となり 13





 二学期の中間テストを控え、部活は中止になった。

っち、言ってることがわからない」

市立図書館で隣に座っている黄瀬が言う。

学校の図書室と違って、市立図書館の自習室はある程度仕切りでスペースが仕切られており、声を落とせば会話をしても支障がなさそうだということでが指定した。

元々図書館なる場所に足を踏み入れる事がない黄瀬は、未知なる空間に慣れない状況で、勉強を放棄して外のバスケットコートでストレスを発散したいと考えている。

「わからない...えーと、どこから?」

が説明した内容では黄瀬の頭に入らず、彼女も困惑している。



事の発端は顧問の武内だった。

黄瀬のクラスの教科担当である彼は、黄瀬の成績を何とかせねばと思っていた。

部活を理由に成績が悪くていいわけがない。何より、顧問をしている生徒の成績が芳しくないのを放っておけない。学生の本分はあくまで学業だ。

例え、スポーツ推薦で獲得した選手だとしてもそれに例外はない。

しかし、どう対策を取るかが問題となる。

1学期の期末は笠松たち3年が中心になって面倒を見てくれたそうだが、冬まで残ると決めた彼らは即ち受験勉強の時間が減るということで。

彼らを頼るのは酷だと思った。

うんうん唸っていると同僚に声を掛けられた。

相談してみると、マネージャーのを勧められた。この教員は、彼女の担任だ。

この学校はテスト結果を貼り出すということはしない。

なので、自分の受け持っていない生徒の成績というのはイマイチ情報として入りにくいものなのだ。

しかし、どうやら彼女は、総合成績で学年トップらしい。

社会科の成績も勿論上位で、出身中学を聞いて益々期待をしてしまう。




テスト期間前の最後の部活が終わった際、彼女に声をかけた。

「はい」と返事をした彼女は駆けてくる。

「悪いが、黄瀬の勉強を見てやれんか」

「は?」

きょとんとし、ちょうど近くにいた笠松も「は?」と声を漏らした。

武内は振り返り、笠松を見る。

彼はふと視線を外して誤魔化すようにしていた。

「黄瀬の成績は、知っているか?」

「色々とギリギリらしいということは...」

「ちょっとっち酷い!!」

黄瀬は抗議の声を上げるが、皆が黙殺し

「流石に顧問として見過ごせなくてな」

と武内が唸るように言う。

「そんなに絶望的なんですか?」

「絶望的って!」

「楽観視できない。何より、部活を理由にそれというのは少し具合が悪いしな」

「監督まで〜」

肩を落として言う黄瀬は拗ねてしまった。

「監督、こいつの試験勉強なら俺が面倒見ますよ」

笠松が申し出るが

「お前は受験勉強も並行してあるだろう」

と言われて言葉を続けられなかった。

「頼めんか」

重ねて言われて「嫌です」とは言えない。

「努力はしますけど、結果までは保証できませんよ?」

がそう言うと「すまんな」と武内は頷いた。



そういう経緯で見始めた黄瀬の試験勉強だが、やる気のかけらが見られない。

「やっぱり笠松先輩に蹴っ飛ばしてもらわなきゃだめなのかな」

ぽつりとが呟くと黄瀬は背筋を伸ばす。

(ん?)

何気なく零したの言葉は意外と効き目があったらしく、黄瀬の学習意欲は向上した。









桜風
15.1.12


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