「カッコイイよ」





あと数日で新年を迎える。

そんな季節にある全国大会は東京で行われていた。

赤司の地元であるが、実家にはまだ帰っていない。

この大会が終わったら顔を見せようかとは思っているが、今は大会の最中で、キャプテンである彼もまた部員達と同じようにホテルに宿泊し、試合に備えている。

その日の試合が終わり、体育館を後にした。

これからホテルに帰る。

この時期は陽が落ちるのが早い。

周囲は既に暗く、外灯の心許ない灯りが周囲を照らしているだけだ。


「あら」

共に歩いていたチームメイトが声を漏らす。

彼の視線を辿った赤司は、溜息をついて足早にそちらに向かった。

「何をしているんだ」

少しだけ鋭い声音が耳に届いた彼女は顔を上げて驚き、立ち上がった。

ふらりと浮遊感がある。

赤司はその様子を見て地を蹴った。

しゃがんだ彼女の元で膝を突く。

「何をしている、

眉間に皺を寄せて彼女の顔を覗きこむ。

「うん、ごめん...」

「征ちゃん?」

声を掛けられて顔を上げる。心配そうにこちらを見下ろしているチームメイトにバッグを預ける。

「すまない、僕はこの子を送ってからホテルに戻る」

「ええ、わかったわ。というか、手を貸しましょうか?」

「いい、大丈夫だ」

赤司に断られた彼は頷き、預けられたバッグを持ってチームメイトの元へと戻っていった。

「征くん...」

「まったく...」

赤司が盛大に溜息をつく。ついでに、眉間の皺は先程よりも更に深くなっていた。

「ごめん...」

謝る彼女は元から小柄であるが、更に小さくなる。

「ほら」

そう言って赤司は背を向けた。

「うん、ごめん」

そういいながら彼女は赤司の背に負ぶさった。

彼女は寒いのが苦手だ。立ちくらみや眩暈を起こしやすい。

これは昔からで、赤司がこうやって彼女を負ぶって帰るのも初めてのことではない。

体質のようなものだと昔聞いた。病気とかそういうものではないらしい。


「征くん、今日も勝ったね」

ポツリと背中で声がした。

「ちょっと待て。まさか、毎試合来てたのか?!」

若干責めるように赤司が返すと

「ううん、この大会は今日が初めて」

と彼女が言う。

ホッと息を吐く。

「寒い日に外に出るな」

「冬はいつでも寒いよ」

赤司の言葉に彼女が拗ねた様に返し、彼は溜息を吐いた。

「...征くんは、カッコイイね」

ポツリと彼女が言う。

「は?」

「うん、カッコイイよ」

「どうしたんだ、突然。熱でもあるのか?」

赤司が返す。

「もう!」

と彼女が拗ねた。

、ちゃんと掴まれ。重い」

「歩く」

ずり落ちていた彼女はそのまま足を着く。

赤司は大人しく彼女を背中から降ろした。先程まで彼女の体温が温めていた背中が寒い。

仕方ないので、彼女の手を握った。彼女は慣れたもので、そんな赤司の行動を特に気にしない。

「征くんは凄いね」

「どうした、本当に」

赤司は先程から彼女の口から出てくる褒め言葉を訝しむ。

「素直じゃないなー」

「うるさい」

「でも、ホントに凄いと思ってるんだよ。だって、征くんは1年生でキャプテンなんでしょ?」

赤司は彼女に視線を向けた。「当然だ」とそれは言っている。

「でね、今日の試合見てね、みんな征くんを信頼してる感じがした。征くんの学校のみんなって、みんな凄いんでしょ?」

「僕ほどじゃない」

赤司の言葉に彼女はクスリと笑う。

「うん。でも、バスケだけじゃないでしょ」

「は?」

「皆が征くんを信頼してるのは、バスケだけじゃないんじゃないかなって」

「穿ちすぎだ」

「えー、そうかな?」

首を傾げて彼女は言う。

「そうだよ」

そう言って赤司は溜息を吐いた。

そして、ふと隣を歩く彼女に視線を向ける。

「僕の言葉が本当かどうか、来年が自分の目で確かめたら良い」

「え?!」

目を丸くして自分を見上げる彼女に赤司は微笑んだ。

「僕が知らないとでも思ったのか?ウチを受けるんだろう?」

「あー!お母さんね!!」

昔から赤司に面倒を見てもらっているため、の母親はすっかり彼を頼りにしている。

よって、彼女が望んでいる進路が赤司の通っている学校だと知ってすぐに連絡をしたのだろう。

「もう!来年の3月に征くん驚かせようと思ったのに!!」

ぷんすか拗ねている彼女を見て赤司はクスリと笑う。

「来年の3月にがウチの学校に来れないってなったら、僕は驚くと思うけどね」

「それはやだ」

「まあ、がウチの学校に来たら面倒くらいは見てあげられると思うから、安心して来ると良いよ」

「うん。でも、私が面倒見てあげる」

「は?」

彼女の言葉に赤司は思わず間抜けな声を漏らした。

「私、バスケ部のマネージャーになる!」

赤司は彼女を見た。

そして、諦めの溜息を吐いた。

この眸は知っている。絶対にその言葉を曲げない。

「まあ、まずは試験に合格するところからだけどね」

赤司にそういわれて彼女は自信満々に笑った。

つられて赤司も笑う。ただし、こちらは苦笑いにはなった。




勝手に応援企画第二弾。皆様からリクエストをいただいて、創作させていただいています。
9本目のリクエスト内容は次の通り。
黒バスのヒロインから赤司へ。
幼馴染設定またはグラデーションヒロインで「カッコイイよ」


企画へのご協力、ありがとうございました!


桜風
12.12.30


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