| 先の戦争が終わり、イザークたちは軍事裁判に掛けられた。 当然、かもしれない。 知らなかったとは言え、民間人が乗っていたシャトルを打ち落とした。それ以外にも、沢山の命を奪った。 だから、極刑は免れないだろうと思っていた。 だが、それを止めた人が居た。 大人が始めた戦争で、子供がそれに踊らされて、国のためと想って戦った少年たちを罰するのはおかしいと主張した人が居た。 ギルバート・デュランダル。 彼のお陰で極刑は免れた。そして、自分に出来ることがあると気付き、再びザフトに戻った。 自分が今まで奪った命、犯した罪。全てを背負うと決めた。 隊長に任命され、隊の編成を考える際、すぐに頭に浮かんだ人物はディアッカ。 彼と一緒に隊の編成を考えていた。 そして、悩みに悩んでいる最中に部屋に怒鳴り込んできたのが、・。ドクターだ。 「ディアッカが良くて、何で私がダメなのか。私に分かるように15文字・10秒以内に答えて!」 悔しそうに顔を歪めてそう言われた。ディアッカが心配そうにイザークを見る。 「危ないし、心配だからだ」 即答した。 は部屋の入り口すぐ側にあった花瓶を掴んでイザークに向かって投げつけた。 慌ててそれをキャッチしたが、花瓶から花と水が零れて部屋がびちゃびちゃだ。 色々と気を利かせたディアッカが 「俺、ちょっとモップ借りてくるわ」 と言いながら部屋を出る。その間際、の肩にポン、と手を置いた。 「...」 咎めるように溜息と共にイザークは彼女の名前を口にする。 硬く拳を握ったまま彼女は俯いている。 「」 もう一度名前を呼ぶ。 「....だ」 ポツリと彼女が何かを呟いた。 「何だ?」 そう聞きながらイザークはに近寄る。 「もう、ヤだ」 やはり小さな声では呟く。 「...何が?」 優しく諭すようにイザークが問う。 は固く口を結んだまま言葉を口にしない。 「もう一度聞くぞ。何がイヤなんだ?」 「皆が、傷付いてるって聞くだけなんて、もう、イヤだよ。私、もうドクターだよ。助けられる命、沢山あるよ。何で、ダメなの...」 ポタリと涙が零れた。泣かないように我慢をしていたのに、とうとう涙が堰を切ったように溢れだしてくる。 イザークは何も言わずにそのままを抱き締めた。 それでも、自分の艦に乗せるとは言わない。 悔しくて、はイザークの服を強く握る。 「あのさ、」 不意に声がしてイザークは驚いて顔を上げる。 開いたままのドアの向こうにはモップに体重を掛けて立っているディアッカの姿があった。 その目には『気配くらい気付けよな...寧ろ、ドア閉めろ』と少しばかり非難の表情が混ざっている。 「何だ」 を抱き締めたままイザークは応える。 「もザフトじゃん?軍医ってのはやっぱ艦には必要不可欠でしょ?だったら、どの道どこか良くわかんない艦を持っている隊長が連れて行くんじゃないの? そしたら、どんな危ない目に遭うかとか、俺たちには任務で何となく想像つく範囲くらいしか分からないだろう?んで、それを聞く度にイザークはハラハラするワケだよ」 確かに、ハラハラしそうだ。 「んで、心配で仕方ない日々を送るんだよ。だったらさ、そうなるくらいだったらさ。もういっそのことジュール隊に入れたら?そしたら、の状態なんて一目瞭然だし、それこそ、イザークが守れるってもんでしょ?」 どうよ?といった感じにディアッカが提案する。 イザークの腕の中で目を腫らしたが不安そうに見上げてくる。 言われてみれば、それが一番安心できるかもしれない。 今のところ停戦状態だからすぐに地球側と戦争となることはない。 が、何が起こるか分からないのもまた事実だ。 何かに巻き込まれてが乗り込んだ艦が砲撃を受ける事があるかもしれない。 そんな知らせを受けて次の報告を只管待っているよりも、砲撃を受けても同じ艦にいて状況を把握できるほうがよっぽどいい。 もの凄く個人的な理由でを自分の隊に入れてもいいのだろうか?ほかの者、ディアッカはともかく、こののことはもの凄く自分のためだけのことだ。 ディアッカに視線を送ると「良いんじゃない?」という表情だ。 「...分かった。Dr.。我がジュール隊に来ていただけますか?」 泣き腫れた表情のの顔が締まり、イザークから一歩下がって敬礼をする。 「は!光栄です!!」 兵士の目をしてそう言う。 イザークは、の、感情を殺した兵士の表情は好きではなかった。 昔も、今も。 「10分経ったよ」 カーテンが開けられて部屋の光が眩しい。 「ああ...」 明るさに目が慣れていないイザークは目を細めながら応える。 段々目が慣れてきて体を起こす。 「どう、疲れ取れた??」 「まあそれなりに」 そう応えるイザークにコーヒーを渡す。 「シャキッと目を覚ましてブリッジに向かってくださいよ、隊長」 イタズラっぽく笑いながらが言う。 「ああ、そうだな。いい加減戻らないとな」 カップの半分くらいコーヒーを飲んで立ち上がる。 「ありがとう、楽になったよ」 そう言ってドアに向かっていき、何かを思い出したかのように回れ右をして戻ってくる。 「どうしたの?」 不思議そうに見上げるを引き寄せて抱き締める。 「イ、イザーク?!」 「俺にはこれが一番効くんだ」 暫くを抱き締め、そして開放した。 その間際、にキスをする。 「じゃあ、また来る。ああ、軽症のパイロットは手当なんぞしなくていいからな。自業自得です。いいな?」 そう言ってイタズラっぽく笑い、イザークは上機嫌に医務室を後にした。 はイザークの触れた唇を押さえながら 「不意打ちとは卑怯なり」 少し赤くなって嬉しそうに呟いた。 イザークは時々こんな感じだ。 |
桜風
07.9.1
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