| 「おーす、久しぶりー」 声を掛けられては振り返る。 先日負傷したと聞いた達海がひょこひょこやってきたのだ。 既に街灯が灯っている時間だ。 「あんた何やってんの」 驚いては彼に駆け寄った。 「んー、まあ。練習に参加させてもらえないし」 「当然でしょう、それじゃあ参加させられないって」 そう言っては達海の脚を指差した。 周囲は腫れ物に触れるかのようだというのに、何だこれ。 達海は思わず笑い出す。 「なによ」 眉間に皺を寄せて抗議をするに「いーや。は相変わらずだなと思って」と言ってまた笑う。 ゆっくりと並んで歩き出す。 「松葉杖とかは?」 「要らないよ」 「脚に負担掛けるんじゃないの?」 「ドクターが大丈夫って言った」 達海の言葉に多少の疑念はあるが、彼はフットボールをするためなら不自由も我慢するはずだ。何せ、フットボールバカだから。 だから、彼は嘘は言っていないと思う。 「しかし、が一番乗りだったなー」 「何が?」 聞き返したの目にコンビニの看板が目に入る。 「ちょい先行ってて」 「どこに?」 「先に公園あるじゃん」 「了解」 そうしてその場で一旦別れた。 達海は公園に向かいながら夜空を見上げた。まん丸な月の淡い光が優しい。 そういや、満月か... との付き合いは高校のときからだから... 指折り数えてみたが意外とそう長くない。 彼女は太陽みたいに眩しくないし、かといって月みたいに静かでもない。 何なんだろう... 先ほどが言っていた公園に着いた。 入り口から見える場所にあるベンチに腰掛けて彼女を待つ。 彼女が一番乗りだった。自分の脚の違和感を言い当てた他人は。 何となく違和感があった日に電話がかかってきて指摘された。「病院行ったほうが良いんじゃない?」と。しかし、達海は笑ってそれに応じようとしなかった。その結果、こうなった。 少ししてがやって来たのを見つけて「おーい」と手を振ると彼女も軽く手を上げて応え、傍までやってきた。 「達海はこれね」と言いながらアイスを渡す。 「お、気が利くじゃん」 「昔からでしょう」と軽く返しながらが続けて出したのはビールとその肴のジャーキー。 「オッサンのチョイスだな」と達海が言うと「大人のチョイスでしょう?」とが返す。 「そういや、後藤さんは元気?」 達海のお陰では後藤とも知り合いだ。京都に移籍してしまったので今はあまり顔を見ないが試合中継があると思わずチャンネルを止めてしまう。 「何で俺に聞くの?」 「達海以外の誰に聞いたら後藤さんの状況が分かると言うの?」 真顔で返されて「たしかに」と達海は返す。 「この間会ったよ」 「いつ?」 「京都がこっちに試合に来たとき」 なるほど、とは納得した。 「元気だった?」 「オッサンだった」 「達海も何年かしたらそれでしょう?」 「もれなくも」 達海が返した言葉には顔を顰める。 言葉を返さず、缶ビールのプルトップを空けてそのままグビグビと缶の半分くらい飲んだ。 「っぷっはー!」 「だから、オッサン」 呆れたように達海が言うと「せめて性別くらいは間違えないように」とが返す。 「そういえば、さっきコンビニの前でなんか言いかけなかった?」 一番乗りだとか何とか... ちょっと気になっていたので聞いてみたが、達海は「俺、何か言ったっけ?」と言う。 「ま、こういうやつだよね」と付き合いがそこそこ長いは肩を竦めて諦めた。 「けどさ、今はゆっくり休みなさいな。それが仕事」 突然の話題転換。けれども、最近自分の胸に燻っている何かを的確に指摘したその言葉に達海は苦笑した。 「ホント、変わんねぇなー」 少しだけ情けない声で呟いた達海に、聞こえない振りをしたはジャーキーに手を伸ばす。 「ってさ」 今度はどうやら達海が話題を変えようとしているらしい。 「んー?」 「太陽みたいに眩しくないよな」 「褒めてる?貶してる??返答次第ではゲンコいくよ」 「事実の確認。んで、月みたいに静かじゃない」 「褒めてる?貶してる?以下略」 「じゃあ、何だろうな?」 「本人に聞くなー」 適当な声音でが言う。 「そこそこ自己顕示欲があると言うか、放っておいても目に入ってしまう感じなんだよなー...」 「ほうほう?ところで、達海は芸術的センスがないからそろそろあたしを何かに喩えようとするのはやめた方が良いと思うな」 が言うが達海も聞く耳を持つつもりがないらしい。 肩を竦めてビールを一口飲んだ。 「達海、焦らないことだからね」 その言葉に達海は不思議そうに彼女を見た。 チラと達海に視線を向けたは何も言わずに2缶目に手を伸ばす。 「んー、まあ。ちょっと慣れないけどな」 達海はそう返し、やっと先ほどにもらったアイスを開ける。 「なー、。これ、溶けてる」 「アンタがとっとと食べないからでしょう?そんな達海には『自業自得』と言う言葉をプレゼントするわ」 「えー...が後藤の事を聞いてきたのが悪いんだろう」 「寝言は寝て言え」 笑顔で答えたに口を尖らせて拗ねた表情を見せてみたが、達海のそんな表情は慣れっこのは「ターコさん」と達海の口を掴んでやった。 |
夜の公園で、他人からしたら一見イチャイチャしてるようですが、
本人達はまったくそんな要素がない2人です。
「男女の友情?あるに決まってんじゃん」と真顔で言う2人です。
タッツを相手にすると会話が無駄に多くなるのは、
彼が会話を適当に散らかして放ったらかしにするからだと主張したい(笑)
頑張ることは大切。
けど、休むことも大事。焦りは禁物。
そんな気持ち。
桜風
11.03.20
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