| 更衣室で着替え、駐輪場に向かう。 「君」 「わあ!」 暗闇からにゅっと現れた人物に驚きの声を上げてしまった。 現れたのは赤司で、知らない人物ではない。驚いてしまったことの方が失礼なような気もする。 冬のこの時間は既に日もとっぷり落ちていて、外灯が頼りになるが、それもそこまで明るいものではない。 校内でも不審者には気をつけるようにと教師がHRに注意喚起するほどだ。 「驚かせてしまったようだね、すまない」 「ううん、こちらこそ失礼しました」 「明日、君は何か用事があるかい?」 問われて考える。 明日は12月の祝日。 その翌日は父親と共にケーキを焼いたり、チキンを焼いたりと忙しくなるが、明日はまだ忙しくない。 買出しは大抵両親が行くものだし。 「ううん、特に今のところは」 「では、明日。駅前に..そうだな。午後2時に来るように」 「ん?」 (何の行事だろう...なんかあったっけ?) 何も聞いていないが、もしかしたら先ほど決まったことなのかもしれない。 「うん、わかった」 「では、また明日」 そう言って赤司は自主練のために体育館へと戻っていった。 「あ、制服で行ったほうがいいのかな?」 振り返ったの視界には、すでに赤司はいなかった。 翌日、悩んだ挙句、制服を着て集合場所に向かった。コートを着ていると制服というのも分かりにくいし、そんなダサいデザインの服でもないし。 駅前に着くと、カップルでごった返していた。 「わー...」 赤司は驚くほどの背の高さはない。普通の中学生の男の子の大きさだ。 「見つかるかな...」 「誰がだい?」 「わあ!」 背後から声を掛けられては声を上げた。 黒子のミスディレクションを上回るその気配の無さには何度も驚かされる。 黒子の場合は、気づかないことを前提に構えているので突然現れても驚かないのだが、赤司はそうではないので、突然出てくると驚く。 「どうして制服で?」 赤司が心底不思議そうに首を傾げた。 「え、部活の行事かと思ったから...」 「ああ。言葉が足りなかったんだね。すまない、俺の完全なプライベートだよ」 「あ、そうなんだ?」 は首を傾げる。 (では、何故赤司くんのプライベートに誘われているのかしら?) 「では、行こう」 「あれ、みんなは?」 「俺は君しか誘ってない」 「あ、そうなの...」 益々不思議に思った。 連れて行かれた先は国立の体育館。何か大会が催されているようだ。 「何があるの?」 「高校のウィンターカップだよ」 「はぁ...高校生は、冬休みも大会があって大変だねぇ」 他人事のようには言った。 「インターハイと並ぶ大きな大会だよ」 そういいながら赤司は適当に席を見つけて座る。 1試合見て赤司が立ち上がった。 「もういい。行こう」 「良いの?まだまだ試合はあるみたいだよ。ってなに...こんな遅い時間まで試合するの?!」 トーナメントに書かれている試合開始予定時刻を見ては驚く。 「短い期間だしね。それは仕方ないよ」 赤司はそう言いながらも出口に向かう。 てくてくと歩いて先ほど待ち合わせした駅に向かった。 「ねえ、赤司くん」 「何だい?」 「誕生日なの?」 不意にそう聞かれて赤司は足を止める。 「何故?」 僅かに瞠目してを見た。 「んー...桃井っぽく言えば、女のカン?」 首を傾げて彼女が言う。 クツクツと赤司が笑った。 「あれ、違った?」 「違うけど、正解だよ」 (どっち?!) 「俺の誕生日は、3日前だ」 「え?」 「だけど、今日、君を誘ったのは誕生日だからだ」 「何で、3日前に何かいわなかったの?」 これまでの経験上、友人達は結構積極的に誕生日をアピールしていた..ような気もする。 「それだと、あいつらと同じになってしまうだろう?」 「うーん、まあ...」 否定しない。 「『同じ』がイヤだったからだよ」 赤司の言葉に首を傾げる。 「誕生日じゃないのに、誕生日のお祝いって変じゃないの?」 「俺がそれで良いといっているのだから、良いんだよ」 赤司の言葉は良く分からないが、それでも赤司が良いと言うのなら良いと言う理屈は分かる。 祝われる本人がそれで充分言うなら、他人がどうこういうものではない。 「そっか」 が呟くと赤司は頷いた。 「なら..赤司くん、3日遅れだけど、誕生日おめでとう」 「ありがとう、君」 赤司が満足げに微笑んだ。 |
桜風
12.12.20
ブラウザバックでお戻りください