| 編成試験で、一軍から二軍に降格した人、逆に三軍だったのに一軍に上がった人もあって、なんだか胃が痛くなった。 降格した人の中には三年生もいて、彼らはそのまま部を去って行った。 これからインターハイ予選が始まる。 そんな中での降格のため、レギュラーを諦めたのだろう。受験勉強をした方がいいと切り替えたのかもしれない。 そういう思いで部を去って行ったのならいいが、まだ入部したばかりの1年や1年間頑張ってきた2年が去っていくのを見るのは、マネージャーと言えど心が痛む。 (強豪ってこんな感じなのか...) そこそこ強い学校に通っていただったが、ここまでレギュラー争いは熾烈ではなかったと思う。 部を去っていた人の中には不詳が原因という人もいた。 何とか誤魔化して練習をしていたが、結局試験で怪我を指摘されて諦めた人もいたのだ。 昔、自分がけがをして選手を辞めたことがあるは、そういう人を目ざとく見つけてしまい、色々とフォローをしてみようと努力してみたが、部を去っていく人の中にはが監督に進言したのではないかと疑う者もおり、辛い言葉を向けられた。 勿論、そういう人ばかりでなく彼女に礼を言う者もおり、お陰で何とか折れずにいられたと思う。 授業中、実渕は窓の外のグラウンドに視線を向けた。 体育をしているクラスがあり、とある女子生徒の姿に視線が定まる。 がいたのだ。 (この時期は陸上よね) 走り幅跳びの記録を取っているらしく、順番に跳んでいた。 の番になる。 彼女は踏切で跳び、砂場に着地した。 しかし、中々立ち上がらない。 クラスメイトが駆け寄り、彼女は軽く手を挙げて立ち上がる。 しかし、足を引きずっているようだ。 (大丈夫かしら?) 窓の外ばかり見ておくわけにもいかず、実渕は板書をして再びグラウンドに視線を向けた。 そこにはの姿があったが、少し足を引きずっているようだ。 (捻ったのかしら?) 心配になる。早くチャイムが鳴ればいいのにと勝手に焦った。 授業の終了チャイムが鳴る。 今日の授業はこれでお終いだ。 鞄に荷物を突っ込んで実渕は急いでグラウンドを目指した。 掃除当番に当たってなくてよかったと思いながら駆けていくと先ほど見下ろしたのクラスメイトの顔を見た。 「ちょっと」と声をかける。 声を掛けられたのクラスメイトは驚いたように実渕を見上げ、見たことがある先輩での知り合いだということを思いだす。 「さんは、大丈夫?」 「あ、保健室に行くって言ってました」 「誰かついて行った?」 「いいえ。一人で大丈夫だって」 「...そう。ありがとう」 礼を言って実渕は保健室に向かった。 部活が始まるまでまだ少し時間がある。 保健室のドアをノックして「失礼します」とドアを開ける。 「あら、実渕君。どうしたの?」 ある意味有名人の彼は保健医にも顔と名前を覚えられている。 「1年..4組のさんは来てますか?」 「いいえ。さっきの授業で負傷したって来た男子なら、消毒だけしてさっき追い出したけど。膝を擦り剥いてただけだし」 「そうですか」 回れ右をした実渕に「どうかしたの?」と保健医が問う。 「いえ。さっきの体育で足を捻ったみたいなんですけど...」 「そうなの...来たらちゃんと治療しておくわ」 「お願いしますね」 そう言って実渕は更衣室に向かった。 腕時計を見ると、もう少しで部活が始まる。できればもう部室棟に行った方がいいのだろうが、気になって仕方ない。 少し足早に向かった先に人が蹲っていた。 「ちゃん」 声を掛けられた彼女は顔を上げる。 実渕がいるのだ。 「大丈夫?足、捻っちゃった??」 「あ、大丈夫です」 慌てて立ち上がった彼女の顔が一瞬痛みで歪む。 「嘘はダメよ。玲央さん、お見通し」 そう言って彼はひょいとを横抱きにする。 「保健室に行きましょうね」 「あ、あの。実渕先輩」 「しっかり掴まってなさい」 そう言っておそらく抗議をしようとしたの言葉を聞かないようにして実渕は彼女を保健室に連れて行った。 保健室の前で立ち止まり、さてどうしようと悩む。 を抱えているので両手が塞がっている。 「降ろしていただければ...」 実渕の考えを察したがそう言うが、それを黙殺した彼は足でドアを開けた。引き戸だからできることだ。 本来、粗雑な所作は好きではないが、背に腹は替えられない。 「先生、お願いします」 そう言って部屋に入ってきた実渕を見て保健医は目を丸くして「椅子に座らせてあげて」と指示をする。 を座らせた実渕は「じゃあ、私は部活に行くね。マネージャーには今日はちゃんお休みって伝えておくから」と言って慌てて保健室を出ていく。 が時計を見ると、部活が始まる少し前の時間となっており、着替えを考えるともしかしたら遅刻となってしまうかもしれない。 しょんぼりして肩を落とすに保健医が困ったように笑った。 |
桜風
15.4.27
ブラウザバックでお戻りください