コイビトカッコカリ 2






 彼の天性の才能は、おそらくその外見によるものではなく性格によるものなのだろうと心底感心する。
 黄瀬くんが入社してきた当初は用事もないのに多くの人がこの部署を訪れてきたが、今となってはそういう人は随分と減って、目の敵にされるのかと思っていた男性社員とも仲が良さそうだ。一緒に食事に行っている様子も目にしたことがある。
 たった二週間でこの環境変化だ。
「すごいなぁ」
「何が?」
 昼食時、ここ二週間のことを思い出して零した言葉に返事があって見上げると黄瀬くんで、彼は、当たり前のように私の隣の席に腰を下ろした。
「今日は外食じゃないの?」
「うん、と食べようと思ったから」
 約束なんてしていないのに、そんなことを言われた。
「会社には随分慣れたようだね」
「まあ、お陰様で。元々人付き合いは得意だし。連絡の取れる芸能人がいないとか、ご要望にお応えできないってことを早めに言いふらしておいたから状況が落ち着くのも早かったんじゃないかな」
「よその部署の話なんだけど。二年前だったかな? 新卒で結構容姿が整ってた子がいたんだけど、黄瀬くんと同じような状況になって随分と参ったみたいで人事に異動させてほしいと泣きついて、遠くに行ったという話を聞いたことがあるからちょっと心配してたんだけど、やっぱ、新卒ホヤホヤの子とはわけが違うんだね」
「あー、まあ。俺はある程度の慣れもあったしね」
 苦笑しながら彼は冷やし中華を食べている。
「麺類好きなの?」
「食事に時間を掛けない癖がついたから、かな。はしっかり食べるんだね」
 今日も日替わり定食だ。
「選ぶのが面倒くさいから日替わりにしてるだけ」
「なるほど」と言いながら彼は美味しそうに麺を啜る。
「そういえば黄瀬くんは、コスメとか詳しい?」
「どの程度の期待を込めて聞かれてるかわかんないけど、まあ、昔取った何とやらはあると思う。どうかした?」
「今度友達の結婚式に出席するんだけど、ちょっとお化粧を、ね。こう……。今使ってるのがプチプラなんだけど、そろそろいい歳だしちゃんとしたのも使った方が良いかなって。具体的にはデパコス的なやつ」
「あー……」と声を出した黄瀬くんは少し考えて「いいよ」と頷く。
「都合が悪いんだったら、別にいいんだけど」と言うと「大丈夫」と返された。
「結婚式っていつ? 着るものは決まってる?」
「結婚式はひと月後。着るものは着物にしようかと思ってる」
「着物着れるんだ?」
「失敬な。レンタルで借りてそのまま着せてもらうに決まってるでしょ」
 黄瀬くんは笑って「失礼しました」と言って「じゃあ、早い方が良いね」と今週末に付き合ってくれるという話になった。

 日曜日の昼下がり。待ち合わせ場所は彼の指定で、たどり着いたときにはすでにその姿があった。帽子を被ってサングラスを掛けているその姿は芸能人のお忍びっぽい。
 道行く人たちの視線の先は大体同じで、オーラってあるんだなと感心してしまう。
「お待たせしました」
「うん、じゃあ行こうか」
 周囲の視線を気にする様子もなく彼が歩き出し、私はそれに続いた。
「黄瀬くん、香水使ってる?」
 今日は職場とは違う香りがする。
「うん。苦手だった? ごめん」とすかさず謝る彼に「違うよ」と返した。
「いい匂いだと思ってる。今日のは職場のとは違うよね」
「色々持ってるから気分で変えてる。職場にはあまり強いのは拙いだろうし、香水にもTPOがあるからね」
 大人のようなことを言う。
「大人だね」と感想を漏らしてしまうと、「同じ年だよ」と彼は目を細めた。
「それはそうと、は自分の肌質とか知ってる?」
「調べた方が良いんだろうなー、というところで止まってる」
「りょーかい」
 コンパスの長さに随分と差があるはずなのに、彼は私の歩く速度に合わせて歩いてくれる。
「もうちょっと頑張って早足にしようか?」と言うと「ゆっくりでいいよ」と笑われた。
 デパートに入るとコスメブランドが立ち並ぶ独特の香りが鼻につく。実はこれが苦手で大抵デパートの一階は息を止めて早足で通り過ぎていた。
にはこのブランドかな」と言って立ち止まったのはよく耳にする有名ブランド。
 早速店員さんが声をかけてきた。しどろもどろになる私の代わりに彼があれこれと話を進めてくれる。
 取り敢えず、一式を購入して店舗スペースを出た頃にはなぜかどっと疲れを覚えていた。店員さんの対応はほとんどが黄瀬くんだったのに。私は「はい」か「いいえ」か名詞しか口にしていないはず。
「助かったー」
 コスメブランドの名前が入った少し大きな紙バッグを手にして隣を歩く黄瀬くんに手を合わせる。
「お役に立てたようで」
「お礼に何かご馳走させてください」
「じゃあ、それはまた今度ね。それより、その使い方覚えておいた方が良いよね? カラオケボックスにでも行く? でも、照明がちょっと微妙だな……」
 そうか、物を買っておしまいじゃなかった。どこかの個室でと考えてくれているようだけど、使うならまず今のメイクを落とすためのクレンジングを用意しなくてはならない。
「じゃあ、ウチはどうかしら?」と提案してみた。
 自宅ならクレンジングがあるし、タオルやそれこそいつも使っている鏡もある。
 黄瀬くんは少し沈黙し、視線を彷徨わせて唸った。
「お茶くらいお出しします」というと、「そうじゃなくて」と言い、また少し考えた様子を見せた後「大丈夫?」と聞いてきた。
「いや、まず人様をお招きできる状態ではないからちょっと外で待っててもらわないといけないんだけど。そこは何とかクリアする」
「……がいいならいいや」と彼はどこか諦めの境地を覚えた様子で頷いた。
 それから電車に乗って移動し、最寄り駅で降りて彼には駅前のカフェで待ってもらうこととして急いで帰宅する。
 玄関を開けてちょっとげんなりした。よくこれで人を招こうと思ったな、と数十分前の自分に呆れる。呆れてももうお招きすることは確定だから、床に散乱しているあれやこれやはクローゼットに突っ込んでひとまず見た目は誰かが部屋に入っても問題なさそうな空間になった。
 住所を教えてくれれば迎えは要らないと言った黄瀬くんの言葉に甘えて連絡を入れると間もなく我が家のインターホンが鳴った。
「狭いという注釈をつけるのを忘れてた」
「一人暮らしならそんなに広くないでしょ」
「けど、黄瀬くんの家は広そう」
「そうでもないよ」
 1DKの私の家に入った彼はじろじろと周囲を見渡すことのない紳士で、案内したローテーブルの前に座った。黄瀬くんが一人いるだけで、独り暮らしの標準空間が、随分と狭く感じてしまう。
「とりあえず、鏡と先ほど買ったものなどを並べてみました」
 黄瀬くんを待っている間、メイクを落として本日の購入品といつも使っている少し大きめの鏡を準備しておいた。
「そういえば、結婚式の日は着付けもお願いするって言ってたよね。メイクは自分でするの?」
「……名探偵」
 言われてみればそうだ。確かにそれも込みで申込んだし、その時にコスメを持参するようにとは案内されていない。どうしても使いたいものがあれば持参してくださいとは書いてあったけれどそこまで愛着のあるものは持っていない。
「じゃあ、普通のメイクでいいね。着物着るなら少し濃いめかなって思ってけど。一回俺がをメイクしていくからそれで覚えて。俺も口で説明するよりやりやすい」
 一応、念のために用意していたコットンに彼は手を伸ばす。使った方が良いと聞いて購入したものの面倒くささが勝って使用していなかったものだ。やっぱ使った方が良いんだ……。
 それから彼は使い方や筆の運び方など丁寧に教えてくれた。ひんやりとした黄瀬くんの指が顔に触れるたびにどうしてか恥ずかしさを覚えた。
「少し唇を開いて」と言われ、そのとおりにする。
「目は、開けたままで良いから」と指摘され、慌てて目を開けると何とも言えない表情の黄瀬くんの顔があった。そのまま彼はリップを塗って「はいできた」と言って私に鏡を渡す。
「知らない人がここにいるんですけど」
「俺の知ってる人だよ」と黄瀬くんが笑う。
「えー、私これできるかな?」
「練習あるのみ」
 そういった黄瀬くんが立ち上がる。どうやら帰ろうとしているようで、「待って。お茶を淹れるからもうちょっと座ってて。あ、それとも用事ある?」と彼を押しとどめる。
「いや、ないけど」と言った後どこか諦めたように「じゃあ、お言葉に甘えます」と黄瀬くんは再びローテーブルの前に腰を下ろした。
 何を出すか悩んだが、先程カフェで待っててもらったからコーヒーと紅茶は避けておこうと考えて、緑茶にした。ちょうど茶請けの一口羊羹もある。
 お茶を淹れてそこに氷も投入して振り返ると、彼はスマートフォンを触っていた。どこかに連絡をしている様子で、声を掛けるのを躊躇っていると「ってさ」と声を掛けられた。
「なに?」
「まだバスケ好き?」
「うん。シーズン中、夜中にうっかりテレビをつけてしまったら寝不足の明日が約束されるくらいには」
「あ、NBA好きなんだ? じゃあさ、今度NBA選抜と日本代表が試合するっていうの知ってる?」
「うん。先行抽選で厳正なる抽選の結果残念ながらのメールが来たし、一般販売は参戦すらできなかった」
「じゃあ、チケットが取れたら一緒に行く?」
「行きたい」
 食い気味に返事をすると彼は笑って「りょーかい」と言ってまたスマートフォンに視線を落として連絡を取り始めた。念のため距離を取って待っていると彼がスマートフォンをテーブルの上に置く。
「もう大丈夫?」
「ああ、ごめん。大丈夫」
「緑茶にしてみました。小倉と抹茶どっちが好き?」
 一口羊羹の好みを聞いてみると「どっちでもいいよ」と返された。
「選んで」
「じゃあ、小倉」
 湯呑と小倉の一口羊羹を乗せた小皿を彼の前に置く。私のは愛用のマグカップと抹茶の一口羊羹だ。
は和菓子好きなの?」と声を掛けられたのは、ちょうど羊羹を頬張るところで、口を開けたまま彼に視線を向けた。
「食べてからでいいよ」と彼に促されたけど、そういうわけにもいかないだろう。羊羹をお皿の上に置いて「和洋限らず好きだよ」と返す。
「ただ、一口羊羹はちょっと抓むのに良いから何か買い置きしちゃうんだよね。寝坊しちゃったときもこれを食べてカロリー補給して仕事に行くこともある」
 それから、どこのお店の何が美味しいというスイーツ談義に花が咲く。黄瀬くんはそういった情報もたくさん持っていて、これも昔取った何とやらだと言っていた。だから、情報が少し古いかもとも。
 黄瀬くんはお茶だけ飲んでそのまま帰っていった。お礼に御馳走するという話も「また今度」と言って。
 その日の晩、黄瀬くんからチケット確保とのメッセージが届いた。やったーと諸手を上げて喜ぶのなんてどれくらいぶりだろう。お礼のメッセージをスタンプと共に返すと、「どういたしまして」と返ってきた。
 翌日、チケット代を用意して出勤した。昼食で一緒になればその時に渡そうと思っていたのだが、隣席の同期、都成と食事に出る約束をしていたのを思い出す。彼女と食事に行くときは、大抵店を選んで予約をしてくれるため、昼食に関して考えるのは食べるものだけで済む。
 強い日差しの中、入った店はクーラーがよく効いていて寒いほどに冷えていた。生き返ったと思いもするが、身体にいいはずがないと心配になる。
「ところで合コンしない?」と唐突に話を切り出されて「パス」と反射で返す。
「なんで、良いじゃん」
「年一回という約束はすでに先々月に果たしたからパス権あります」
「アタシたち良い歳よ」
「そういう説もある」
「事実だ、現実を見ろ」
「私、和風ハンバーグ」
「アタシは小エビのクリームパスタ。店員さん呼ぶね」
 席に設置されているボタンで店員を呼んでそれぞれのランチセットを注文した。
「んで、合コンだよ」
「話を戻すか。今年はその話はもうできません。残念でした」
「慈悲はないの?」
「ここになければありませんねぇ」
「あ、じゃあさ。黄瀬さん」
「ん?」
、黄瀬さんと仲いいでしょ? 黄瀬さんに合コン参加を打診してよ」
「女性の参加希望者の競争率がすごそうなんだけど……。あと、男性陣の参加辞退が多そう」
「確かになー、バランスが難しいよね。黄瀬さんが入社した当時は、うちの部署の既婚女性陣、悉く結婚指輪外してたよね。食い込んでたはずの指輪どうしたの? って聞きたくなるセンパイもいたけど。今は落ち着いた感じだよね」
「望んでいない好意は悪意に近いものがあるから黄瀬さんは大変だったろうに」
「さすが、経験者」
「茶化さないで」
「お待たせしました」と店員が持ってきたプレートをそれぞれの前に置く。
「彼氏ほしいなー」
「恋人がほしいと思っている人が集まってするのが正しい合コンの条件だと思うから、恋人がほしい人を募って開催してください」
「話は変わるんだけど、来週飲みに行かない?」
「それが合コンだったら絶交するけど、大丈夫?」
「やめときます」
 食事が終わって支払いのためレジに向かうと珍しく混んでいた。時間を確認すると、あと十分ちょっと。
 ここからだとメイク直しも考えて十分は欲しい。ダッシュして間に合うかどうか。
 ひょいと後ろから伝票を取り上げられた。びっくりして振り返ると黄瀬くんがいて、私が持っていた伝票を持っている。
「俺が立て替えておくんで先に会社に戻ってください」
「いや、黄瀬さんの時間が」と私が言うと「俺んが確実に速い」と自信たっぷりに彼が言う。運動不足の会社員二人がのたのたと走っている姿と黄瀬くんが走っている姿を思い浮かべてみると、確かに彼の言うとおりの気がする。
「あとで請求に来てください」と都成はレジ待ちの列から外れて店の外に向かった。
「ありがとう。チケ代含めてあとで返すから」と黄瀬くんにお礼を言って私も彼女に続いた。
 会社のエントランスで汗だくになりながらエレベーターの到着を待っていると「追いついた」と背後から声がして二人して肩で息をしながら振り返る。
「マジか」
「ほら、私たちもまだいい歳じゃないんだよ」
「規格が違う」
 チンと鳴って扉が開き、先に箱の中に入った黄瀬くんが「ほら、早く」と『開』を押したまま私たちを促した。
 ひとまず執務室に帰って急いで化粧室でメイクを直そうとするけれど、汗が滝のように流れてきてそれどころではない。
 何とか汗が引いてメイクを直して席に着いたと同時にチャイムが鳴る。黄瀬くんが支払いをしてくれていなかったら遅刻だった。
 仕事がひと段落つき、のどを潤そうと引き出しからスティックタイプのカフェ俺を取り出した。
「それ、美味しいんですか?」
 頭上から声が落ちてきて見上げると、黄瀬くんに見下ろされていた。
「すっごく甘いですね」と言いながら私は彼にシリーズ全て一本ずつ渡した。
「ありがとう」
「あ、で、支払い」
 都成が財布を出す。
「一応、レシート分けてもらいました。小エビのが……」
「アタシです」
「じゃあ、さんがハンバーグね」
 それぞれレシートをもらって黄瀬くんにお金を渡す。
「小銭だらけになって申し訳ない」
「いいよ」
「黄瀬さんは合コンに興味ないですか?」
 彼女は果敢にも彼に合コンの打診をする。ザワリと周囲の空気が動いた気配がした。椅子から腰を浮かせた人もいる。
「ないですね。合コンするんですか?」
「する予定です。人生経験にひとつどうですか?」
 めげない彼女に感心しながらも私はカップにお湯を入れるため、席を立った。
「うそ!」と都成の声が給湯室まで聞こえた。どれだけ大きな声を出したのか、と呆れながら部屋に戻ると、「ちょっと聞いた?!」と彼女が言う。「『うそ』っていう都成の大きな声は給湯室まで聞こえましたよ」と返すと「マジかそれ」と自分で引いていた。黄瀬くんは席に戻ってしまったようで、チケット代はどうやってこっそり渡したらいいのかと考えていると「黄瀬さん、合コン経験者だって」と言われて我が耳を疑った。
「合コンってモテない人がするもんだと思ってた……」
 呆然と呟く都成にそれは特大のブーメランだけど大丈夫かと思ったが、彼女はそれどころではないようだ。
 夜になって、スマートフォンから黄瀬くんにメッセージを送る。チケット代の支払いの確認のためだ。
 すぐに返事はなく、お風呂から出ると何やら受信があったようでライトが明滅していた。確認すると、黄瀬くんからメッセージが届いていたことがわかる。
「関係者席だから、今時点ではわからない」という文字に納得した。先行も一般も終わったのだから通常のチケットのはずはない。
 というか、関係者席を取れる関係者と知り合いということに驚いた。黄瀬くんがバスケをしていたのは高校までと言っていたから、だとすると芸能界で知り合ったプロモーターとかそういう人なのかもしれない。連絡の取れる芸能人はいなくても、制作側なら連絡が取れる人がいるのだろうか。ふと、自分が変な詮索をしているようで嫌になり、とりあえず、チケット代は保留と言う事実だけを頭に入れてこの話を終えることにした。
「ところで、はお盆休みの予定ある?」
 黄瀬くんからの新たなメッセージを見て「特には」と返す。
「今から電話していい?」と問われて「大丈夫」と返すとすぐに着信があった。
「お盆、何も予定ないの?」
「最初の日と終わりの日は自宅で掃除とか色々やろうと思ってるけど、真ん中は実家でのんびり過ごす予定。のんびりさせてくれるかわからないけど」
 庭の草むしりを命じられそうだ。
「実家って神奈川のまま?」
「そうだよ。家建てちゃったもん」
「じゃあさ、休みの日のどこかで遊ばない? 久々に神奈川に行きたいし。せっかくだから」
「あー……」
 お盆期間中の観光地はどこも混むし、暑いしなぁ……。
 冷房の効いた室内で過ごそうと思っていたから炎天下に出ていくのは少し抵抗がある。
「昨日、何かご馳走してくれるって言ってくれたよね。今度って俺は言ったけど。それをお盆期間中に」
 そう言われると承諾するしかない。
「はーい。満漢全席とかそういうのは勘弁してね」
「大丈夫だって。車は俺が出すから」
 黄瀬くんの車には興味あるけど、それなら、せっかくだし。
「公共交通機関はダメ?」と聞いてみた。
「お盆は混んでるよ?」
 知ってるんだ。
「黄瀬くん、前に高校時代の私と会ってみたかったって言ってたじゃん」
「え、制服着てくるの?」
「さすがにそんなイタイことはできない。けど、交通手段を高校生並みにしてみて、お出かけするのはどうかなって」
 暫く沈黙が耳に届いて、やがて「そうしよう」と彼は同意した。
んちの最寄り駅ってどこ?」
「鎌倉か横浜に行きたいから、目的地近くの駅での待ち合わせの方が良い」と返した。
「じゃあ、鎌倉」
 時間と待ち合わせ場所を確認して通話を切った。






桜風
22.7.8


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