「そんな事も解らんのかこの馬鹿が」





プラントに住むコーディネーターは、対の遺伝子を持つ者たちは婚姻を結ぶことを勧められている。

コーディネーターは遺伝子操作をして生まれてくるものを指し、その反動で子が出来にくい。

そのため、出生率を上げるために苦肉の策として取られているのがこの婚姻統制で、イザーク・ジュールとはこの婚姻統制の下に婚約をした。

しかし、婚約した当時はプラントと地球は戦争真っ只中の状況で、イザークももパイロットとしてザフトに所属していた。

戦争は、停戦という形でひとまず収束し、イザークは最年少の最高評議会議員となり、プラントの復興のために日夜忙しく働いている。

停戦後、すぐに婚姻した。の亡き母と自分の母親が約束をしていたこともあり、式は挙げた。

戦後のまだ色々と混乱している中で不謹慎だと指摘されるかもしれないと思ったが、そんなときだからこそ未来が明るいと思えるようなセレモニーが必要だと皆が喜びを口にしてくれた。


そして、結婚して1ヶ月。

カレンダーを見たは「凄いかも」と呟いた。

1ヶ月。1ヶ月夫の顔を見ていない。

声は、たまに掛かってくる電話で聞くことが出来た。勿論、その通信で顔を見ることも出来る。

だが、触れることは出来ない。

「さすがに物理的な距離を無視するスキルはないわ...」

カレンダーを眺めたままは呟く。

元々自分は素直ではない方なので、イザークに寂しいだとかそんなこと口が裂けても言えない。

まず、「ガラじゃない」と思ってしまうのだ。

戦争中のほうが一緒にいる時間が多かった。どういうことだ、これは??

しかし...

「ちょっとは、寂しいでしょう。普通に」

と呟いて苦笑する。

そんなことを言っても彼は猛烈に忙しいのだから仕方ない。

テレビに映るイザークの顔色は大抵余りよくない。

たぶん、眠れていないのだろう。

「大丈夫かな...」

戦争中は、大抵自分が心配される側だった。やっと今になって心配する側の気持ちがわかった。

「あまり、気持ちの良いものじゃないのね」

溜息交じりにそう呟いた。

「何がだ?」

不意に背後から声がして振り返る。

何で人の気配に気付かなかったんだろう?自分に自信がなくなる。

「イザーク?!」

「ああ、ただいま」とイザークはの額にキスをした。

「どうしたの?って、おかえり」

律儀に挨拶を返したはイザークを見上げたままだ。

「いいだろう、此処は俺の家だ」

そう言って着替えるべくイザークは部屋に向かう。

はその後をついていった。



仕事中、「、寂しがってないか?」とディアッカが言った。

突然の問いかけに一瞬言葉に詰まったイザークだったが、「あいつはそんなことを口にしない」返す。

しかし、それを聞いたディアッカは「んじゃ、イザークが居なくても寂しくないってことか」と言うのだ。

それはそれで面白くない。

だから、「素直じゃないだけだ」と返すと「どっちが」と返されてちょっとムカついた。

「何が言いたいんだ」

「今まではザフトに居て、殆どお前と一緒にいたんだろう?で、今は結婚したってのに一人だ」

「家の者が居る」

「それで充分って言われたらイザーク、泣くだろう?」

...確かに。

思わず納得して頭を振る。

「貴様は何が言いたいんだ」

と少し不機嫌にディアッカに聞くと

「イザークもそろそろ充電したいんじゃないかと思って。何なら、明日の朝迎えに行ってやるよ?」

と言われた。

あまりの気遣いにイザークは一瞬眉をひそめる。何か良からぬことでも企んでいるのではないか?

「んで、どうするの?」

ディアッカに促されて「今日は帰る」と素直に返す。実際、本当にが恋しい。

ディアッカは苦笑して「りょーかい」と適当な敬礼を向けた。



「連絡もなく帰ってくるって珍しい..のかな?」

寧ろ帰ってくることがなかったので、何が珍しくて何が普通なのかがまだわからない。

「寝ているかとも思ったがな」

「もうちょっとで寝ようとは思ってた」

「そうか」と返したイザークは内心、ほっとした。

もうちょっと仕事を片付けて、と思ったが「帰っても全然時間ないぞ」とディアッカに指摘されてその通りだと慌てて返ってきたのだ。

「仕事、落ち着いたの?」

「いや、明日も朝が早い」

「じゃあ、どうして帰ってきたの」

いつも帰ってこない理由は『帰ってもすぐにアプリリウスに戻らなくてはならないから』だったはずだ。

心から不思議そうに眉根を寄せてが問うとイザークは

「そんな事も解らんのかこの馬鹿が」

と溜息混じりに言って軽く彼女を睨んだ。

そんな言い方をされればだって面白くない。

ツンと拗ねると不意に腕を掴まれ、はあっけなくイザークの胸に納まった。

見上げるとイザークがおでこにキスをする。

「こうしたかったからだ」

そう言ったイザークはを抱きしめる。普段の言動からは中々想像できないくらい優しくて、彼の愛しさが伝わってくる。

だから、「なんだ」と呟くの声音は柔らかく、

「だったら最初からそう言ってくれたら良いのに。イザークってば素直じゃなーい」

と照れ隠しにからかい始めた。

「やかましい」

と返すイザークは腕の力を緩めて今度は唇にキスをする。

くすぐったそうに目を細めたが「あまり無理しないでよ」と声をかけるとイザークは「今、色々と充電中だから大丈夫だ」と返す。

そんな返しが来ると思っていなかったらは目を丸くして、やがて笑い出だす。

「じゃあ、存分に充電してよ」

の言葉に「言われなくとも」と返したイザークは再びにキスをした。






勝手に応援企画第二弾。皆様からリクエストをいただいて、創作させていただいています。
4本目のリクエスト内容は次の通り。
ガンダムSEEDのイザークからヒロインへ。
「そんな事も解らんのかこの馬鹿が」
「Like a fairy tale」のヒロインで。

企画へのご協力、ありがとうございました!


桜風
11.06.21


ブラウザバックでお戻りください