| 風が少しでも吹くとハラハラと花びらが散る。 「満開、か...」 呟いて見上げた。 おそらく、満開は数日前で花の盛りは過ぎているのだろう。ちらほら葉が見えている。 昔、和歌で『花』といえば梅のことだったらしい。 しかし、いつの間にか『花』といえば桜となった。 桜が好まれる理由はきっと春を告げる花だからだろう。 『春を告げる花』というのはちょっと違うか。 福寿草とか雪割り草とか色々ある。梅だって、春を告げる花のはずだ。 タンポポも春の花だし、スミレやシロツメクサも。 桜が何故好まれるのだろうか... ぽんと肩を叩かれた。 振り返ると片手を軽く上げて「や!」と待ち人、が笑っている。 「俺の時計は早いのか?」 「そうなんじゃない?」 しれっと返す彼女にデコピンをお見舞いする。 「いた〜い」 大げさにおでこを押さえて彼女が抗議するが「知るか」と返す。 「村越、酷い!」 「どっちがだ。1時間もしれっと遅れやがって」 「せっかく村越に会うのに可愛くオシャレしたいと思って」 「どれだけ口先だけで生きてるんだ、お前は」 心から呆れた声を出す。 実際、の服装は近所のコンビニに行くといっても違和感のないとてもラフなものだ。 「あー、今年の桜ももうお終いかー...」 「職場のイベントで花見には行ったんじゃなかったか?」 10日くらい前に電話で話をしたときに聞いたと思う。 「行ったよ。我が社の新人クンの最初の試練。花見の場所取り。今年の新人クンは中々やる子だったわー」 「ほう?良かったな...」 「だーれも桜を見てなくてしょんぼりしてたけど」 「見てやれよ」 溜息混じりに言うと「よし、見ようか」とが言う。 「今からか?」 「そう。何か用事があった?」 首を傾げてが言う。 「未定だったな」 「じゃ、決定!ビール行こう。大人でよかったー」 元気良く片手を挙げてが言う。 「お前の場合、ダメな大人なんだろうがな」 「なにをー!」 やはり元気良く抗議をし、はコンビニに走った。 「こんなに食うのか?」 「食う!村越は?」 「色々気をつけなきゃならん」 「大変ねー。食べられない村越の分まであたしが食べてあげるから安心して!」 「どうせ俺はカウントされていないんだろうが」 呆れながら村越が言うと「あらやだ、ちゃんとウーロン茶入ってるでしょう?」と村越が持っているコンビニの買い物袋を指差してが言う。 たしかに、ペットボトルが入っている。 「で?何処に行くんだ?」 「秘密の場所。誰にも教えちゃだめよ?」 人差し指を唇に当ててが笑い、ずんずん進んでいく。 暫く急な坂を上ってその先に小ぢんまりとした公園のような広場があった。 その広場に桜の木が1本。 「どう?」と自慢げにが言う。 「中々の穴場だな」と村越が応じると「でしょ?」と胸を張る。 桜の木の下に先ほどの買い物袋を敷き、「が座れ」と村越が言う。 「良いの?」 「気にするな」 「ありがとう」 素直に村越の好意に甘える。 ストンと座ってが見上げた。桜の木もそんなに立派なものではなく、どちらかといえば痩せている。 しかし、桜は桜だ。 「そういや、村越と花見って初めて?」 「歩きながら見たりしてるが、確かに腰を落ち着けての花見はないな。けど、今年の桜ももう終わりだな」 此処の桜は先ほど目にしていた木よりも花の散りが早かったようで葉も結構目立つ。 「来年が楽しみね」 「はあ?」 の言葉に村越が問う。 「何?」 「いや、来年?」 「だって、桜の花は散っても来年また咲くじゃない。今年とは違う花が綺麗に咲くのよ?」 「気の早い話だな」 苦笑して村越が言う。 「良いじゃない。来年の楽しみが確実にひとつあるのよ」 「...来年咲かなかったら?」 何かしらの原因で咲かない年があるかもしれない。 「じゃあ、再来年。いつか必ず咲くって」 そう言ってが笑う。 「お前の根拠のない前向きさ、羨ましいよ」 「根拠?あるよ??」 「今のにか?」 驚きつつ聞き返すとは少し偉そうに頷いた。 「『信じてる』」 「は?それは根拠と言うのか?」 「信じてなきゃ全く『ない』かもしれないけど、信じてたら少しは『ある』でしょう?希望ってのは、信じるところから生まれるんだから」 「壮大な話だな」 「夢はでっかく世界一!」 何の夢だよ、と呆れつつ「じゃ、来年も花見するか」と村越が誘う。 「今度は満開のちょい前で」 「桜は時期が難しいからな」 「だから皆に愛されるんじゃない?散り際も美しいし」 「...かもな」 風が走って花びらが舞う。 今年の桜は最後かもしれないが、来年の桜の始まりだ。 |
今年花が咲かなくても、きっと来年咲きます。
来年咲かなかったら、再来年咲きます。
いつか必ず花は咲くと思います。
嵐の『サクラ咲ケ』を聞いてて桜の話が書きたくなって書いた話です。
さすがに歌のタイトル表記と同じだとまずいかと思って漢字と平仮名でタイトル。
桜風
11.03.26
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