月下に咲く花 7





まだ帰るには時間が早いが、解散しようと話になった。

まあ、別に一緒に行動する必要もないだろう。

そんな感じでショッピングモールの入り口付近の公園の側でとディアッカは別れた。


さて、買い物でもして帰ろう。

そう思ってショッピングモールへと向かう途中、は足が竦んだ。

「やあ、キミは...」

何故か、停車していた車の中にギルバート・デュランダルがいた。

「ぎ、議長。こんな所でお目にかかれるとは...」


は、 直感でデュランダルを畏れている。

何がどう怖いのか、と聞かれて具体的には何も挙げられない。ただ、纏っている空気が、得体の知れない雰囲気が怖い。

「キミは、確かジュール隊のドクターだね?元は、クルーゼ隊の...」

「はい。しかし、クルーゼ隊は早々に離隊いたしました。本国で医療を学ぶように、と命じられてアカデミーへ戻りましたので。第二次ヤキン・ドゥーエ防衛戦には間に合いませんでした」

最敬礼をしながら応える。

「ああ、敬礼はしなくていい。そうか...では、今回何故ザフトに?」

「は!今の私に出来ることがあるからです」

震える声で答えた。

情けない。

せめて瞳は揺るがないように、と気を張る。

「ところで、キミは...」

デュランダルが再び何かを聞こうとしたところで

!」

と名前を呼ぶ声がそれを遮る。

振り返るとディアッカ・エルスマンが走って戻ってきた。

「悪い、トイレが込んでて...て、失礼しました!」

デュランダルの存在に気付いて敬礼をする。

「ああ、いや。そうか、邪魔したね。では、また」

そうデュランダルが話を締め、車が走り始める。

それが見えなくなるまで見送り、2人とも脱力した。



「何で、ディアッカ...」

「ちょっとな。振り返ったらが黒塗りの車に向かって蒼褪めてるだろ?あの表情、思い出してさ。これはマズイかなって。何、議長も苦手なの?」

ディアッカが何か気になって振り返るとは黒塗りの車に向かって最敬礼をしていた。怯えたように。

その表情は昔も見た。

はラウ・ル・クルーゼを苦手だと言っていた。何を考えているのか分からないから。

それは仮面のせいだろう、と仲間たちとからかったがそうではないという。何か、底知れない憎悪のようなものを感じる、と。

そして、それは結果として正解だった。

ラウ・ル・クルーゼは世界を憎み、恨んでいた。

経緯や詳しい事は良く分からないが、世界を壊そうとしていたのは事実だ。

そんなが心配になって駆け出した。

名前を呼んで話を途切れさせて、そして今気付いたかのように敬礼をする。

予想通り、ギルバート・デュランダルだった。でも、何故こんなところに?

デュランダルはそのまま去っていった。正直ホッとした。


場所を公園の中に移してベンチに座る。

「大丈夫か?」

少し震えていたもだいぶ落ち着いたようだ。

「うん、ありがとう。ディアッカ、ごめんね」

「良いって。んで、やっぱそうなのか?」

「うん、何だろう。クルーゼ隊長と一緒。得体の知れない雰囲気がダメ。怖い」

「あのさ。俺としては、の事信じたいワケよ。クルーゼ隊長のこと見破ってたし」

「見破ったって...そんなんじゃないけど」

「まあ、意図としてじゃないにしても。の直感、信じた方が良いかなーってくらいには思うわけよ。イザークに話したことは?」

「ない」

はキッパリと答えた。

「何で?」

「イザークが、指揮官だから」

の簡潔な答えを少し考え

「どういうコト?」

ディアッカは詳しく話すように促す。

「指揮官に迷いは無いほうがいいでしょ?どっちに進むにしても迷っている間は動けない。動かないと船が沈むかもしれない。だから、イザークが信じるものは否定しない。第一、本当に直感以外の理由はないんだもん。道を選んだ上で、修正すれば良いでしょう?迷って立ち止まってる方がよっぽど怖い」

の言葉にディアッカは数回頷いた。

「ま。んじゃ、何かあったら副官として俺が進言するわ。状況見ながら話した方が良いだろうし。今のところは俺の胸の中に仕舞っとく」

「ごめんね」

困ったようには笑い

「良いって事よ。ま、このまま戦争の無い時間が続けばこの事も別に気に掛けることでもなくなるだろうしさ」

ディアッカが安心させるように笑う。


しかし、の胸には何か言い知れない不安がじわりと広がる。

理由は分からない。けれども、議長に対しては前からそんなに良い思いを抱いていない。

考えても出ない答え。

黒く、重く。不安がの胸にのしかかる。










桜風
07.10.6


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