| ぐじぐじ泣いているは、まだ泣きやみそうにない。こんなときどうしていいか全くわからない。 「、ジブン大人なんやから...」 そう言って自分の言葉が汚いと思った。 違う、と心の中で否定した。 ここでその言葉に甘えるのはずるい。今まで散々それを嫌っているのに、こんな都合のいい時だけ持ち出すのは卑怯だ。 彼女が大人であることは間違いではない。そして、自分が子供であることも。 だが、それに甘んじていたのは自分だ。結局、その環境に甘えていたことも否定できない。 「なにしてんねん」 思わず声が漏れる。 ビクリと肩を震わせた彼女に気づき「ちゃうで」という。 彼女が何を思ってそんな反応をしたのか、察したのだ。 「ワシの事や」 不機嫌にそう言う今吉をそっと見上げる。 「ぶっさいくやなー」 涙で一部化粧が剥げている。 「うるさい、ばーかばーか」 ぐすりと洟をすすりながらが言う。 「センセが『ばーか』いうたらあかんやろ」 苦笑して今吉が言うと「今のあたしは翔一の先生じゃない」と彼女が反論する。 「せやなぁ。恋人やもんな」 「なによ!」 イニシアチブを取られた感じがしてどうにも居心地が悪く、彼女は悪態をつく。 「頼むから泣かんとってくれ」 そう言いながら今吉は少し乾きかかっているの頬の涙をぬぐった。 そして、彼女の腕を引いて、自分の前に座らせ、その体に腕を回した。 「恥ずかしいのは、ワシの方や」 「は?」 振り返ろうとしたを制するように、彼女のお腹に回した手にぎゅっと力を込める。 「どういうこと?」 振り返るのと諦めた彼女は体重を今吉に預けて問う。 「かっこ悪いて思ったんや」 「年上彼女が?」 「アホ」 こつんと彼女の後頭部に顎を当てる。 「ワシが子供なのが、や」 「今更」 「見栄を張りたい生きもんやで、男は」 その見栄が、彼女を傷つけたらしい。 「あと、獲られるかもしれんて」 ポツリと言う今吉に「はい?!」と彼女は思い切り勢いよく振り返る。 今吉がぐっと手に力を入れるが、それに抵抗してまで振り返った。 「何言ってんの?!」 「仕方ないやろ。高1のワシがに惚れこんだんや。他に居てもおかしくないって思っても不思議やないわ」 ため息交じりに言う今吉に向かっては腕を伸ばした。 そして、ムニッと頬をつねる。 「あたしが簡単にフラフラすると思ってんの?!」 若干怒ったように言うに「そうは思うてへん」と彼女の手を離しながら今吉が言う。 「面白くないだけや」 「え?」 「自分の彼女がほかの男にちょっかい出されて面白いて思うやつはおらへんわ」 ぷいとそっぽを向いて言う今吉には「ふへへ」と笑い、「珍しくかわいいなー、翔一」そう言って手を伸ばして頭を撫でる。 「さっきの男も何やねん」 「だから、先輩だって」 「かて、ワシのこと言うてへんやん」 拗ねた声音の今吉を不思議そうに見上げたは、「仕方ないな」と笑う。 「いつかもらうこととして。取り敢えず、急ごしらえの虫除けに自分が持ってる指輪をここに着けとく。これでいい?」 そう言った彼女は右手の薬指に指輪をはめる動作をしてみせる。 「それ、仮置きやからな」 今吉が念を押す。 「大丈夫。翔一の経済力を見極めてちゃんと声をかけるから」 「言われる前に渡すわ、アホ」 憎まれ口をたたいた今吉は彼女から離れた。 「ほな、帰るわ」 「見つからないでよ。学校まで送ろうか?」 「ええよ。頭冷やしたいし」 「あら、珍しく神妙...」 「やかましい。ほなな」 そう言って今吉はの部屋から出て行った。 ******* 卒業式が終わり、正門前では在校生との別れを惜しんでいる卒業生の姿であふれていた。 その中に今吉の姿もあり、仲良しこよしではないバスケ部だったが、それでも今吉たち3年は慕われていたようで、在校生たちに囲まれてしまった。 「おい、カノジョ来てんぞ」 唯一今吉の彼女の顔を見たことがある青峰がその姿を目にして今吉に声をかけた。 「あ?ほんまや」 全員が青峰と今吉の視線を辿った。 視線を受けた彼女は数歩後ずさる。なんだか怖い。 「え、先生」 諏佐が呟く。 「先生?!」 周囲はざわりと騒がしくなった。 「へー、あんたセンセーに手を出したのかよ。てか、出された?」 「アホ、口説き落としたんや」 そう言っていたらずらっぽく笑う。 「悪いな、黙ってて」 諏佐を見てにやりとする。 「確かに、言いづらいかもな」 苦笑して諏佐が言った。 「え、あの人。ウチの学校の先生だったんですか?」 桃井が興味を出して聞く。 「教育実習に来てたんだ」 諏佐の言葉を聞いて皆はまたに視線を向けた。 「ほな、ワシはこれで」 そう言って今吉はその輪から離れていく。 「今吉さん、今度の土曜日、送別会ですからね!!」 桃井の言葉に彼は軽く手を挙げて応え、彼女の元へと向かった。 「ね、何だったの?怖いんだけど」 「あ?紹介しただけや。ワシの彼女って」 「ふ、ふーん...」 まんざらでもないと言った表情では相槌を打った。 「ほな、デートでもしようか」 そう言って今吉はの手を取った。 「制服のまま?」 「ちょっとした背徳感味わうのなんてもう今日しかないで?」 「翔一、制服着てても高校生に見えないからなー」 「やかましい」 「仲睦まじいですねぇ」 2人のそんな会話が耳に入らない桃井がそう呟く。 「ホントに知らなかったのか?」 青峰が諏佐に聞くと 「まあな」 と肩を竦めていう。 「送別会の時に、根掘り葉掘り聞きたいので、今のウチにあの彼女さんの基本情報教えてください!」 桃井が目を輝かせて諏佐に言い、 「いいぞ」 を彼は応じる。 黙っていられたのは、やっぱりちょっと面白くない。 自分が知らない相手ならまだしも、知っている人物だったのだから。 ちょっとした意趣返しをするため、諏佐は桃井とタッグを組むことを決めたのだった。 「あかん」 ぶるりと震えて今吉は呟く。 「どうしたの?」 「なんや、嫌な予感がする」 「翔一のそれって、結構当たるよね。ドンマイ!」 満面の笑みで言うを半眼になって見下ろし今吉はため息を吐いた。 「まあ、今はええわ」 「そうね。その時に頑張ればいいんだから」 他人事なので、も軽く頷き、取り敢えず、ご飯を食べに行こうと繁華街へと向かって行った。 |
桜風
14.7.14
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