月下に咲く花 8





眠たいはずなのに、はうっすら目を開ける。

「何だ、もう起きたのか」

すぐ側で声が聞こえた。

もぞり、とベッドの中で少し動いて首の角度を変える。

「今何時?」

定番の寝起きの言葉を口にしたに応えるように彼は首を巡らせ、

「まだ6時前だ」

と応えた。

「えー...ちょっとしか寝てない」

まだ明け切れていない目をしたままは不本意そうに呟く。

「軍人の鑑だな」

隣に居る彼はと違って楽しそうだ。

「体内時計、って凄いね...」

もぞりとまた動いて頭の下に敷いている、ほど良く筋肉がついている締まった二の腕を掴んで頭の下から外す。

「何だ?」

「重いでしょ?」

「...もう慣れたな」

楽しそうに彼はそう一言言った。



ディアッカに食事をご馳走してもらった翌日、はイザークと買い物に出かけた。

その翌日、つまりは『今日』なのだが、ジュール家でホームパーティをするという。

イザークの恋人であるも呼ばれ、だったらこの機会に新しい服を買いたいという話になった。

ホームパーティだからそんなに畏まったドレスである必要は無いが、それでもなんだか可愛い服が着たい。

の持っている服といえば、学会などで着るようなフォーマルなスーツ。

あとはカジュアルな平装。ザフトの軍服。

それくらいだ。

「持ってただろう、アカデミーの卒業記念パーティで着ていたのが」

イザークが言った。

言うな!とは思う。

「新しいのが欲しいの!」

はそう主張したが、何故欲しいかという理由が何となく分かったイザークはクツクツと肩を揺らせて笑う。

クッ、とは屈辱を受けた表情をしてそんなイザークから顔を背けた。

ええ、そうよ。ウェストがきついのよ!!

声を大にして言いたかったが、自分の受けるダメージが大きく、それだけは避けたいと思い、無言で堪えた。


そんな遣り取りの後に、イザークとは久しぶりのデートを楽しんだ。

食事を終えてホテルへと向かう。

案内されたのはスィートルーム。

は呆れた表情で部屋の中を見渡す。

「あいっかわらず...どうやったらこんな部屋取れるの?」

「まあ、色々と有るからな」

そう言いながらイザークは側のソファにが新しく買った服が入った袋を置いた。

シャワーを浴びて2人はベッドで何度も体を重ねた。



そして、今に至る。


が自分の指とイザークの指とを絡めて遊んでいると違和感がある。

「え、何コレ」

は呆然と呟く。

「虫除けだ」

とイザークは一言簡潔に応えた。

の右手の薬指にシルバーのリングが嵌っていた。

はそのリングを抜いて左手の薬指に宛がったところでイザークがその手を掴む。

「そっちはまだダメだ」

そう言っての手のリングを取って再び彼女の右手薬指に嵌めた。

は宙に腕を伸ばしてきらきらと光るリングを満足そうに見つめる。

「ねえ、これってマイウス市に本社のあるブランドのだよね」

プラントでもかなり有名なそのブランド名を口にする。

「ああ、確かそうだったかな?見て分かるのか?」

「一応。女の子が憧れるブランドベスト3には入るよ」

「へぇ」と大して興味無さそうにイザークは相槌を打つ。

「あ!イイコト思いついた!」

が嬉しそうにはしゃぐ。

「何だ?」

「イザークもお揃い買おう?」

の言葉にイザークは驚き、

「俺はパイロットだから。指に嵌めていると操縦の感覚がいつもと違って危険だよ」

と断る。

「別に指に嵌めなくてもチェーンを通しちゃえばネックレス代わりになるよ。それなら良いでしょ?イザークにも虫除け!」

「ね、いいでしょ?」とおねだりモードで言われれば「分かった」という以外、イザークに選択肢はない。

イザークの返答を聞いて「楽しみだなー」と言いながら飽きずに右手の薬指を眺めるの額にキスをしてイザークが起き上がる。

「シャワーを浴びてくる。もう少し寝てていいぞ」

そう言いながら昨晩床に適当に脱ぎ捨てたガウンを拾って身に着け、バスルームへと向かった。










桜風
07.10.13


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