戦に当たるチームのデータだ。 「ねー」 仕事が早くて正確。そして、面倒くさがりに見えて、意外と面倒見がいい。 彼女のことを素直に『友人』と言えなのは、おそらく意識しているからだろう。 ――ライバルとして。 |
桜風
12.6.30
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