月下に咲く花 2






が本国に帰ったのは彼女の腕を見込まれたからだ。

元々衛生兵でガモフに乗っていたのだが、あまりにもそれは勿体ないというコトから、本国に戻って医師の資格を取るようにという話になった。

いずれはそのつもりだったからは何の抵抗も感じずに船を降りた。いや、少しだけ抵抗感はあった。

イザークはアレで短気で感情的だから心配だった。

それでも、助けられる同胞の数、そして、できることの範囲を考えて船を降りることを決めた。

その理由もイザークに話したが、彼の目を見て心此処にあらず状態だと気付き、代わりに友人たちにイザークを託して船を降りた。

だから、通信があって怒鳴られてたときはビックリしたけど、嬉しかった。

みんなも思うところがあったのかが船を降りたことは、イザークがの不在に気付いた3日後に話したらしい。つまり、イザークはその3日間ずっと自分を探して回ってくれていたというのだから。狭い船の中で何度も同じところをずっと。

それを聞いたときアホかとも思ったが、けど、それだけ一生懸命だったというのが伝わったし、自惚れかもしれないけど、イザークは自分以外にはそんなことをしない。


本国に戻ってからは戦況を耳にする度には心臓を何かに鷲掴みにされて握りつぶされてしまうのではないかと思っていた。

別に信仰している神はいないけど、毎日何かに祈った。彼の、そして友人たちの無事を。

ずっと状況がよく分からないまま、が戦場に戻る事はなく戦争はある種の終わりを迎えた。

まだ終わりではなかったが、それでも、プラントと地球で互いに向けていた銃を下ろした。

そして、たちは多くの友を失くし、愛しい人の生還の知らせを受けた。

ずっと、ガモフを降りてから不安だった。

だからイザークの顔を見た瞬間、子供のように声を上げて泣いた。

その場に居たザフトの兵たちは動揺した。勿論、イザークも。

それでも、イザークはすぐに自分がしなければならないことに気付いての許へと行き

「ただいま、

そう一言囁いた。

はわんわん泣きながらイザークに抱きついた。

体力をかなり消耗していたイザークだが、それを抱きとめ、優しく背中を擦る。

「皆で帰ることは出来なかったよ。すまない、沢山心配をかけたな」

その言葉を聞いては糸が切れたように脱力した。

イザークが慌てて抱き上げる。

ずっとイザークが心配で緊張していたのか、とにかく、安心して力が抜けたのだ。

イザークはを抱えてその場を後にした。




はあの時のことを思い出す。

あんなに感情を露に、というか、声を上げて泣いたのなんてどれくらいぶりだったのだろう?

「どうした?」

不意にイザークに聞かれては現実に戻る。

「ううん、何でもない」

手にしていたカップからはもう湯気が上がっていない。

「冷めちゃったね」

「俺は構わないがな」

そう言ってイザークはジャスミンティを口にした。

「そういえば、その服になって結構時間が経つけど、仕事の方はどう?右腕さんとか」

に言われてイザークは首を傾げる。

...右腕?

「ディアッカ」

に言われて頷く。

「ああ、そうだな。まあ、付き合いが長いってのもあるから、俺が考えていることを言葉に出さなくても読み取ってくれているな。正直、ありがたい」

素直にディアッカの存在を肯定するイザークには少なからず驚く。やっぱり丸くなったんだ...

「そう。じゃ、少しくらいならその付き合いの長いディアッカに任せても大丈夫でしょう?イザークは少し休んだほうが良いよ」

そう言われてイザークは眉間に皺を寄せて無言で理由を尋ねてくる。

はイザークの目の下をつい、となぞる。

「うっすらだけど。クマ、出来てるよ。イザークってば色が白いからね。目立つよ、コレ。ディアッカみたいだったらこの程度ならバレないだろうけど」

少し困ったように心配そうにが微笑む。

「そこのベッド使っちゃっていいから。ちゃんと、10分したら起こしてあげるし」

イザークの空になったカップを下げながらは提案する。


イザークは少し考えた。

医務室に来て既に結構時間が経過している。

これであと10分休むとそれこそ他の兵たちに申し訳ない。

が、確かに体がきついのは何となく自分で気付いているし、このまま騙し騙しいけるとは思えない。

「ほら、イザーク」

考えているイザークの腕を引いてはイザークをベッドに座らせた。

「寝る!」

指を指してそう言われる。

仕方が無くイザークはブーツを脱いで横になった。

その姿を見ては満足そうに微笑みカーテンを締める。

薄暗い空間となったベッドで寝転んでいるイザークも自然と瞼が重く感じ始めていた。










桜風
07.8.25


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