| テストの答案が返ってくる期間に入った。 一応、黄瀬曰く「これまでの人生で一番勉強したし、よくできたと思うっス!」ということで。 は運を天に任せることにしている。 大抵自分が「できた」というときはできていない時が多いのだ。 黄瀬が笠松たちに答案用紙を見せている。 黄瀬が笠松に蹴られた。 (あ、赤点...) 人に教えるというのは難しいと反省していると「!」と笠松に呼ばれた。 「はい」と返事をして向かう。 「お前にも見る権利がある」 そう言って黄瀬の答案を渡してきた。 一応黄瀬を見上げると彼は自信満々に頷く。 恐る恐る見ると、全教科7割以上の得点だ。 「凄い!黄瀬くん!!」 「っちのおかげっスよ」 「でも、またこのスペル間違ってる」 目ざとく見つけた箇所を指摘すると「もうこれで覚えちゃったから仕方ないっスよー」と黄瀬は眉を八の字にして訴える。 「でも、なんでさっき笠松先輩に蹴っ飛ばされてたの?」 「こいつ、言うに事欠いて『っちの方が教え方上手いっスよー』だぞ。俺たちが時間を取って教えてやったってのに」 (ああ、そいういうこと) は納得して「失礼なことを言っちゃだめよ」と黄瀬を窘めた。 「のテストは大丈夫だったか?」 笠松に問われて 「変化なしです」 とが返す。 黄瀬に割いた時間はそんなに大きくない。 「...そうか」 妙な間を置いて笠松は頷く。 その後体育館に顔を出してきた武内に黄瀬のテスト結果を報告すると甚く満足し「期末もに頼むか」と言っていた。 中間テストが終わると文化祭準備が始まる。 運動系部活に力を入れている当校でも文化祭という行事はある。 が、そこまで力を入れていない。 準備もそこそこに、当日を迎えるのが恒例となっている。 強豪と呼ばれる部の使用する体育館は、文化祭の出店場所としての使用不可となっているため、部活も毎日ある。 とはいえ、学校行事であるため、その時間帯は部活はできない。 よって、土日に開催される文化祭のおかげで部活動は夕方からとなる。 初めての文化祭が意外に盛り上がりを見せていないことには少しだけがっかりした。 海常を受験すると決めた時、入試でこけると思っていなかったので、取り敢えず進学先は確定しているし、文化祭なんてどこも似たようなものだと思っていたため、こういうところまでチェックしていなかった。 (なんだかなー) そうはいってももうちょっとあるだろうと思いながら校内を歩く。 「」 呼ばれて振り返ると笠松だ。 「ひとりか?」 「ええ、まあ。笠松先輩は?」 「俺もだな。3年は特に文化祭に出席を求められていないから」 肩を竦めて彼が言う。 1年と2年はホームルームがあるので、さぼるならそれ以降ということになる。 「のクラスは何するんだ?」 「展示です。模擬店だったら人数割かなきゃいけないからって。まあ、準備をさぼりまくってる人が多かったですけどね」 苦笑してが言う。 「そうか...あー、うどん食いに行かね?」 「いいですよ。模擬店ですか?」 「学食」 「文化祭なのに」 そう言ってはくすくす笑った。 「模擬店が良かったか?」 気になって問う笠松に 「いいえ。どこでも。でも、学食の方が安心して食べられますよね」 とは言う。 食堂に向かいながら笠松はを見下ろす。 テスト期間中に盗み聞きしてしまった言葉が忘れられない。 そして、自分なりに考えていた。 正直、黄瀬がと話をしているのは面白くないと思えるときがある。 カテゴリー黄瀬だからそうなのかもしれないが、自分が見て来た表情と少し違うものが見えてきて。 「何だよ、あれ」と思う。それを嫉妬だと、仕方ないから認めた。 「何ですか?」 視線を感じたが見上げてきた。 「あ、いや。お前、いつここの受験決めたんだ?」 「去年の今頃にはもうとっくに」 「早いな」 少し驚いて漏らした言葉に「そうですか?」とが首を傾げる。 「だって、正月に帰った時、何も言わなかっただろう」 寮も正月だけは閉鎖される。 そのため、強制的に帰省という流れになるのだ。 帰省した際には、友人であるの兄に会うため家に足を運ぶ。 そして、大抵がいるので話をするのだが、正月の帰省時に何も聞いていない。 いや、意味深に「は今年受験生なんだよ」と彼女の兄が態々言っていた。 そういうことか、とここにきて納得する。 「まあ、サプライズ?」 「合格発表の時お前見て、びっくりしたけどな」 「え、あの時にもうばれてたんですか?」 「お前の目論見どおり、びっくりはしたけどな」 苦笑して笠松が言う。 |
桜風
15.1.26
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