ハニイ





皆がロードワークに出ているとき、ふと時計を見た。後どれくらいで戻ってくるか確認したかったのだ。

「あ、」と呟いたに「どうしたのー?」とリコが声をかけてくる。

は時計から顔を上げてリコに

「ああ、いえ。今日は21日だったんだなって」

という。

は日付が表示される時計を着けている。非常に便利である。

の言葉に「何か用事?」とリコが問う。

「いいえ、用事とかじゃなくて。昔、8月21日は『はにいの日』だって言われたことがあって。思い出したんです」

「はにいの日。ああ、語呂合わせね。ははーん、黄瀬君ね」

リコが笑いながら言うと

「残念でした。紫原くんです」

が返す。

「え、そうなの?黄瀬君辺りが『ちゃんはオレのハニーっス!』とか言ってそうなイメージが浮かんだのになー」

リコが呟く。

(遠からずのことは言われた気がします)

心の中でそう応じては苦笑いを浮かべていた。

「そっか、ハニーか」

「紫原くんに『ハチミツ食べたい』って言われて。そんなもん、常備してなかったので帰りに皆で寄り道して帰るってところで手を打ってもらいましたけど」

「へえ...」

「ちなみに、今年はちゃんと『ハチミツ』ありますよ」

が笑う。

「へ?そうなの?」

「レモンのハチミツ漬け。昨日、ちょっと時間があったので作ってきたんです」

「わお、ステキ!つまみ食いしていい?」

「皆には内緒ですよー」

今日が8月21日なんて覚えていなかったが、作ってきていた。


ロードワークから戻ってきた皆に昨晩作ったレモンのハチミツ漬けを出すと非常に好評だった。

疲れたときにはこれに限ると皆が口々に言う。

「ね、黒子くん」

が声を掛ける。

「なんでしょう」

彼は床に突っ伏したままだ。

「...大丈夫?」

「床は冷たくて気持ちが良いんです」

彼の精一杯の強がりだ。

「あ、うん。えーと、今日ね、8月21日なんだよ」

が言う。

黒子は逡巡し、「はにいの日でしたっけ?」と笑った。

「うん。さっきちょっと思い出しちゃった。あ、向こうにレモンのハチミツ漬けあるよ」

「はにいの日だから作ってきたんですか?」

ゆっくりと体を起こしながら黒子が言う。

「ううん、偶然。なくなっちゃうよ」

「それはイヤです」

そういいながら黒子は何とか起き上がり、自分の分を確保しようと皆の方へと向かって行った。


その日の練習が終わり、リコが皆を集合させて言った。

「今日はね、8月21日の語呂合わせで、ハニーの日なんだって」

(何か、嫌な予感...)

は静かにことの流れを見守った。

「でね。さっき、みんなが作ってきてくれたレモンのハチミツ漬け食べたよね」

「まあ、食べたけど?美味かったけど...」

伊月が頷く。

その隣で日向は何だか凄く複雑そうな顔をしている。彼も何か嫌な予感があるのだろうか。

「じゃあ。ついでに、これもいっとく?」

そう言って彼女が出したのは、『プロテイン(ほんのりハチミツ味)』だった。

「え、何?!」

「うん、せっかくのハニーの日だし。一人3杯は飲むことー」

「ちょ、!」

日向がの名を呼ぶ。

「わたし、悪くありません〜〜〜!!」

(たぶん...)

から『ハニーの日』という単語を聞いて思いついたことなのだろうが、がほんのりハチミツ味のプロテインがあるなんて知るはずも無い。

プロテインの管理はリコがしているのであって、マネージャーのが知る由も無いのだ。

「はい、。みんなに作って配ってー」

「はい...」

リコに指示された通り彼らにコップを渡して行く。

なぜか皆からの無言の抗議をその身に受けながらは彼らがそれぞれ3杯、プロテインを飲み終わるのを見守る羽目に陥った。









桜風
12.9.12


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