YELL





ふと思ってしまった、あたしは本当に力になっているのだろうか...


ホームの試合は必ずスタジアムに行き、アウェイでも関東ならちょっと足を伸ばしてでも応援に行った。

頑張っている姿を見ていたらあたしが頑張れる気がする。

応援をすれば、100%の結果はムリだけどそれでも応えてくれる。

試合の翌日は声が掠れて、職場でいつも苦笑されている。電話が取れないからちょっと迷惑をかけてることは分かっている。

それでも間近で見る選手達の表情は凄く素敵で、高い目標のある人ってあんな表情をするんだなとこちらも刺激を受ける。


選手が良いプレイをしたらみんなで声を張って名前を連呼。

少し調子が悪いのかな、と思ったら頑張っての気持ちを込めて名前を呼ぶ。

その日も、あたしはスタジアムに向かった。

既に応援団の人たちにも顔を覚えられて声をかけられるくらいになった。

スタメンの発表を見て少しだけがっかりする。

此処最近、堺さんがスタメンではない。

ただ、ベンチを見ると堺さんの姿があるから期待していよう。

彼は学生のときに近所に住んでいたから顔見知り程度には知り合いなのだ。母親同士がどうにも気が合う性格だったのも知り合いとなった原因のひとつでもある。

応援団のチーフの人、『羽田さん』と言うらしいが、その人の音頭で皆が声を張る。

いつものこと、いつもの風景。

けれど、あたしはふと思ってしまった。

此処であたしが応援してどれだけの力になっているのだろうか。

こんなにたくさんの人他応援している中、あたしの声は選手達に届いているのだろうか。

見返りが欲しいわけではない。

それでも、こうやって応援すること自体がわたしのエゴだろうか。

スタジアムに来て、応援して、充実感を得る。そうしてさらに選手達の力になっているとか図々しくないだろうか。

自分のために応援すれば良いのに、選手のためとかそういう大義名分を掲げている。

あたし、迷惑かけてないかな。

選手の皆、間違いなく頑張ってるのに、さらに『頑張って』って...



自分の応援の意味に自信がなくなって、それからスタジアムに行くのが怖くなり、ここ数試合はテレビ観戦だ。

けれど、テレビ画面に映るスタジアムはいつも自分がその場に立って応援しているその場所で、モニタ越しに見るのは少し違和感があった。

家の中では大きな声で応援できない。

カメラが追うからボールのないところでの選手の動きが見えない。

他のスタジアムだったらテレビで見慣れているけど、あそこは違う。

テレビだと、試合を見るのがあまり楽しくない...


「お疲れさまー」

職場の同僚と会社の前で別れて駅に向かう。

「おい、」と声をかけられて振り返ると堺さん。

「お久しぶりです」

あれ?今もまだシーズン中だから忙しいのでは?

首を傾げると堺さんが「時間、大丈夫か」と聞いてきた。

「はい」

あとは家に帰るだけ。

一人暮らしの身なので、正直急いで帰ることもない。ペットがいたら急がなきゃいけないみたいだけど。

「じゃあ、付き合え」

そう言って堺さんが歩きだし、あたしはその後を歩いた。

少し離れたパーキングに車を止めていた堺さんに促されて車に乗る。

何だろう...

「最近、スタジアムに来てないだろう」

車の運転をしながら堺さんが言う。視線はまっすぐ、前を向いたまま。

「えーと。は..い」

何で知ってるんだろう...?

「忙しいのか?」

ここで「はい」といえない正直者。

「いいえ...」

「そうかよ」

少しぶっきらぼうに堺さんが言う。

「何で知ってるんですか?」

「知ってるも何も。スタジアムに姿がなけりゃ、来てないって事だろう」

「見えるものなんですか?!」

「うちのサポーターはそこまで大規模じゃないしな。知った顔ならそれなりに見つけられる。特に、は場所、大抵同じだろう?」

驚いた。

見えるんだ、選手って。気付いてたんだ、堺さん。

「もう、来ないのか?」

堺さんの声音がちょっといつもと違って、思わずあたしは自分の感じた不安を口にした。


聞き終わった堺さんは、こともあろうに舌打ちをした。

「あのなぁ...」

溜息交じりの「あのなぁ」だ。

「スタジアムでもの声はきっちり届いてる。それに、スポーツ選手は応援あってこそだぞ。いくらでも『頑張って』って言われ慣れてる。

第一、プロのアスリートが声援をもらえない方が問題だ。言われてナンボの『頑張って』だぞ?!」

ちょっと怒った口調でそういわれた。

「俺にとって、の『頑張って』は相当力になる。だから、またスタジアムに来いよ」

ちらっと見たら堺さんと視線がぶつかった。

「そんな気になるんだったら、俺だけ応援しとけ。そうしろ、そうしろ。他の奴らを応援するな」

「あの、チームメイト...」

「良いから。だから、次の試合はスタジアムに来いよ。俺は若手の奴らに比べて勝負強さも瞬発力もないけどな。まだまだ全然諦めてないんだ。お前の声が届くなら、もっと頑張れる」

「あたしの応援が、堺さんの力になるの?」

「だから、そう言ってるだろう」

ぶっきらぼうに言われた。堺さんは基本的に素っ気無い。

「わかりました。うん、またスタジアムに行く。そして、堺さんがゴールした暁には投げキッスしてもらう。練習しといてください」

「!?ばか!!」

少し動揺したのか車が揺れた。

けど、すぐに安定した運転に戻って赤信号で止まる。

「だめですか?」

からかって聞くと堺さんは深くシートに凭れて一度大きく行きと吐き、「してやるよ、そんくらい。だから、ホームの試合は全部来て俺を応援しろよ」と言ってニッと笑った。






最後はジャイキリかスラダンと、25作目くらいに思いました。
やっぱり、応援と言ったらスポーツもの。
あれ?じゃあ、何ではじっ歩がないのだろうか...
堺さん視点のもあるのでよろしければご覧ください。
ヒロインの思ったこと、この企画が第一部の収束に向かっている中、自分が抱いた疑問です。
けど、応援してる側はそのパワーを信じ続けなきゃ行けないんですよね、きっと。
というか、企画名『YELL』の方が何か良かったと今更思っています(苦笑)


桜風
11.04.02


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