我慢はよくない





「しつれいしまーす」

生徒会室に足を踏み入れた。

目の前の山積みになっている書類を目にして苦笑した。

「これまた、溜め込んだわねぇ」

そう言いながら追加の書類をその上に重ねる。

「お〜い...」

情けない声で抗議をするのは生徒会長様の不知火一樹だ。

入学式で恒例の俺様演説をした彼はカリスマ性があるだとか、行動力があるだとか言われているが、仕事が大嫌いな生徒会長様なのだ。

仕事と言っても、机について書類とにらめっこが好きではないと言う意味で、学校を良くしたいと言う意欲は人一倍ある。

少なくとも、生徒会の仲間達はそれを感じているし、そこを魅力に感じて惹かれているようだ。

「で?鬼の副会長様は?『影の大番長』でも可」

「それ、颯斗に言ってみる勇気あるか、

「あるわけないじゃなーい」

カラカラと笑いながらは否定した。

颯斗こと、青空颯斗は生徒会副会長で書類から逃げ回る不知火を笑顔で圧倒して仕事をさせる非常に優秀な人物である。

しかし、敵に回したくない人物として5本の指に入る。

「颯斗は構内の見回り。さっきちょっと見てほしいって連絡があったから。ちょっと用事があるからそのまま帰るって言ってたけどな」

「じゃあ、夜久さん」

「アイツは部活」

不知火の言葉を聞いては拍手をした。

「何だよ」

怪訝な顔をして聞いてくる不知火の頭を撫でる。

「何だよ」と少し不機嫌にもう一度問う不知火の頭を撫でるのをやめて「一樹がちゃんと仕事してるから」と答えた。

「ご褒美は必要でしょう」

にこりと微笑む。

の言葉に少し不機嫌な表情を見せた不知火だったが、ふと何かを思い立ったような表情を浮かべ「ご褒美か。じゃあ...」と立ち上がろうとした。

「その書類、明日までに済んでなかったら青空くんの笑顔がとても素敵な真っ黒いのになるんじゃないの?」

指摘されて浮かした腰を降ろす。

「そうだった...」

頭を掻きながら書類とにらめっこを再開した。

はそのまま生徒会室に留まり、途中、不知火と自分にコーヒーを作ったり、不知火が仕上げた書類を片付けたりと手伝いつつも授業で出されていた課題にも取り組んでいた。


ふと、部屋が暗いなと思って顔を上げると外の雲が真っ黒くて重かった。

「雨が降るかもな」

いつの間にか机の上を綺麗に片付けて、息抜きのコーヒーを淹れた不知火がが座っているソファの隣に座る。

「手伝ってくれてありがとうな」

「片づけをしたくらいだよ。コーヒー、ありがとう」

不知火の淹れたコーヒーを受け取り、そのまま一口飲む。

「お砂糖は?」

「あれ?ダイエットがどうたらって言ってただろう。気を遣ったのになぁ」

そう言いながら不知火は砂糖を取りに食器棚に向かう。

戻ってきた不知火は苦笑した。

「悪かった」

からかったのは確かだが...

「一樹は必要ないって言ったのに。嘘だったんだ...」

拗ねているが眉間に皺を寄せながらコーヒーをチビチビ飲んでいる。

「冗談だよ、そのままで良いって。拗ねるなよー」

そう言いながらの持っているマグカップを取り上げてテーブルに置き、抱き寄せる。

ぷいとそっぽを向くに「おーい」と少し情けない声をかけると彼女がチラッと見てきた。

「そういえば、一樹って甘いもの好きじゃないものね」

甘いものが好きな人がそれを我慢する決意を軽く見ていると詰られた。

「あー、まあ...嫌いじゃないけど、積極的に食べることはないな」

そう答えた不知火はふとを見てニッと笑った。

「ま、菓子だとかケーキだとかよりももっと甘くてくらくらするもの、覚えたしなー」

そう言って抱き寄せていたの唇に触れようとしたが、掌で押し返される。

「何するんだよ」

「一樹もダイエットしてみたら?」

「はあ?」

「ダイエットって、基本的に好きなものを我慢することに繋がると思うのよねー」

ニコニコと笑って言うの言葉の意図がわかって不知火は「や、ちょっと、それは...」と慌てる。

つまり、キスさせてくれないって事?!

しかし、そんなあたふたしている不知火を見ていたが噴出した。

「嘘よ、冗談。わたしも好きだし」

ほっと胸を撫で下ろした不知火は「、意地が悪いぞ」と抗議をしたが、「お返しです」と返された。

「ったく、仕方ないなぁ」

苦笑した不知火はそのままに口付ける。

我慢はよくない。だから、気が済むまで唇を重ね続けた。






冬は未プレイです。
が、ホームページとかでスチルがあるじゃないですか。
山となっている書類の間で片手で頭を抱えながら机に向かっているぬいぬい。
アレを思い浮かべながら書きました。
書類は溜めに溜める子でしょう。
あんなに書類が必要な生徒会ってどうなんだろうって思いますけど...


桜風
11.03.30


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