雨のち晴れ 3





 部活動紹介のオリエンテーションでバスケ部の紹介の時には驚いた。

主将が2年なのだ。

歴史ある古豪のキャプテンを2年生が務めているというのだ。

「やっぱ、キセキの世代は違うな」

ふと耳に入った単語に首を傾げる。


一通りの部活動紹介を見たが、バスケ部を除いてこれというものはなかった。

ならば、当初の予定であり目標として掲げてきたバスケ部に入部しよう。

(勉強、頑張ろう)

ぐっと両手で拳を作って気合を入れる。

強豪であるバスケ部は入部届の受付期間を決めていた。元々全国から推薦で獲得している選手がいる上に、そこにひかっからなかったが腕に覚えのある者が入試という難関を超えてやってきている。

要は飽和状態になるということだ。

マネージャーも同じくその期間中に入部届を出さなくてはならない。

昼休憩に顧問に入部届を提出し、部活は来週からになると聞いていたため、放課後に帰宅の準備をしていると

さん、いますか?」

と教室の入り口で呼ばれて返事をする。

です」

が彼女の前で名乗ると彼女も名乗った。

バスケ部マネージャーという。

「え、あ。入部届に間違いとか...」

慌てて聞くと彼女は苦笑して首を横に振る。

「一応、経験者かどうか聞きたくて。ウチ、部員が多いからね。マネージャーの子に教えるなら一度に、って思ってて。そういう班組みにしてるのよ」

「あ。マネージャーの経験はありません」

「“マネージャーの経験は”ということは、選手の経験とか?ウチは、男子部しかないから、仕方なくみたいな感じで」

言われて少しだけ躊躇った。

だが、一応伝えておいた方がいいかと思い、中学に入って始めたこと。ただし、故障で途中でやめてしまったことを話した。

「そう、辛かったわね」

彼女がそう言う。

この話をすると、「かわいそー」など、表面上の感想を言われたことはあっても、理解してくれる人は中々おらず、そんな風に言われるのは珍しい。

驚いた表情のに「そうやって、部を辞めた人たくさん見たからね」と彼女に言われた。

「あ、そうか」

「うん、そうなのよ。強豪であればあるほど無理をする人が多いみたいね。まあ、とにかくわかったわ。マネージャーの仕事はある程度は理解している、ということでいいわね」

「はい。お世話になりましたから」

「了解。ごめんなさいね、帰る前に」

そう言って彼女は軽く手を振って去っていく。

(かっこいい...)

何だって、この学校の先輩たちはカッコいいんだ!

そんなことを思いながらは学校を後にした。


「赤司君」

部室に向かっているとマネージャーが声をかけてきた。彼女は3年でマネージャーのまとめ役、所謂、マネージャーのキャプテンだ。

「はい」

「これ、今のところの中間発表ってところかしら?推薦の子のはこの付箋の下全部」

どっさりとした紙を渡された。

「一応、未経験者も混ざってるみたい。物好きね。それ、見たら返してね。後半の発表と共にファイリングして改めて渡すから」

「わかりました。マネージャーの方は?」

「あら?女の子に興味がおあり?」

「マネージャーが女子とは限らないでしょう。..という名前の子はいましたか?」

からかいを流してそう言う。

「ああ、うん。さっき話してきた。マネージャーは、今年は不作だわ。赤司君をもってしても」

「どういう意味です?」

「そういう意味です」

にこりとほほ笑み、彼女はふと首を傾げる。

「何でさんのこと知ってるの?」

「実渕の知り合いらしいですよ」

「あー、なる」

頷いて彼女は「じゃあ、あとで」と着替えるために女子更衣室に向かった。


部室に入ると、すでに何人か着替えていた。

「あら、征ちゃん。それって」

「中間発表だそうだよ」

先ほど言われた言葉を引用する。

「見てもいいかしら?」

着替え終わっている実渕が問う。

「どうぞ」

そう言って紙の束を渡し、赤司は着替えはじめる。

さん?も入部届出したらしいよ」

「あら?知り合い?」

「前にメールの本文見せてくれただろう?」

そう指摘されて思い出す。画面には実渕がアドレス登録している名前で差出人が表示されている。

「なるほど」

そう納得して実渕は入部届を捲っていく。

同ポジションがどれくらいいるかをチェックしていた。

「どうだい?」

着替え終わった赤司が声をかけると

「多いけど、そうねぇ...レギュラーは中々難しそうよ」

今回の新入部員にはさほど期待できそうにない。

とはいえ。昨年一昨年が豊作だっただけだ。

昨年の場合は、赤司を取れただけで豊作というもの表現的には違和感があるが、戦力的な考えで行けば豊作と言っても過言ではないだろう。

「突然成長する、化ける人だっているからな」

苦笑して赤司が言う。

昔の自分たちのように、と。

「そうね。油断はするつもりないわよ。今年はリベンジの年だもの」

そう言って実渕は赤司より先に部室を出ていく。

新入生がやってくる来週が楽しみだ。









桜風
15.3.2


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