| 先輩・後輩というものは意外と面倒くさいと最近思うようになった。 「はぁ...」 部室に悩ましげなため息が落ちる。 隣に立つ赤司はちらと実渕を見上げて、何も言わずに部室を出て行った。 ここ最近の実渕の様子を見ていればため息の理由なんてなんとなくわかる。 そういう場面に遭遇したこともあるし。 とはいえ、それも仕方のないことだと思うし、実渕もそう割り切ればいいのにと思っていた。 一応、練習中はそれに集中しているので口を出さずにいる。 赤司が目撃したのは、つい先日の事だった。 が廊下の向こうから歩いてきていた。 ふと、誰かに気づいたような表情を浮かべた。 その視線の先を見て、赤司は気づいた。 しかし、実渕は気づかなかったらしい。 実渕との間にもう一人、彼女にとっての先輩、良く共に行動しているマネージャーが立っていた。 「先輩」と言って駆けよったのはそのマネージャーの方で。 しかし、実渕は自分に向かってきたと思い「さん」と軽く手を挙げたのだ。 その実渕に気づくことなくはマネージャーと話を終えてぺこりと頭を下げてその場を去って行った。 軽く挙げた手を降ろすタイミングを逸した実渕は、少し気まずそうにそっとそれを降ろす。 そして、驚くくらいに子供っぽい表情をしてむくれていた。 実渕のため息の原因はおそらくこれだけではないだろう。 しかし、それを聞く気にもならない赤司は、そっとその場を去ることにしている。 話を聞いたら絶対に長くなることがわかっているから。 「はぁ...」 「どうかしたか?」 「はい?」 隣を歩く先輩に声を掛けられては顔を上げた。 「いや、ため息。疲れがたまったか?」 からかうように言われて「あはは」と愛想笑いをする。 まさかのため息だ。 何となく、ため息を吐きたいような、そんな気分ではあった。 だが、実際にため息を吐いているとは思わなかった。 「悩み事なら相談に乗るぞ」 軽く言われて「ありがとうございます」とは礼を言うが「大丈夫です」とやんわり断る。 先輩・後輩というのは中々面倒くさい者なのだ。 これまで“実渕さん”と呼んでも誰も怒らなかったし、“ちゃん”と呼んでもらえていた。 自分の選択した進路とはいえ、何とももどかしい。 学校外で会うことしかなかったため、これまでは知らなかったのだが、実渕はどうも学校で人気者らしい。 女子に。 先日、掃除当番でゴミ捨てに向かっていると聞きなれた声が聞こえた。 少し寄り道、と思って足を向けると実渕がクラスメイトなのか、元クラスメイトなのかわからないが、女子と何やら楽しげに話をしていたのだ。 しかも、ボディタッチされても平気そうで。 ちょっとムッとした自分は何様かと思ったが、ムッとしてしまったのだから仕方ない。 先輩が友達、もしかしたら恋人かもしれないが、そんな人と話をしていて単なる後輩が口を出すのは誰が考えてもおかしい。 自分がそういう立場なら話は別だが、そういうのではないことは明白で。 (でも、進路間違ったって思ってないんだよなぁ...) 勉強が大変だし、部活も結構ハードだったりするが、漫然と時間が過ぎていくのを見送る高校生活よりもマシだと思う。 この目標があったから中学だってそれなりに充実したと言っても過言ではないし。 これで実渕の高校生活を邪魔してしまったら、恩をあだで返すことになってしまう。 再びついたため息に先輩が「お前、本当にきついなら今日は帰ってもいいぞ?」と声をかけてくれた。 「いいえ、大丈夫です。さ、行きましょう!」 そう言ってズンズン歩いていくを先輩は慌てて追いかけていった。 |
桜風
15.3.16
ブラウザバックでお戻りください