最強になる条件





は幼い頃から少し鈍かった。

コーディネーターのクセに、と良く陰口を叩かれた。

コーディネーターになったのは自分のせいではないし、ナチュラルでもコーディネーターに並ぶ運動神経を持っている人だっていると聞いたことがある。

だったら、コーディネーターでも鈍い人が居ても良いではないか。

世の中全てが全て理想にかなったものではない。理不尽なことはある。

しかし、そんなに興味を持っている人が居た。

ラスティ・マッケンジー。

結構軽い感じで初めて声を掛けてきたその言葉も中々サイアクだった。

「ねえ、ちゃんって言うんだっけ?ビックリするくらい鈍いんだね。オレ、君ほど鈍い人を今まで見たことなかったよ」

その言葉を笑顔で言い放ったのだ。

酷い...

心からそう思った。

無遠慮に人の傷口を抉る。

自分だって好きで鈍いのではない。出来れば、風のように颯爽と駆けて忍者のように壁の上に跳びあがり、屋根の上を華麗に渡っていきたい。

それなのに、自分ときたら、走っても前に進まないし、跳躍力も平均に届かない。

背は高いし、黙って歩いていれば完璧だとか言われるが、欠点がかなり目立つので残念な結果になっている。


ある日、隣のコロニーのモールで買い物をすることにした。

新しい施設なので、流行の最先端が揃っていると思ったのだ。

「あれー、ちゃん」

嫌な人に出会ってしまった...

は回れ右をする。

「あれ?違ったかなー。何も無いところでこけて、さらにそれを誤魔化そうと咳払いをしたら咽て同情の視線を向けられることが多々あるちゃーん?」

絶対に振り向くものか!

そう思っては少し足早にその場を去ろうとした。

何でもないところでこけた。

誤魔化すために咳払いをしたら咽た。

...泣きたい。

「ははは」と笑いながらラスティがやってきて彼女の背を擦る。

「大丈夫、ちゃん」

「う..うるさい...!」

ゴホゴホと咽ながらも気丈に返す。

ふとに向かってナンパな笑顔を向けていたラスティの表情が変わる。

「ど..どうしたの?」

「ごめん」と言ってを横抱きにしてラスティが駆け出す。

「え、何...?」

「口閉じてな。舌を噛むよ」

ラスティに言われたとおりは口を閉じた。

先ほどが居た場所が何故か爆発した。



物陰に隠れてラスティはを降ろして腰を落として先ほど自分達が居た付近の様子を覗く。武装したおそらく男が3人...

「何?」

「うーん、巻き込んじゃった」

てへっ、とラスティが笑う。

「は?!」

「ちょっと頼まれてね。おとり捜査的なおとり役だったんだよ、オレ」

「な、何で?!」

「まあ、色々と柵のある身ですから?」

「大丈夫なの?」

「ん?うん、ちゃんとちゃんは家に無事に帰らせてあげるから」

ラスティは振り返って笑顔でに言う。

「ちがうよ、ラスティはそんな危ないことして大丈夫なの?」

の言葉にラスティは目を丸くした。

全く悪気はないのだが、友人達に「お前、相当酷いコト言ってるんだからな」としょっちゅう説教を食らっている身としては心配されるなんて思ってもみなかったのだ。

「ははっ」と笑ったラスティには怪訝な表情を浮かべた。何故笑われたのだろうか。

は優しいなー」

自分が呼び捨てされたので、ラスティも彼女を呼び捨てにしてみる。

「なによ、からかってるの?」

「ううん、本心。やっぱりオレの見込んだとおり。多少鈍くてもそれはオレがフォローできるしさ。優しさはオレがどんなに素敵なナイスガイでもがそれを身に着けることは難しいよね。優しさって人としての本質だし」

は首を傾げる。

「うん、よし!」

そう言ってラスティは立ち上がった。

「ちょっと待ってて」

「え?!」

が呼び止めるのも聞かずにラスティは物陰から駆け出し、そのまま武装した男達の中に突っ込んでいった。

ラスティを追いかけようとして、自分の致命的な鈍さを思い出しては両手を組んで彼の無事を祈った。

昔の人は、こうやって祈ったと聞いたことがある。


銃声がいくつか聞こえて足音が近付いてきた。

「おわったよー」

「え?!」

軽い口調は間違いなくラスティでは驚いて顔を上げた。

「大丈夫?怖い思いをさせてごめんね」

「ラスティは、無事?」

「うん、好きな子を守るために男は強くなるのです」

おどけたようにラスティが言う。

「え?」

思わず聞き返したの前髪を上げてラスティが彼女の瞳を覗き込む。

「オレ、好きな子は苛めちゃうタイプだったみたい。苛めてる自覚はないんだけど、周りがそう言うんだから、苛めちゃってるんだろうね」

肩を竦めてラスティが言う。

は目を丸くして、すぐに瞳に涙が溜まる。

にはオレがいるんだ。だから最強だよ。ね、オレを好きになってごらんよ。あと、怖い思いをさせてごめん」

もう一度謝罪をした。

「怖かった...」

「うん、ごめん。でも、オレがいるからは最強なんだよ」

きょとんと見上げるの零れそうな涙を親指で拭う。

「好きな子と一緒にいる男は、スーパーマンなんだよ。はオレが守る」

「なに、それ」

思わず噴出したにラスティはニコリと微笑む。

って、苦手なことでも逃げないでしょう?それ、凄いことなんだよ。オレはのそう言うところすごいと思うし、そこが好き。

でも、まあ。とりあえず、交渉成立までの道のりの第一歩として、荷物持ちから始めるよ」

その申し出には「許可します」と澄ましてそう応えた。






ラスティなら軽い感じに、明るい感じになるんじゃないかと期待して書いてみたら。
そこまで明るいポップな感じにならなかった...
何で、ラスティ!!
バカップルになってくれると信じてたのに!!(←わたしの力量不足です...)


桜風
11.03.16


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