| 「ところで、部活動ってどうやって入るの?」 戻って開口一番氷室が問う。 「そうね、部活によっては、4月のうちにしか入部を認めないっていうところがあるけど。氷室君は何部を希望?」 「バスケ」 「あー、そうか...そうね、顧問に声を掛けるか、キャプテンに声を掛けるかのどちらかになるわね。申し訳ないけど、顧問の先生が誰かってのは知らないわ」 そう言って彼女はクラスメイトの名を口にする。 「確か、彼もバスケ部」 そして、また別の名前『岡村』という人物の名を挙げてクラスを言う。 3年の人のようだ。 「岡村さんがバスケ部のキャプテンだから聞いたら教えてくれると思う。見た目結構厳ついけど、いい人よ」 の言葉に「岡村さん」と氷室は名を繰り返す。 「ありがとう」 「あとは、放課後バスケ部の体育館に行くのもひとつの手よね。4月の入部しか認めないとしても、実力があれば話は別って言うかも知れないし、そもそも氷室君は4月にいなかったんだから、そこは考慮してもらえるんじゃないかしら」 「だといいけど」 と氷室は頷いた。 放課後、体育館を訪れる方が効率が良さそうだ。 そして、ふと思い出す。 先ほど見かけた背の高い男子のことだ。 「さん、バスケ部に詳しい?」 「詳しいってどのレベルかしら?」 「さっき見かけたんだけど、たぶん2mくらいある子が食堂にいたんだ。彼もバスケ部なのかなって」 そう問われては少し考えた。 「クラスが違うけど、劉君っていう中国からの留学生もバスケ部ね。彼も2m超えているらしいし、さっき話した岡村さんも2m超えてるらしいわよ。そうね、あと...えー、と。名前...紫の..薔薇」 「紫のバラ?」 「あ、そう。うん。紫原君って言う1年生が今年入ったんだって。バスケをしている人の間では凄く有名人らしいけど。私の印象ではのんびりしている子ね」 「話したことがあるの?」 氷室が問い、 「ちょっとだけね。それに、様子を見ているのと岡村さんからの話からの感想。マイペースでちょっと、困ってるみたいよ」 そう言って彼女は最後の一口を咀嚼して手を合わせて「ごちそうさま」という。 昼休憩がもう4分の3終わっている。 「ごめんなさい、時間が掛かったわね」 「いいよ」 氷室はそう言って立ち上がり、自分のとのコップを片付けにいった。 その後、少し足早に校内を案内され、向かいの校舎が視界に入って氷室は足を止める。 「さん」 「なに?」 彼女も足を止める。 氷室の視線を辿った先に男子生徒がいた。 「ああ、うん。さっき話した紫原君。彼、いつも見かけるたびに何かしらのお菓子を食べているのよね。お腹すいちゃってるのかしら」 首を傾げて彼女が言う。 放課後になり、氷室はクラスメイトのバスケ部員に案内を頼んで体育館に足を向けた。 彼が言うには、入部時期に制限は無いはずとのことだが、そもそも変な時期に入ろうとする者がいないので、良く分からないと言うのが正直なところらしい。 「けど、氷室も散々だっただろう?」 「何が?」 「に校内案内頼んでたみたいだけど、あいつ愛想ないしさ。偉そうだし」 彼の言葉に氷室は眉を上げた。 自分の抱いた彼女のイメージとちょっと違うのだ。 彼女は確かに愛想は無かった。というか、表情が殆ど無かった。 教室を出るときに誰かが『能面』と言ったが、そう言う意味なのだろう。 しかし、『偉そう』というのには同意できなかった。 ただ、少し誤解を招きやすい子なのかもしれない。まだ愛想がよければその印象も薄まるだろうが、彼女はそういうのが好きではないのだろうか。 体育館でキャプテンに入部希望の話をした。 なるほど、でかい。 このチーム自体結構高さが揃っているようだ。 そして、紫のバラ..紫原に視線を向ける。 彼は氷室の視線に気付いていないらしく、ボーっとしていた。 ここに来る途中、紫原のこともクラスメイトに聞いた。 『キセキの世代』と呼ばれる、10年に1人の才能を持った逸材の一人でポジションはセンターらしい。 キセキの世代は5人おり、日本各地に散らばったとか散らばらなかったとか。 とにかく、皆学校はバラけたらしい。 「紫原も性格に難ありだけど、あいつが入ったから全国制覇もぐっと近付いた感じがするぜ」 と彼が言う。 (彼は自分以外の誰かの性格の評価に厳しいのだろうか...) 氷室は首を傾げたものである。 その日、氷室は入部を認められてそのまま練習に参加した。 結構きつい練習内容だったが、全国を狙っている学校なのでそうだろうと納得した。 |