| 部活が早く終わった日、に連絡をしようと思って算段をつけていると桃井が慌てて外に出ていくのを見かけた。 他にもマネージャーがいるし、放っておこうと思ったが周囲を見渡すとマネージャーがおらず、それに対して桃井が困っている様子で周囲を見渡しているので、キャプテンとして一応声をかけてみた。 「桃井、どないしたんや」 「あ、今吉さん!あの、実は...」 練習試合の申し込みの話だった。 相手との連絡調整のミスがあり、ブッキングしてしまったらしい。 慌てて職員室に行ったが、監督は今日は学校の用事ですでに校内にいないとのことだった。 連絡をしようにも難しい状況でどうしたものかと困っていたというのだ。 (しゃーないわな...) 放任主義でさほど協調性とかそういうのに重きを置かない今吉だが、それでもキャプテンとしての責任感もそれなりに持ち合わせており、「ほな、ワシが直接言って話して来るわ」と申し出た。 「いえ!これはマネージャーとしての私の仕事でもあるんです」 と桃井。 「しゃーない。一緒に言って謝って、日を変えてもらおか。ほかの、その申し込みをしたマネージャーは?」 「あの..帰っちゃいました」 申し訳なさそうに桃井が言う。 ミスが見つかって脱兎のごとく逃げたのだろう。 (それはあかんやろ...) 心底呆れながら、心の中で呟き、桃井と共に学校を出た。 対戦相手の学校では心底反省している様子を見せ、顧問も納得して日を変えてくれた。 結構先だったため、日程調整がしやすかったらしい。 「これで安心やな」 帰りにそんな話をしているとふと視界に入ったその光景に「あ?」と思わず不機嫌な声が漏れる。 「今吉さん?」 「ん?何や、桃井」 頭上から聞こえてきた今吉の声にびっくりして彼の名を呼んだが、返事をした彼はいつも通りの表情と声音だった。 「いえ、何でも...」 「そうか」と言いながら今吉は今一度視線を先ほど目にしたものへと向けた。 が男と歩いているのだ。 同僚かもしれないが、相手は唯の同僚と思っていない様子である。 なぜそれがわかるかといえば、それはもう彼氏としての、男の勘としか言いようがない。 2人がカフェに入った。 外資系の、そこらでよく出店されている有名なところだ。 「桃井、少し喉乾かんか?」 「え、あ。はい」 「ほな、あそこどうや?」 別に桃井がいなくても構わない。むしろ桃井がいない方が都合がいいかもしれないが、かといってここで別れて自分だけ店に入るというのも違和感がある。 よって、苦肉の策で彼女も誘ってみた。 (断ってくれてもよかったんやけどなぁ...) そんなことを思いながら、が入って行った店に入る。 一般的には背が高い方の今吉は店内をサッと見渡し、の座っている席を確認した。 近くのテーブルにコーヒーを置く。 桃井がその向かいに座り、暫く部の事、特に彼女は青峰の事が心配らしくその相談を受けていたがが立ち上がり、トイレに向かって行った。 「すまん、便所や」 そう言って立ち上がり、トイレに向かって行った。 「デート?」 (やっぱり...) は、今吉の存在に気づいていて何食わぬ顔で男と一緒に店に入って談笑していたのだ。 トイレに行くふりをして、今吉を待ち伏せていた。 「ワシの事気づいてたんやな」 「まあ、ね。翔一は頭一つ大きいもの」 「ジブンこそ、あの男なんや」 いつもよりもきつい声音であることは自覚している。 しかし、ここで落ち着いて話ができるほど自分には余裕がない。 「んー?センパイ」 「塾講師のか?」 「そうよ。ちょっと教材の相談に乗ってもらってたの。さ、今度はそっちが吐く番よ」 「後輩や。今年入ったマネージャー。練習試合のブッキングで相手校に謝りに行ったんや」 「翔一が?珍しい」 「アホ。ワシがそんなポカするか。マネージャーや。あの子ともちゃうけどな」 「なんで本人が来ないの?」 まっとうな疑問で、それに対して答える内容が恥ずかしい。 自分の事ではないが、身内の恥というやつだ。 「逃げたんやと。間違いに気づいたら」 「あらら。質の低い...」 「言うなや。誰も彼もみたいに強うないわ」 呆れたようにから視線を外して今吉が返す。 だから、その言葉で瞳が揺れたの表情を彼が目にすることはなかった。 「さて、これ以上長居したら彼女さんに大きい方かと勘繰られるわよ」 「...彼女ちゃう。あほか」 そう言い捨てて今吉は席に戻って行った。 「あほだよ」 そう呟いたは天井を見上げて深呼吸をし、そして、席に戻っていく。 今吉たちは店を後にするところだった。 |
桜風
14.6.16
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