| 外が薄曇から本格的な曇りとなり、ポツポツと雨が落ちてくる。 「おーい、傘持ってきてるか?」 生徒会室から窓の外を眺めて生徒会長の不知火が声をかけてきた。 「はい」と書記の夜久が頷き、「僕も持ってきてます」と副会長の颯斗も頷いた。 しかし、その割に心配そうな表情を浮かべている。 「どうかしたのか、颯斗」 「え?いいえ」 颯斗のその表情に気がついた不知火が声をかけたが咄嗟に彼は笑顔で応じた。 彼女はもう寮に帰っているだろうか... 颯斗の表情が晴れないのは、彼の胸にそんな不安が広がったからだった。 何処からか電子音が聞こえる。 「颯斗君の携帯じゃないの?」 鞄の傍にいた夜久が言うと颯斗は「そのようですね」と言って鞄から携帯を取り出す。 ディスプレイに表示されている名前を確認したと同時に外がピカッと光った。 「もしもし?」 電話に出たと同時にズドンと凄い音がした。 「今の近かったな。春雷ってやつか?」 窓の外を眺めて不知火が呟く。 学校に被害はないようだが、近くに落ちたと思う。 「さん?」 『颯斗くん...』 涙声で名前を呼ばれた。 「今、何処ですか?」 『おんが..きゃあ!』 また外が光った。 「すみません、先に帰ります」 颯斗はそう言って不知火の了解を得ることなく鞄を引っつかんで生徒会室を後にした。 「何だ?」 慌てて出て行った颯斗の様子に首を傾げて不知火が呟く。 「さっきの電話、さんからみたいでしたよ?」 夜久の言葉に「なるほどな」と納得した不知火は窓の外に視線を戻したが「そういや、」と振り返った。 「月子は平気なのか?」 「んー、ちょっと怖いですけど」 にこりと笑顔で言われた。 「まあ、通り雨の雷だろうし。もうちょっとしたら雷も雨も去っていくだろうな」 「そうですね」 夜久も窓の外に視線を向けて頷いた。 音楽室のドアを開けるとピアノの下に人影があった。 「さん?」 膝と手をついて颯斗が覗き込む。 耳を塞いで俯いていたが気配を感じたのか彼女は顔を上げた。 「颯斗くん...」 「出てきてください。僕にはそこはちょっと狭くて入れそうにありません」 細身ではあるが、身長があるのでピアノの下にもぐりこむのは少し窮屈だ。 はぺたぺたと這ってピアノの下から出てきた。 「大丈夫ですか?」 「怖かった...」 そう言って颯斗に思い切り抱きついた。 少し震えている彼女を安心させるようにギュッと抱きしめて「もう大丈夫ですよ」と声をかける。 「さっき、雨が降りそうな空を見て、さんはもう寮に帰ったかなと心配になったんです。けど、帰ってなくてよかった」 まだ続く稲光と雷鳴に彼女は悲鳴を上げるが、それでも颯斗が背中からギュッと抱きしめているので小さく声が漏れる程度だ。 怖いものは怖い。でも、颯斗がいることで落ち着いているのは間違いない。さっきとは全然違う。 「良かったの?」 颯斗を振り返ってが問う。 そのきょとんとした表情が可愛らしくて颯斗は彼女にキスをする。 「ええ、さんがまだ校舎に残ってて良かったです」 「何で?」 「だって、さんは寮に帰っていたら一人で怖い思いをしていたってことになるでしょう?さすがに職員寮に忍び込んであなたを抱きしめるなんて難しいです。だから、こうして僕が手を伸ばせば届く場所にいてくれてよかったって今は思っています」 そう言って颯斗はにこりと微笑んだ。 「うん、わたしも颯斗くんがいてよかった」 自分を抱きしめている颯斗の手に自分の指を絡めながらが俯く。 「ああ、雨も止みますね」 窓を見上げた颯斗が呟いた。 「え...?」 思わず漏れた自分の声には首を竦めた。 「さんは甘えん坊さんですね」 彼女の漏らした声の孕んだ感情を敏感に感じ取った颯斗はクスクスと笑った。 「良いじゃない。颯斗くんにこうしてもらってると安心するんだもん」 「ありがとうございます。けど、今日はこれで帰りましょう」 そう言って颯斗はを抱きしめる腕を緩めた。 「はーい」 そう言っては立ち上がる。 「颯斗くん、ありがとう」 「いいえ、あなたひとりが怖がることがなくてよかったです」 「けど、物凄くたまーになら、雷も悪くないな」 「さんを怖がらせるものなので、僕は好きじゃないで好けどね」 にこりと微笑んで言う颯斗に苦笑して「かえろっか」とが手を差し出す。 「はい」 彼女の手をそっと握って颯斗は頷いた。 まだかすかに遠雷が聞こえる。だけど、手を繋いでいれば怖くない。 水溜りの出来た帰り道、2人はゆっくりと並んで帰った。 |
雷を怖がる彼女を書きたかったんです。
彼女設定を最初につくって、ではお相手はだれぞ?と思ったら颯斗が立候補してくれました。
颯斗は比較的甘い展開になるから書いていて気が楽です。気負わなくて良いから。
あ、『甘い展開』てのは当社比であって、拙宅は(図らずも)基本糖分控えめなんです。
桜風
11.03.31
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