| は重い足取りで自宅に向かう。 腕時計を見て溜息を吐く。日付はとっくに変わっている。 此処最近物凄く忙しかった。日付が変わってから職場を出るのは当たり前。終電を逃さないようにダッシュするのが日課になっているが、それで体力づくりが出来ているとは到底思えない。 短い睡眠時間のお陰でお肌もボロボロ。化粧の乗りの悪さったらない。毎朝、溜息が出る。 「若くないんだから」と頭の中でからかうような声が聞こえた。ニヒーと笑いながらそう言う同じ年の男。 「腹立つっ!」 心からムカついた。 自宅の最寄のコンビニの前で足を止める。 此処最近、まともに自炊をしていない。 コンビニに助けを求めるのは自分にとっての最終手段だと位置づけているので、無理にでも腹に入れるものは何かしら作っていたのだが... 勿論、デザートと菓子に関しての話は別だ。 「敗北を認めよう」 そう呟いてはコンビニに入った。 「いらっしゃいませー」と少し高い店員の声が頭に響く。 疲れるとそういうのも響くらしい。 お弁当コーナーに足を踏み入れるのに未だに抵抗感を抱きつつも向かった。 しかし、途中のアイスコーナーの前で先に居た客に腕を掴まれた。思わず声を上げそうになる。 「よー」 気の抜ける声音。 「はあ?!」 別の意味で声を上げてしまった。 「あんた、こんなところで何してんの?!」 確か、今は代表合宿がうんたらかんたらではなかっただろうか。 の腕を掴んだのは、昔馴染みの達海猛で、日本代表のユニフォームを着て世界を相手にプレイしているフットボーラーだ。 「さっき帰ってきたんだよ」 そう言ってポケットから何かを取り出した。 「何、このふざけたの」 彼がポケットから無造作に取り出したのは根付け、なのだろうか。良く分からない人形がついている。 「ホテルのロビーで売ってたから。ほら、俺が合宿に行くって話したら、は土産買って来いって言っただろう?」 「言ったけど。これ、呪いの人形じゃなくて?」 センスを疑う。 「俺だってつけてんだ」と言ってポケットから何かを取り出した。家の鍵につけたらしい。 「ふーん...まあ、律儀にありがとう」 そう言ってもそれをポケットに仕舞う。 「ん?何で達海は此処にいるの?」 「さっき、お前んち行ったら居なかったし。アイス食いながら待とうって思ったから。そしたら、丁度良いところにが店に入ってくるし。、俺にアイスを奢りたくなったんだろう?」 「疲れてるんなら帰ったら?」と素っ気なく返しては弁当コーナーに向かった。 「こんなカロリーが高そうなの食うの?今から?太るぞー」 が手に取った弁当を覗き込んで達海が言う。 「食べなきゃ体力持たない」 そう言って、達海が非難した弁当を元の位置に戻し、一応ローカロリーと思われるものを手に取った。ついでに、ゼリーも。 「これもね」と達海がアイスを籠に入れてくる。 いつもなら怒るが、今日はそんな元気もない。 レジを済ませて外に出る。 店員は達海に気付いていたらしいが、彼はレジまで来なかったので残念そうだ。 その代わり、仲良さげに会話をしていたを興味津々に盗み見していた。 「ほら」と袋から達海が加えたアイスを取り出して渡す。 「あんがと」とそれを受け取った達海は早速食べることにしたらしい。 「てか、こんな遅い時間に帰ってんの?」 「うん、今ちょっと忙しい時期だからね」 の住むアパートへの道を並んで歩く。 「だから、そんなボロボロなんだ。ふーん...あんま若くないんだから無理すんなよ。疲れたら、どんなに誤魔化しても歳が顔に出るもんらしいぞ」 何となく腹立つけど、それでも少しは心配してくれているらしい。 「珍しいじゃん」とが言うと「何が?」と達海が返す。 意識をしているわけではないらしい。そういうところ、達海の凄いところだ。 「ううん、何でもない」 「なあ、。楽しい?」 「ん?何が?」 「仕事」 「わかんない。何か、目の前のことをやっつけるのに一生懸命で」 追い立てられている感じだ。楽しいかどうかなんて考える余裕がない。 「楽しまなきゃ損だぜ」 ニヒーと笑いながら達海が言う。 「は?」 「90分間の試合。後半の残り10分にもなればホントきついんだよな。けど、そこできついって思ったら体がそれを自覚する。だから、そんなときは楽しむのが一番。体も時間の割りに軽くなる」 「そういうもんなんだ」 「そ。けど、それってフットボールだけの話じゃないと思う。楽しんだ方が楽になるし、きっと良い仕事が出来る」 が達海を見上げるとニッと笑っている。 そういえば、試合の中継を見ると、後半の皆きついだろうって解説が言っている時間に達海は良く笑っている気がする。 「信憑性、あるわ...」とが呟くと満足したように達海が笑う。 のマンションの前で「んじゃーなー」と達海が言う。 「上がってくのかと思った」が言うと「俺の用事は終わったし」と言う。 確かに、達海はお土産を渡しにの家を訪ねたと言っていた。 お土産はコンビニでもらったし、アイスも奢らされた。 「そっか。んじゃ、またね」 が頷き手を上げると「おやすみー」と返して達海は帰っていった。 |
勝手に応援企画第二弾。皆様からリクエストをいただいて、創作させていただいています。
3本目のリクエスト内容は次の通り。
GIANT KILLINGの達海からヒロイン、もしくはその逆で。
「楽しもうぜ」的なセリフ(言い回し等は自由)
「焦らないこと」など達海相手役のヒロインで。
企画へのご協力、ありがとうございました!
桜風
11.06.18
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