| 並んで寮に帰る。 「アツシは前からさんと知り合いだったの?」 「名前は知らなかったけど、顔は知ってた。オレがお菓子食べてたら声をかけてきて、『良い店知ってる』って言われて。行ってみたら駄菓子屋で、おばあちゃんが店にちょこんと座ってた。ちょっと手伝ったら、おばあちゃんたくさんオマケしてくれた。品揃え良いし、結構気に入ったし。ただ、ちょっと遠いー。そこがめんどいー」 「そうか」 氷室が相槌を打つ。 「今度の休みに行こうと思ってるけど、室ちんも行く?」 紫原に言われて少し悩み、「そうだね、行ってみよう」と頷いた。 休みの日の昼下がり、紫原と連れ立って噂の駄菓子屋に足を運ぶ。 「おばーちゃーん」 紫原店に入りながらそうやって声をかけた。 「おや、敦君。いらっしゃい」 氷室も続いて店に入った。 小さなおばあさんがちょこんと座っていた。 「お友達かい?」 「うん、室ちん」 そんな紹介のされ方をして氷室は慌てて「氷室辰也です」と挨拶をした。 「辰也君だね、いらっしゃいませ」 店内を見渡した紫原が「あれ」と呟く。 「おばあちゃん。これ、もうないの?」 「あるよ。ちょっと待っといで」 そう言って立ち上がるおばあさんを「いーよー。オレが取ってくる」と制して紫原店を出て行く。 「アツシ?」 「この間手伝ったから知ってるし」 店の外で紫原はそう答えて、そのまま店の倉庫に向かっていった。 「辰也君、お茶飲むかい?」 「え、あ。はい。頂きます」 頷いて慌てて「あ、俺がやります」と声を掛けるが、「良いから座っといで。年寄り扱いしないでおくれ」と言われて仕方なくストンと座った。 「こんにちは」 「...いらっしゃいませ」 どういっていいか分からず、とりあえず、店だからと思って氷室が言う。 「おばあちゃんが氷室君になっちゃった」 店先からそんな声が聞こえた。 立ち上がってみてみると、そこにいたのはだった。 「さん」 「こんにちは。おばあちゃんは?」 「おや、ちゃん。久しぶりだねぇ」 奥から出てきたおばあさんが声を掛ける。 「こんにちは。これ、母からおはぎです。どうぞ」 「嬉しいね。辰也君も食べるだろう?敦君は、まだかねぇ?」 「紫のバラ君も来てるの?」 が問う。 「俺はアツシに誘われて来たんだ」 氷室が答えると 「なるほど。こんな隠れ家良く見つけたなーって思ったけど、紫のバラ君の案内かー」 「『の』は余計だし」 背後から声がしては振り返る。 「わっ」と短く声を零す。 「どいてー」 「うん」 「アツシ、それ、持って来過ぎだろう...」 氷室が呆れた様子を見せた。 「だって、次いつ来れるかわかんないし。おばーちゃん、これ並べとくよ」 「お願いするよ」 ニコニコと微笑んでいるおばあちゃんは頷いた。 「ああ、でも。先におはぎどうだい?ちゃんのお母さんの手作りだよ」 「食べる!」 持っていた段ボール箱をドサッと落として紫原は軽い足取りで店の奥の畳の部屋に入っていった。 「あーあー...」 氷室が眉間に皺を寄せて箱を片付ける。 「氷室君もおはぎどうぞ。店番してるから、おばあちゃんとゆっくりしてて」 そう言ってダンボールを片付けている氷室に声をかけたはテキパキと片付ける。 「早く行かないと紫原君に全部食べられちゃうよ。母のおはぎは絶品なんだから。おばあちゃん曰く、長生きの秘訣のひとつらしいし」 「さんは?」 「家で食べてきたから、なくなっても大丈夫」 そう言って彼女は頷く。 「室ちん、要らないよね」 ひょっこりと顔を覗かせて紫原が言う。 「要る」 そう言って氷室はそちらに向かった。 ふと振り返るとは店先に出て伸びをしている。 「ちゃんは?」 おばあさんが問う。 「店番するって。家で食べてきたから大丈夫って言ってました」 「大好物なのにねぇ」 おばあさんが言う。 氷室は驚いて振り返った。 店先で今度は子供たちと話をしている。 「...さんとおばあさんは昔からの知り合いなんですか?」 氷室の問いに「そうだねー。小さいときは良く遊びに来てくれてたよ」と彼女は頷いた。 「昔からあんなだったのー?」 「あんなって?」 おばあさんが問い返した。 「怖い顔」 「怖くないよ。ちゃんは可愛らしい、凄く良い子だよ」 おばあさんが困ったように笑った。 |