| 食堂で朝食を取っているとパイロットたちの会話が聞こえた。 今日は実践訓練の日だとか。 忙しくなりそうだ... 心の中で溜息を吐きながらは水を飲んだ。 「ご馳走様でした」 トレイを片付けて自分の仕事場である医務室へと向かう。 「お、」 途中、通路の交差点でディアッカと会った。 「おはよう、ディアッカ」 「何だよ、もしかして食べ終わった?」 「うん、まあね。美味しかったよ。てか、今日は実践訓練の日なんだってね」 先ほど食堂で小耳に挟んだ情報を確認する。 「そう。あー、って面倒じゃない?」 「商売繁盛してますよ」 苦笑いを浮かべて応える。ディアッカが『面倒』と指しているのはそのことだ。 「何かいい方法はないかねー」 呟くようにディアッカが言う。 「んー、そうは言ってもねぇ?ま、軽症は手当ての必要がないと隊長殿に指示を受けましたのでそのようにさせていただこうかと」 が言うと 「ああ、そうしとけよ。時間足りなくなるだろ?」 肩を竦めてディアッカが頷く。 「あ、そうだ。今度本国に帰ったときに何か奢らせてね」 突然そんな話題転換をされてディアッカは少し距離を取る。 「何を企んでんだ?」 「ああ、酷い。ディアッカの友情にありがとうの気持ちを表したいと思っての提案なのに」 ディアッカは話が見えない、といった感じに首を傾げる。 「イザークが珍しいことに、毎日会いに来てくれてる」 そう言うと納得したように頷いた。 「なら、奢られる」 「ま、本国に帰れるのはまだ先だけどね」 「だな。んじゃ、適当にしとけよ」 そう会話を終わらせては医務室へ、ディアッカは食堂へと向かった。 ずっとデータの入力をしていたが顔を上げて時計を見る。 「そろそろ、かな?」 伸びをして椅子から立ち上がり、コーヒーを入れて一息ついた。 ブザーが鳴り、逞しい体格の男性パイロットが数名部屋に入ってきた。 来た... そう思った。 「Dr.。申し訳ありませんが、手当てをお願いできますか?」 妙に期待に満ちた瞳をしてひとりが言う。 ディアッカからの噂を聞いたからか、ここにいるパイロット全員が本当に真面目に訓練したのか疑いたくなってくる。 なんと言うか。 的には好きな人が居るならやせ我慢をしてでもカッコいいフリをするものだと思っていた。 イザークがそのタイプ。 なのに、目の前のパイロットたちと来たら... 漏れそうになる溜息を我慢して、取り敢えず傷を見せてもらう事にした。 「はい、手当ての必要なし!」 「そんなー」 「貴方も軽症!」 「ええーーー」 「何処が怪我かわかんない!」 「よく見てください!」 「すこぶる健康!」 「いえいえ、恋の病...」 「そんなもん私には治せません!」 ばっさばっさと切っていくを前にパイロットたちも段々『今日のDr.は違うぞ?』という違和感を感じ始めた。 そして、医務室にやってきた全員が敗北を喫してトボトボと出て行った。 最後の人物が出て行ったのを確認しては椅子に深く凭れる。 「ふー、案外あっさり引いてくれたわ」 先ほど淹れたコーヒーを飲もうとカップに手を伸ばすとまたしてもブザーが鳴る。 振り返るとそこにはアレンだったか、アレックスだったかアーノルドだったか。とにかく『A』から始まる名前の常連が居た。 「どうかしましたか?」 カップに伸ばしていた手を引っ込め、椅子に浅く腰掛ける。 「手を、怪我してしまいまして」 笑顔で彼は言った。 その笑顔が非常に胡散臭く、ヤな感じはしたものの一応、『怪我をした』と言ってきたため見ないわけにはいかない。 「どちらの手ですか?見せてください」 そう言って手を差し出すと『A』はの手をグイ、と引き寄せそのままの体を乱暴にベッドに投げた。 「ウソです」 先ほどと変わらない笑顔で彼は言う。 どうしよう、と一瞬だけ躊躇い、すぐにベッドから起き上がって回線へと走った。『A』はドア側に居る。 が、素早い反応で『A』が立ちふさがる。 「甘いですよ。Dr.。さあ、大人しくしてください。あ、抵抗しても無駄ですよ。女で、ドクターの貴女が男で鍛えているパイロットの私に勝てるはずがありませんよね?聡明な貴女なら分かってくださると思います」 「分かんないわよ。急所ってのは鍛えられないから『急所』なのよ?それくらい、訓練を重ねている貴方なら分かるんじゃなくて?」 そう強がりを言いながらは時間を確認する。 イザークは大抵決まった時間にやってくる。だが、残念な事に、その時間まであと30分はある。 マズイ... の頬に汗が流れた。 |
桜風
07.9.8
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