| 笠松が話を通してくれていたため、昼休憩に顧問に声をかけると、3年前の映像を貸してくれた。 在校生がいるのは見られないで少しがっかりだ。おそらく、これも笠松が指定したのだろうが... 「熱心だな」と声をかけられて小さく会釈を返す。 今日の放課後から見ようと思いながら少し浮足立ってしまう。中々手に入らなかったものが手に入ったのだ。 少し、ズルした感じはなくもないが、いつか役に立って返せればいいと思った。 放課後になり、部活が始まった。 相変わらず先輩達には体育館の外での用事を指示され、体育館では何が起こっているのか全く分からない。 中の事もわかっておきたいと思うのだが、たぶん、口に出したら当分中の事をさせてもらえないと思う。 流石に、自分が先輩たちに嫌われているのは自覚している。 ただ、その原因がイマイチわからない。 もしかしたら、手際が悪いのだろうか。たぶん、それだと思っている。 強豪チームのマネージャーにしては、できないことが多すぎる。 部活が終わり、選手たちがいなくなってからは戻って来る。 頃合いを見計らっているのではなく、結局それくらいになるのだ。 体育館のドアをそっと開けると、そこには笠松がいた。 「うぴゃあ!」 変な声が漏れた。 「んだよ。俺がいたらまずいのか」 不機嫌そうに言う笠松に 「そういうことはありませんけど」 とが返す。 敬語で返されたので、少し癇に障ったが、これが“先輩”と“後輩”の正しいやり取りなのだ。 「DVD、見るのか?」 「ええ、はい。あ、いろいろ教えてくださいね」 「...気が向いたらな」 たぶん、気になってしょうがないんだろうが、ひとまずそう言っておいた。 はいつも通りにボールを籠から取り出してボール磨き用にいつも持ってきているタオルで拭きながら勉強を始める。 (あいつだったのかよ...) ボールが磨かれていて感心していたが、1年が熱心に磨いているのではなく、彼女が手持無沙汰解消に磨いていたのだ。 暫くシュート練習をしていたが、ふと体育館の中の時計を見ると9時前で、振り返るとがずっと画面を見ていた。 (そういや、集中力はあるんだよな) そう思って「おい」と声をかけるが反応がない。 「おい、」 名を呼ぶと「はい」と返事をして顔を上げてくる。 昔から、名前を呼べば反応した。 「時間。もうおせーから家で見ろ」 「え?」と言った彼女は驚いた表情で体育館の時計を探して「うわぁ」と呟く。 「ほら、上がるぞ。駅まで送ってやるから」 「あ、その前に。これ。これ教えて」 敬語をどこかに忘れてきたらしい彼女が笠松を手招きした。 「あ?」 「これ。どうして笛が鳴ったの?スコア見たら..パーソナルファウルしか分かんないし。相手のファウルじゃないの?」 そう言われて笠松もモニタを覗き込む。 「あー、これは結構難しいジャッジなんだよ。タイミングの取り方で、の言うとおりに相手のチャージングになるけど、これは、こっちの“ブロッキング”が取られたパターンだな」 「ブロッキング...」 あんまりメジャーじゃないのかもしれない。 「もういいな。ほら、帰り支度して来い。体育館は俺が閉めておいてやるから」 「はーい」 そう言っては体育館から出て行った。 その際、磨いたボールは投げて籠に入れる。 彼女は、運動神経だって悪くない。 (そういや、隠れねぇな...) 今年の冬の終わりの合格発表の時にの姿を目にした。 ああ、こいつは俺の背中に隠れるんだなと思っていた。 だが、今のところそう言った感じはない。 人見知りは継続中だが、意外と頼られてる感じがしない。 「ユキちゃん、まだ着替えてない」 戻ってきたが言う。 「ユキちゃん言うな」 そう返して鍵を持って彼女の元に向かう。 「わりぃ、鍵は返してきてくれ」 「はいはい」 そう言いながら鍵を受け取ったは思ったよりも大きくて、笠松は首を傾げた。 |
桜風
14.12.1
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