| 練習試合という形ではあったが、実渕のプレイをしっかり見た。 洛山高校バスケ部はインパクトが強すぎた。レギュラー陣の個性がかなり強い。そういえば、居るなと思った。あのゴツイ人。 同学年とは思えない貫禄だ。 試合の結果は、全国に名を馳せているだけあって圧勝だった。 他県から態々来た学校が相手だったからか、レギュラーを出場させたらしいが、あまりに点差が広がったため、何人かはベンチに下がった。 赤司もベンチに下がったひとりだ。実渕は最後まで残り、容赦なく点を取っていった。 周囲の声を拾えば、対戦校は隣県の学校で、しかも決して弱い学校ではないとか。 益々気の毒だ。 試合が終わり、周囲のギャラリーが捌けていく。 流石に居続けることはできないだろうと思っていると実渕と目が合った。 「あとで」と口を動かしている。 は頷き、音楽室を目指した。 待っている時間を潰してしまうのにはちょうどいい場所だ。自分の居場所を実渕に知らせることもできるし。 暫くすると音楽室のドアが開いた。 「ピアノも弾けるのね」 驚いた表情を浮かべた実渕に「ピアノは基本なのよ」とは返しながら片づける。 「そうなの?」 「うん、そうなの。ヴァイオリンと同時に習わされてた。 それで、どこか行くの?」 が問う。 「お花屋さん」 実渕が返した。 練習試合があり、しかも試合内容に反省点が少なかったため早めに上がれたとか。 「というか、反省点が出ないように全力を出したしね」 ぱちんとウィンクをして実渕が言う。 「そうなの?」 「そうよ。ここ最近全然ちゃんとお話しする時間すら取れてなかったじゃない?」 「お昼は一緒に食べてるでしょ」 の指摘に実渕は首を横に振る。 「足りない」 そう言って実渕は彼女の手を引いて歩き出す。 「今の季節は何の花がいいかしら?」 「そうねぇ」 実渕の呟きには唸る。 春と言えば花の季節だ。 しかし、今は夏の手前、晩春となる。 チューリップも終わるし、スイートピーは少し前だ。終わったと言ってもいいだろう。 何より、実渕は一輪挿しに合う花を探しているはずだ。それなりにボリュームがある方がいい。もしくはシンプル... 「早いけど、カーネーションがあるかもね」 「母の日?」 「うん、季節的には...あ、芍薬もいいかも。ボリュームあるよ」 「芍薬。立てばってやつね。そうね、気を付けて見たこともないし...あるといいわね」 乗り気の実渕をは見上げる。 「なに?」 「最初は向日葵だったね」 「そうね」 まだ1年も経っていないのに懐かしい。 「夏になったら、ちゃんに向日葵プレゼントさせてね」 そんなことを言われて彼女は首を傾げる。 「花言葉までは興味ないのかしら?」 「ごめん、そうかも」 の言葉に実渕は苦笑し、「そう」と相槌を打った。 「今年は学校の花壇で向日葵育ててみようかな」 「あら、私のプレゼントする向日葵じゃ不服?」 「そうじゃなくて。大きいの育てたいの。向日葵って本気を出したら玲央くんくらいに成長しそうじゃない?」 「なによ、向日葵の本気って」 実渕はくすくすと笑いながらそうツッコミを入れた。 「変なこと言ったかな?」 は首を傾げる。 「向日葵ってね、太陽に花を向けるんですって。太陽は東から西に動くでしょ?それに合わせて、花も」 「それは聞いたことあるわ。凄いよね」 うんうんとは頷く。 「だから、花言葉はそこから来てるみたいなのよね。『あなただけを見つめる』って」 はきょとんと実渕を見上げてそして苦笑した。 「言われなくったって知ってるよ」 「あら、花言葉に興味ないって」 「そっちじゃなくて。玲央くん、わざわざ花言葉の話をするってことは向日葵をくれるその意味が花言葉って事なんでしょう?」 「ええ、そうね」 実渕は頷く。 「だから、花言葉ではなくて、玲央くんがくれてる気持ちの方よ」 実渕は少し面食らった表情を浮かべ、そして徐々に顔が赤くなる。 「なんだか、ちょっと..効いたわ」 「そう?でも、そうね。せっかくだし、貰えるなら欲しいわ。玲央くんが改めて告白してくれるっていうんだし」 「ちゃん、ちょっと意地悪ね」 口元を隠しながら実渕が唸る。 「あら、玲央くんは知ってるでしょ。あたし、小悪魔なの」 笑って言うに実渕は苦笑した。 そうだった。最初から彼女に振り回されていた。 「そうね、小悪魔さん」 そう言って実渕は繋いでいたの手を持ち上げてその甲に唇を落とした。 |
桜風
15.7.9
ブラウザバックでお戻りください