年下彼氏と年上彼女の事情 7




 青峰がに会ったと聞いた日から数日後。

今吉は自分の時間が取れる日を待って彼女に連絡をした。

が、連絡がつかない。大抵この時間なら、電話に出ることができると聞いていた。

実際、彼女は殆どの確率でこの時間の電話には応じていた。

なのに、なぜ電話に出ないのだろうか。

(しゃーない)

3年間寮で過ごし、そこそこ寮監からの信頼もある今吉は抜け道なる者を知っている。

先輩に教わった。


こっそり寮を抜け出しての通う職場に足を向けた。

丁度仕事が終わったらしく、建物の灯が消えていく。

建物から出てきた彼女は同僚と一緒だった。ただし、異性の。

舌打ちをした今吉はツカツカと歩き出す。



声をかけられて彼女は驚きの表情をうかべた。

「ちょっと!どうしているの、こんな時間に!!」

「やかましい。ええから来い」

そう言って彼女の腕を掴んだ。

「彼女が嫌がってる」

男が今吉の腕を解こうとした。

しかし、そう簡単にはいかず、「外野は引っ込んでてもらえませんかねぇ」と少し凄味の効いた今吉の声に反応して思わずその手を離した。

「あ、大丈夫です。彼、とは知り合いです」

少し躊躇ってがそう言う。

その態度にも苛立ち、「こいつのカレシやから」とある種の宣戦布告をしてそのまま彼女の腕を引いてその場を去っていく。


「ね、もう門限過ぎてるでしょ。大丈夫なの?」

さっさと腕を引きながら歩いていく今吉にが声をかける。

背の高さが違うのだから歩調を合わせてもらわなければ、が早足になってしまう。

息が上がっている彼女の言葉にやっと今吉は自分の歩調が速いことに気づき、それを緩める。

「見つかったらアウトやけど、大丈夫や」

「何、その自信。てか、どうしたの?」

「突然会いに来たら、何や不都合があったか?」

不機嫌に問う今吉に「ないけど。時間が...」と心配そうにが言う。

心配されている理由はわかる。だが、それがまた今吉の神経を逆なでる。

八つ当たりだということはわかっている。だが、自制が効かない。

「学校からあんまり離れるのも戻るのに時間かかるし...」

の家、あかんか?」

学校から少し離れてしまう。

「良いけど...」

落ち着いて話をするならそこしかないと思っては多少抵抗感はあったものの、頷いた。



マンションで一人暮らしをしている彼女の部屋に上がるのは初めてではない。

しかし、今回はかなり久々なので知らない空間のように思えて、少しだけ焦った。

「それで、どうしたの。突然」

そう言いながらがコーヒーの用意をする。

今吉はソファに座った。

「こないだ、学校来たんやって?」

ビクリと彼女が震えた。

「え、何で?」

「何で、って...青峰..在校生と会ったんとちゃうか?アレが青峰や」

「え、ああ。うん。そっか。確かにいきなりバストサイズの話になったわ」

話をしていた時に当たりをつけていた。

だが、すっかり忘れていた。というか、あの時の事はあまり思い出したくなかった。

「何であの時間に学校前におったんや?」

「消防点検で、建物に入れなかったからね。ちょっと遅めの出勤でよかったのよ。時間が空いたし、ちょっと覗いてみようかなって」

「放課後まで待てへんかったんか?部活前に少しくらいなら時間取れたと思うけど」

そんなことを言う今吉の前にマグカップが置かれる。

「あのさ、あたしもそこまで暇じゃないのよ」

呆れの感情が入ったその声音に、今吉はすこし苛立つ。

「その言い方、ないやろ」

斜向かいに座ったを見下ろした。なぜ隣に座らないのか、とまた苛立つ。

「じゃあ、なんであたしのこと黙ってるの?恥ずかしいんでしょ」

「は?」

思わず漏れた頓狂な声。

「恥ずかしいならもうやめちゃえばいいじゃない」

「ちょお待て!何や、その流れ」

(やめるってどういう意味や...)

慌ててソファから降りて彼女の隣に座る。

?」

膝を抱えて俯いている彼女の顔を覗き込む。

「ちょ、待て。なんで泣いてんのや」

困った、心底困ったと今吉は慌てる。表情に出ていないが、困っているのだ。

「だって、誰にも言ってないって。青峰くんは恥ずかしいんだろうって」

「や、恥ずかしいとか...」

どう言っていいのか、と困惑している今吉の目の前ではぐじぐじ泣き始め、「頼むから、泣かんとってくれ...」と情けない声が漏れた。









桜風
14.7.7


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