となり 11





 インターハイでは準々決勝に進出した。

以前、は東京に試合を見に行かないかと黄瀬に誘われた。準々決勝は、その時彼が言ったキセキの世代同士の試合となった。

遅かれ早かれとあの時は答えたと思う。

実際そうなったが、試合のレベルの高さは思った以上で、そして結果はつらいものとなった。

今まで部活動というものをしたことがなかったは初めて味わう苦さで、帰路は葬式のように皆の口数が少なかった。



(なんでこんなことになってんだ?)

インターハイ準々決勝で森山が黄瀬に合コンのセッティングを頼んだこともあり、先日それが実行された。

が、散々な結果に終わった。

笠松はそれで終わってかまわなかったのだが、森山がムキになったのだ。

ナンパをしようと言い始め、それを実行することになった。

笠松はパスしようとしたのだが、連行された。

「何でだ!」

憤る森山に「帰ろう」と何度言ったかもうわからない。

すぐに諦めるだろうと思ったが、意外と粘る森山に見せつけるような盛大なため息を吐くが、彼には届いていないらしく果敢に挑戦し続ける。

「ユッキー!」

制服姿の女子が手を振りながらやってくる。

「「「「ユッキー?!」」」」

「げぇ!?」

仲間たちの疑問の声と笠松の嫌悪の声が重なった。

「もう!ユッキーったら!!ナンパするなら呼んでよ。笑ってあげるのに」

すでに笑いを堪え切れずぷっと噴出した彼女が笠松の目を見ていう。

「お前、何でこんなところにいるんだよ」

「模試の帰りだよ、ユッキー」

からかいの声がもう一つ増えた。

!」

「よー、夏休み中には実家帰らないのか?帰ってきたらうちに来いよ、マリカしようぜ、マリカ」

そう言いながら笠松と肩を組もうとした“”は身長差で諦めた。

「やだね。お前手加減しねーじゃんよ」

そう返した笠松に「何だ、ユキは手加減されて勝って嬉しいのか?」と真顔で返されてぐぅと唸る。

「いつからいたんだよ」

話題を変えると

「あたしたちが見てる間に3戦3敗してたね。全敗じゃーん」

ケタケタと笑う彼女にげんなりとした表情を浮かべて笠松は黙殺した。

「けど、ナンパできるくらい元気じゃねーか。ったく、は」

呆れたようにが言う。

が?どうかしたのか?」

笠松が問うと

「毎日べそべそ泣いて。あいつの状況から、ユキがめちゃくちゃ落ち込んでて立ち直れないところにいるんじゃないかって心配になるくらいだったんだよ。あまりにあいつが泣くから家の中キノコが生えそうだから、家の外に連れ出したんだ。この模試が終わったら、海常にでも行くかーって話してたんだけど」

「ナンパ現場目撃したら、何か気が抜けたよねー」

笑ながら彼女が言葉を引き継ぐ。

「ちなみに、お前が元気そうなので。ウチのはお前の母ちゃんに電話してるから」

「はあ?!」

思わず声を上げる。

「ユッキーうるさい」と彼女が言うが気にしない。

「オレの携帯貸したし。さすがにはおまえんちの番号知らないからな」

「ちょ、は?!」

「あそこ。お前ら元気そうで泣きながら喜んでた」

確かに木陰で携帯を耳に当てているの姿が見える。

「ちょ、まて!!」

そう言って駆けだした笠松はあっという間にの側に行き、携帯を取り上げている。

「あ、あそこにいたのか

「良く見つけたっスねぇ」

笠松の友人たちの会話に苦笑したたちはその場にいた、ナンパをしていなかった一人に視線を向ける。

それに気づいた小堀が小さく首を傾げた。

「残るんだろう?3年」

「ああ、まあ。えーと。..妹さんと笠松は以前からの知り合いだったのか?」

そう問われて彼は頷いた。

「小学生の時からな。中学は別になったけど、それなりに交流はあったし。夏休みとか、たまにウチに遊びに来てて。ついでに、ユキの女嫌いはこいつが原因」

そう言って同じ制服を着ている女子に視線を向ける。

「えー、面白かったのに」

「だからだろ。...ユキとが知り合いで何か不都合あった?」

半眼になって隣に立つ女子にため息を吐き、気を取り直して小堀に問いを向ける。

問われた小堀は少し考えた。

思い出したのはマネージャー事件だ。現マネージャーとのどちらを選ぶかと問われての方を選んだ。

だが、その理由は確かに頷けるもので。

「無いっスよ」

不意に別の声が自分の心境を代弁した。

っち、人見知りだけど頑張ってるし、笠松先輩もそれなりに気にはしてたけど、あからさまじゃなかったっス。贔屓はしてないし」

(これまたムカつくほど背が高いな)

そんなことを思ったは「そうか」と頷く。

「黄瀬は知ってたのか?」

森山に問われて「まあ、はい」と曖昧に頷いた。

「ふーん」と森山は意外と興味なさそうに答えた。


間もなく笠松がを連れて戻ってきた。

「んじゃ、ユキ。をヨロシク」

から携帯を受け取りながらが言う。

「はあ?!」

不平の声を上げる笠松の傍に寄り「まだナンパしたいのか?」と呟くように問うた。

「あ、」と呟いた笠松は「ったく、仕方ねぇな」と急に態度を変える。

「んじゃ、オレらは本屋に寄って帰るから」

「じゃあねー、ユッキー」

の隣を歩く彼女は笠松に投げキッスをくれたが彼は面倒くさそうに手で払う。

「あの、でも。先輩たちまだナンパしたいなら私一人で帰れますし」

「いいから。悪いな、先に帰る」

そう言って笠松が歩きだし「失礼します」と言ってが笠松を追う。

「...の兄ちゃんの着てた制服」

森山が呟く。

「ああ...」

「どうかしたんスか?」

地元ではない黄瀬が問うと

「あれ、超進学校だよ。大学までの一貫校だけど、中学から高校、高校から大学に上がるのにめちゃくちゃ難しいテストがあるって聞いたことがある」

と唸るように小堀が言う。

「え、」と黄瀬は絶句をして遠ざかっていくの背中を見た。

「マジっすか」

「マジだ」

誰にともなく呟いた黄瀬の声に小堀が頷いた。









桜風
14.12.29


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