誕生日プレゼント





 学年がひとつ上がって、そろそろひと月経とうとしていたころ、練習をさぼりがちな青峰が珍しく練習に出てきた。

それを見てほっとしている桃井を横目には首を傾げる。




練習が終わり、ほとんどが残って練習をする中、すでに帰り支度を済ませたらしい青峰が声をかけてきた。

「なに?」

「お前、今度の連休、暇だろう?」

「なぜ決めつける?」

そう問うが、青峰はどこ吹く風で、「ちょっと付き合え」という。

「練習試合、入ってないっけ?」

「入ってねーよ。さつきが何も言ってねぇ」

「はー、そうですか」

「つーか、って意外とスケジュール頭に入れてねぇよな?」

「入れなくても周りが騒ぐから」

なるほど、と青峰はうっかり納得してしまった。

ともあれ。一方的にではあるが約束を取り付けた青峰はさっさと帰って行った。



「ホントに来た」

「はい、帰りまーす」

「ちょっと待てって」

今度の連休こと、本日。青峰が一方的に約束をしていたため、は一応そちらに足を向けたのだった。

すると、青峰はの顔を見た途端に驚きの声を漏らした。

それを聞いては回れ右をしたのだが、腕を掴まれてしまった。

「それで?」

体をひねって青峰を見上げると少しほっとした表情を見せた。

「さつきの誕生日が近いんだよ」

「...へー」

「プレゼント選ぶの手伝ってくれ。というか、お前が選んでくれ」

「なんで今更?だって、ずっと誕生日のお祝いしてたんでしょ?」

当然の質問を向けると青峰はふいと顔を逸らす。

「さつきも女の子なんだからって、うちの親がダメ出しし始めたんだよ」

「素直に言うこと聞く子だったのねー」

からかいながら言うと

「うるせー」

と言いながら少しだけ乱暴にの手を引いて青峰が歩き出した。

「で?予算とかそういうのは?」

が聞くと、青峰が答える。

「うーん。こっち」

そう言っては青峰の腕を引いて歩き出す。


辿り着いた先は雑貨屋だった。

「あ?」

かわいらしい小物とかあって、正直青峰は居心地が悪い。

「ここ?」

「うん。桃井っていつも髪括ってるでしょ?だったら、髪留めとかそういうのは?女の子らしいよ」

「んで、どれがいいんだよ」

「青峰くんなら、桃井の髪留めとか見てるでしょ。かぶらないけど可愛いのをあとは君が選ぶのだよ」

が言うと青峰の顔がこれまで見たことがないほどゆがんだ。

「すごいねー」

「何がだよ」

「いえいえ。ほら、色とかなら覚えてるんじゃないの?」

「覚えてるかよ。つか、そういうのお前んが得意だろ」

そう言われては肩を竦めた。

「そんな注目してみてないもん」

「オレだってそうだよ」

「じゃあ、桃井の好きな色とか?」

が言うと青峰が目を瞑って眉間に深い皺を刻みみながら低く唸っている。

長身の男子がかわいらしいヘアーアクセサリーの前で唸る。

(シュール...)

その光景に笑いそうになるのを堪えては彼の答えを待った。

「これ、てなんだ?」

「シュシュいいんじゃない。髪結うのに使えるし可愛いし」

「レジは、頼むわ」

ぐったりして青峰が言った。

「はいはい、よく頑張りました」

そう言ってはレジに向かう。


青峰はすでに店を出ているようで、姿が見えなかった。

あれだけ大きいのだから姿が見えないということは店内にはいないと判断してもおかしくないだろう。

店を出ると、ベンチに疲れ切った青峰の姿を見つけた。

「桃井は凄いねー」

苦笑して青峰の元へと足を向ける。

「はい、プレゼント包装してもらったよ。誕生日、いつなの?」

「5月4日..のはず」

「ふーん」

最後に付け足した言葉は、照れ隠しか。はたまた本当に忘れているのか。

「わりぃな」

「そう思うなら、今度から自分で頑張って」

の言葉に青峰はため息を吐いた。

「なあ。今日の礼になんか食って帰らね?」

「いいよ。お礼なら受け取りましょう」




ゴールデンウィークであっても部活はある。

今日は青峰はサボったようだ。

「桃井」

練習後の片づけが終わってが桃井に声をかけた。

「なに?」

「これ、あげる」

「?」

桃井は首を傾げて受け取った。二つ折りにしたルーズリーフだ。

「何?」

「プレゼント」

益々訳が分からない。

「え、どういうこと?」

「参考にしてみて」

そう言っては駐輪場に向かっていった。

「何なの?」

首を傾げて受け取ったそれを開いてみた。

「レシピ?」

から受け取ったそれは、料理のレシピだった。

分量、火を通す時間などがきちんと書いてある。

付箋が貼ってあって「おめでとう」と書いてある。

何がだろう、と思って今日、黄瀬やほかのマネージャーにも同じ言葉を言われた。

ただし、彼らは「誕生日」という単語をつけてくれたのでわかった。

「何だ、ちゃんと聞いてたんだ」

以前彼女に話をしたことがある。

美味しいお味噌汁を作りたい、と。

将来、結婚したら旦那様に美味しいお味噌汁を飲んでもらいたいと言っていたのだ。

その話を聞いていたは例のごとく「ふーん」とそっけない返事だった。

「よっし!」


夜になって青峰がやってきた。

「おーい、さつき」

「青峰君。ちょうどいいところに」

そういって彼女が差し出したのは椀に注がれた味噌汁だった。

「え?」

「飲んでみて」

「は?な、なんでだよ」

抵抗しつつも、椀の中の味噌汁が意外と普通っぽいので首を傾げる。

「いいから!今日、さぼったバツよ」

そんなことを言われて、青峰はぐっと詰まって一気に飲んだ。具が入っていないのが幸いした。

「あれ?」

「どう?」

「うめー」

「でしょ!」

弾んだ声で桃井が言う。

「なんで?死ぬの覚悟してたのに」

「青峰君!!」

桃井が声を上げて抗議をするが、青峰は驚いた表情で空になった椀を見つめていた。

が、誕生日プレゼントでレシピくれたの」

「あいつ、ほんと救世主だな!」

「もう!!」

拗ねた桃井がふと気づく。

「なんでが私の誕生日知ってるの?」

「ああ、オレが教えたから」

「どうして?」

「...それ、選ぶの手伝ってもらったからだよ」

テーブルの上に置いたものを顎でしゃくって青峰が言う。

「これ?」

そう言って開けるとかわいらしいシュシュが出てきた。

に?」

「選んだのはオレ..だよ。発想は

「ふーん...ありがと」

「おう」









桜風
13.5.4


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