「ずっと見ていたから」





洛山高校バスケットボール部は、高校バスケットボール界屈指の強豪であり、選手たちは『敗北』が許されない。

そのため、毎日の練習の質は高く、量が多い。

中学まではそれこそ全国区の学校のエースと呼ばれていた選手が多数入部し、脱落していく。

その中で、今年は全国の強豪が欲した選手が入学した。

赤司征十郎。

全中三連覇を誇る帝光中学バスケットボール部でキャプテンを勤めていた選手だ。

そして、彼は高校でも入学して間もなくキャプテンに任命された。

1年生がキャプテン。

洛山高校バスケットボール部の長い歴史の中で前代未聞のこの状況に対して反発したものは少なくなかったが、彼の実力を目の当たりにした誰もが口をつぐんだ。


ピー、と笛が鳴る。

その笛の音と共にマネージャーはコートに足を向けた。休憩時間なのだ。

今回の休憩は10分。選手はその短い時間の間に体を休めて水分を補給する。

ちゃん」

軽く手を上げて声を掛けられ、彼女はそちらに足を向けた。

「葉山君、はいどうぞ」

そう言って彼女はタオルとドリンクを渡す。

「もーさー。赤司酷いよねー」

一口水分を補給した彼は肩を落としながらそういった。

それを聞いて彼女は苦笑する。

「征..赤司君、自分に厳しくて、それと同じくらい人に厳しいからねぇ」

「まあ、自分に甘くて人に厳しいじゃないんだから良いけど...」

口を尖らせて彼が言う。

「赤司君の厳しさは、期待の表れってヤツだし。期待に応えましょうよ、センパイ」

「応えてますよー」

すとんと床に座って「あー...」と声を漏らす葉山に苦笑した。

「あんた、あんまりちゃんを困らせるんじゃないわよ」

ペシッと葉山の頭を軽く叩いて実渕が言う。

「ははっ、実渕君もどうぞ」

笑って彼女は彼にタオルを差し出すが、

「ああ、さっきあっちで貰ってるから大丈夫よ。ありがと」

と笑顔で返された。

「あら、征ちゃん」

実渕が俄かに驚きの表情を浮かべて名を呼ぶ。

「ん?」

振り返るといつの間にか赤司が立っていた。

「あれ、タオルとドリンクは?」

「さっきもらった。大丈夫だ」

そういいながら赤司が彼女の手を引いて歩き出す。

「あれ?休憩時間、残りそんなにないよ??」

「大丈夫ですよ、センパイ」

そういいながら体育館の外へと彼女を連れて行く。

「何、あれ」

「征ちゃんとちゃんっていとこなのよねー」

「へー...え?!」

実渕の言葉に葉山が声を上げた。

「マジ?」

ちゃんが意味のない嘘をついてたら、嘘だけど」

「ないねー、それ。へー、知らなかった...」

「私が『征ちゃん』って呼んでるのも、ちゃんがそう言ってたから移ったんだし」

実渕と彼女は昨年同じクラスだった。ちなみに今年は葉山と同じクラスである。

「へー、いとこ。ふーん」

葉山は面白そうに赤司たちが出て行ったドアを眺めた。


「ど、どうしたの?征ちゃん」

体育館から離れ、彼女は不安そうに声をかけた。

さん、今日はもう帰るんだ」

「へ?なんで??はっ!ドリンク零してたのも、お見通し?!ご、ごめんね。あの、ちょっとした不注意で...もうしないから!」

慌てて彼女が言う。

「...それは知らなかったけど。なら、益々今日はもう切り上げて帰るんだ」

強い口調で言われた。

「どうして?」

さん、今日は体調が悪いんだろう?」

指摘されて言葉を失う。

「何で...」

赤司が彼女の頬に手を添える。

「少し顔色が良くない」

「え...」

「溜息も多いようだし。疲れが溜まってるんじゃないか?今はムリをする必要はない」

そういわれて彼女は赤司を静かに見上げていた。

「僕はさんのことをずっと見ていたからね」

まっすぐ瞳を見つめて彼が言う。

「え、と」

「もう一度言おう。さん、今日は切り上げて帰るんだ。僕はあなたが心配だ」

暫く沈黙した彼女はふぅ、と息を吐く。

「まったく。征ちゃんは凄いね...わかりました。今日は休憩の片づけが済んだら帰ります」

「よろしい」

赤司は彼女の言葉を聞いて、満足げに頷いた。




勝手に応援企画第二弾。皆様からリクエストをいただいて、創作させていただいています。
8本目のリクエスト内容は次の通り。
黒バスの赤司か黒子からヒロインへ。
いとこヒロインで名前に「さん」付けで、「ずっと見てたから」

企画へのご協力、ありがとうございました!

桜風
12.11.25


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