「大丈夫。大丈夫だ」






 中学の卒業を前に、隣を歩くに視線を向ける。

彼女はずっと僕の隣を歩いていた。部活で遅くなる時も、彼女は僕を待って、そして、同じ道のりを歩んで帰宅する。

けれども、あと数か月したら、僕たちは初めて別々の道を歩く。

僕はバスケの推薦で話が来ている京都の洛山高校への進学が決まっており、そして、は都内の学校に進学する。

同じ学校でもよかったのだが、彼女が僕と同じ学校に進学する理由がないのだ。

経済的には、僕たち2人が揃って京都の学校に進学することには何一つ問題はない。

でも、彼女はそれを選ばなかった。

僕の隣にがいないということは初めてで、僕も戸惑いがあるけど、それ以上に彼女はいつにもまして心細そうにしている。

僕の前では気丈に振る舞ってはいるものの、それが『フリ』であることくらいお見通しだ。

は、なんで僕と同じ学校に進学しようと思わなかったんだい?」

素朴な疑問を口にした。

すると彼女は

「だって、京都は遠いし、寒そうだもん」

と少しおどけていう。

でも、その裏にはまた別の感情があることは察することができる。

確かに、僕たちはこの先ずっと一緒にいることはできない。不可能だ。

今回をいい機会と取ったのかもしれない。

人見知りが激しい彼女は、中学に上がった時も当分は僕の後ろに隠れていた。

学校に慣れたのはそれこそ半年以上経ってからだった。

夏休みが明けて..そう、体育祭が終わってからくらいではなかっただろうか。

それでも、進級すれば同じように委縮する。さすがに入学したての時と比べればその状態も軽いが、やはり人見知りをしてしまうようだった。

心配で、でも、だからこそ僕は彼女が愛しかった。

僕がいなければ彼女は歩けない。

その事実は、僕にとってどれほど甘美なものだっただろうか。


つまり、僕もに依存していたんだな...


卒業式を迎え、僕たちが歩んだ同じ道が終わる。

京都に発つ際、は駅のホームまで僕を見送りに来た。

家族や友人の誰も見送りに来ない中、彼女だけがそこにいる。

、困ったことがあったら僕に電話をするんだよ」

「もう、心配性だなぁ征十郎は」

僕の半身が笑う。

困ったように、くしゃりと顔を歪めて。

「大丈夫。大丈夫だから」

腕を伸ばして彼女を抱きしめていう。

いつの間にこんなに小さくなったのだろうか。

違う。

僕が、を小さいと思えるほどには成長していただけなのだ。

「ずるいよ、征十郎」

同じことを思ったのかもしれない。

僕の腕の中でが涙声でそういう。

「うん、そうかな」

「そうだよ」

そう言ってが僕の胸を押すから、腕を緩めた。

「じゃあね、征十郎。泣き言、チームメイトとかクラスメイトに言えなかったら、わたしに言ってよ?溜めちゃダメ。ストレスで禿るから」

そう言っては笑う。

「遺伝的には大丈夫だと思うけど?」

返すと

「十円禿に遺伝は関係ないわ」

と少し澄まして彼女が言う。

「肝に銘じておくよ」

「うん、じゃあ」

発車のベルが鳴る。

「うん、じゃあね」

彼女から離れた途端に少しだけ、心細いという僕にあるまじき感情が浮かんで、そして消えた。

僕の顔を見上げているの笑顔が思いのほか力強くて、僕は負けられない。

「いってきます」

「お土産よろしく!」

そう言った彼女は彼女は笑って手を振った。




勝手に応援企画第二弾。皆様からリクエストをいただいて、創作させていただいています。
10本目のリクエスト内容は次の通り。
黒バスの赤司からヒロインへ。
双子または幼馴染設定で「(僕がいるから)大丈夫。大丈夫だ」


企画へのご協力、ありがとうございました!


桜風
13.4.14


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