年下彼氏と年上彼女の事情 3





 教職を目指していただったが、現実はそんなに甘くなく、結局塾の講師となった。

とはいえ、就職先があっただけでも恵まれていると彼女自身は言っていた。

カノジョが社会人というのは今吉も初めてで。だからなんというか色々ともどかしいところもある。

何せ、なんだか勝てそうにないのだ。

向こうは経済力があるし、経験もある。経験といってもそれぞれだが、その年齢になるまでに重ねてきたものはやはり軽くないはずだ。


寮には門限ギリギリで帰れた。

途中結構ダッシュしたので、そこそこ空腹を感じており、寮の夕飯も食べることはできそうだ。

先ほどファミレスを出たところで「夕飯、入るの?」とに問われ「ちょっと食べ過ぎたかもな」と応えていたが、これは余裕そうだ。

「あの後大騒ぎだったぞ」

部屋の前でばったり会った諏佐が苦笑しながら言う。

「迷惑かけたな」

「いや、別にいいけど」


彼の言った通り、今吉が部室を出てから入れ替わりのように部室に入ってきた諏佐は質問攻めされた。

しかし、今吉は賢く、そもそも諏佐に自分の恋人の詳細を教えていない。

ただし、ここまで隠し通せるということは学外だろうというのは誰でも想像できるので、そこらへんは仕方ない。

今吉も許容範囲としているのではないだろうか。

「じゃあ、今吉さんの好みってどんな人なんですか?」

マネージャーが問う。

「桃井?」

「気になるじゃないですか!」

「そ、そうだな...たぶん、大人しく自分の意見に従う子よりは、『打てば響く』的な子の方が好きなんじゃないのか?」

今吉は策士と表現しても大げさではない。

そんな彼ならいくらでも人心を思い通りに誘導することができるだろう。

現に、本人には言わないが、青峰が今吉の言うことを比較的聞いているのはそこあると思われる。

「つーか。さつきがその気になりゃ、どんなのと付き合ってるかっての分かるんじゃねーの?」

ほとんど興味を失っている青峰が言う。

彼は『ほとんど』興味を失ったのであって、全く失ったわけではないので、まだ残っていた。

「だめよ!人のプライバシーを暴くようなことをするなんて!!」

(いや、いつもやってんじゃん)

部員たちは心の中でそう突っ込み、

「お前がいつもやってんのってそういうんじゃねーのかよ」

と青峰は口に出していう。

桃井は対戦相手の趣味嗜好その他諸々、集められるデータを集めてそれを元にその選手がどのような成長を遂げるかを予想することができる。

つまり、相手を知るためにかなりプライバシーに踏み込んだデータまで収集している。

「ちょっと、そういうのとは違うでしょ。私は、チームのために、自分のできることをやってるのに...!青峰君のばか!!」

そう言って桃井は持っていたバインダーを青峰に投げつけてその場を離れていった。

「いってーな!」

桃井が出いった先に向かって文句を口にした青峰はすこぶる機嫌が悪い。

「あの、青峰さん...」

言いすぎだ、と桜井は言いたそうにしていたが「ああ?!」と不機嫌に青峰に返され「すみません!」と謝る。



「そりゃ、桃井をフォローせんとあかんかなぁ」

諏佐からひと通り話を聞いて今吉は困ったように言う。

「カノジョのことを話すのか?」

「いや、それはなしの方向で」

即却下する今吉に諏佐は肩を竦める。

「じゃあ、どうやってフォローするんだ?」

「どないしようかなぁ...」

一瞬だけいい口実ができたと今吉は思った。

に聞いてみるのだ。

連絡を取るのに態々理由がなければできない仲でもないが、彼女がいつも忙しくしているのを知っているので控えているのが現状だ。

ゆえに、相談事ならいいだろうという打算が働いている。

(あかんなー。ワシ、真っ黒や)

中学時代の後輩が聞けば「今更じゃねーか」と突っ込みそうなことを思った今吉は、それでも表情は非常に困った人のそれだった。









桜風
14.6.9


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