| 「ゆびきりげんまん...」 子供の弾んだ声が聞こえる。 うっすらと目をあけたはその声が自分の記憶の中のものだと気が付いて溜息を漏らす。 ゆっくりと体を起こしてベッドを降り、カーテンの隙間から外を見る。 まだ星が輝いている時間だ。 あの指きりで何を約束したんだったっけ...? 相手の顔は覚えている。 優しい、あどけない表情。 まあ、子供の頃の記憶なのだからあどけなくて当然か。 一度伸びをしてベッドに戻った。 まだ起きるには早い時間だった。 毎日淡々と学校に通い、帰宅する。 部活動をしていればまた別の感想があるかと思うが、今のところ、学校へは『行かなくてはならないらしいから行く』という意欲のない、どれほどの意味のある行動かと自問自答をしてしまう行為である。 まあ、親に大切に育てられたのでその親への恩返しと言う名目くらいは一応胸に刻んではいる。 「そういや、ばあちゃん元気かなー...」 幼い頃は良く祖母の家に遊びに行っていた。しかし、ここ数年、とんとそちらに行ってない。 遠いので親と一緒でなければ行けなかったのだ。 しかし、もう高校生だから一人で行ってみようかとも思い始めている。 少し雪深い土地だから今の時期に行くと雪に慣れていない自分は難しいかなと思うのと同時に、その分冒険になるのではないかと思いついた。 「スキーも出来るかも?!」 自分の思いつきに心が躍る。 こんな気持ちは久しぶりだ。 春休みを待ち、は祖母の家に行くことにした。 連絡をすると祖母は物凄く驚いた様子だった。雪に慣れていないには辛いかもしれないと言ったが「いいから!」とは押し切った。 祖母の家の近くにはたしか、バス停があった。 調べてみてもちゃんとバスで行ける。 しかし、1時間に1本。 「むむむ...」 思わず唸るだったが、それも冒険だと思い、楽しむことにした。 こんな風に何かにワクワクするのは子供の頃以来だ。 元々冷めた性格をしていた自分は幼い頃から周囲から孤立していた。 今でもそれなりに孤立をしているが、そこそこ器用に立ち回ることも出来ているので不便ではない。 電車に乗り、その後自動改札とは縁遠い駅で降りて1時間に1本という貴重なバスへの乗り換えも順調にクリアした。 祖母へのお土産は、親に聞いて好きなものを購入している。 忘れものなし。 窓の外を流れる風景は白い雪がまだ多く、東京では雪がこれだけ積もったら何も出来ないと言うのに、この土地の人たちは凄いなぁと感心する。 バス停に着くと祖母が待っていてくれた。 「ばあちゃん!」 「。ホントに来たんだねぇ」 「逆に、来なかったらばあちゃん待ちぼうけじゃない」 が返すと「そうだね」と祖母が笑う。 「大きな荷物だね」 「そう?普通だよ」 そう返して祖母と共に家に向かった。 昔ながらの日本家屋。コンクリートジャングルが故郷のはこの温かみのある祖母の家が好きだった。 家に入ると大きな靴がある。 「あれ、お客さん?」 「そうだね。さっき来たから留守番を頼んだんだよ」と祖母の目じりの皺が深く刻まれる。 「こんにちは」とが声を掛けると彼が振り返った。 「あ!」と思わず声を漏らす。 彼はふっと目元を緩めた。 「瑞希くん!?」 頭に浮かんだ名前を口にしたに「うん、正解」と彼が答える。 自分よりも2つくらい年上だったような気がする。 祖母の家で何度か遊んだことがある。 「瑞希くんは、たしかアメリカのー、何とかって大学に行ってるんだよ」 お茶の用意をしながら祖母が言う。 「何とか?」 首を傾げてが瑞希を見る。 「うん、何とか」とからかうように瑞希が答えた。 具体的な名称は答える気がないようだ。も特に気にしないようで「ふーん」と相槌を打った。 「あ、ねえ瑞希くん」 ふと思い出す。先日夢で見た指きりの相手が目の前に居るのだ。 「小さい頃、あたしと瑞希くんってゆびきりした?」 の言葉に瑞希は驚いたような表情を浮かべた。そして、眉を下げる。 「ちゃんは忘れちゃったんだ...」 しょんぼりした口調で言われては慌てた。 「ご、ごめん!あの、できればどういう約束をしたかを教えてもらいたいなーって。この前夢で見たんだけど、内容が曖昧で...」 ぱちんと両手を合わせてが言う。 じっと見ていた瑞希は「内緒」と返した。 「え?!」 「まあ、よくある約束だから」 ヒントなのか、そういった。 よくある、幼い頃の約束といえばひとつしか思い浮かばない。 「えーと、瑞希くんのお嫁さんにしてください、とか?」 ベタ過ぎるが、子供というのはそう言うものだろう。 恐る恐る聞いたに瑞希はふっと笑う。 「さあ?」 「ちょ..!瑞希くん!!」 「いつか、きちんと教えてあげる」 ふふふ、と笑って瑞希が言う。 「できれば、今が良いんだけど...」 そう言うに瑞希は右手の小指を差し出し、それを目にしたはきょとんと彼を見上げた。 「約束」 「え?」 「今度はちゃんとちゃんに教えてあげるから、その約束」 暫く呆気に取られていたが、はおずおずと指を絡ませる。 それを見てまた瑞希は満足そうに笑い、「ゆびきりげんまん」と歌い始めた。 |
全ジャンル書いた気でいたら、あら、ひとつ足りない...あ、Vitaminだ。
ということで、慌てて書きました。
約束。
瑞希のこれまでの生活(?)から考えたらそんなのどかな子供時代を送ったとは思えないのですが、
送ってたら良いなと思いまして...
ほのぼのした感じになったかなー?
桜風
11.03.20
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