| 再びボルテールに乗船してから数日経ったある日。 丁度休憩時間が重なったとかでとシホがのいる医務室を訪ねてきた。 2人に紅茶を淹れてプラントから持ってきたクッキーを出して休憩をする。 話が盛り上がっている最中にブザーが鳴ってドアが開いた。 「あら、ディアッカ」 突然の訪問はディアッカだった。 基本的にディアッカはの居る医務室は訪れない。イザークに誤解されたら後々面倒くさいから、と本人が言う。 するような誤解など何も無いが、イザークに八つ当たりをされるのは確実であるため、医務室に近付かないのは賢明だと思われる。 だから、彼は怪我をしない限り医務室に来る事はない。それなのに、今は態々やってきた。 「どうしたの?」 が聞くとキョロキョロと部屋の中を見渡し、 「イザーク、見なかったか?」 と聞いてくる。 「今日は見てないよ?」 大抵1日1回はやって来るイザークだが、今日はお目にかかっていない。 「そっか」 「艦内放送で呼び出せば?迷子のジュール隊長、って」 がからかうように言うが、 「や。うーん...まあ、もう少し探してみるわ。イザークを見つけたらブリッジに行くように声掛けてくれ。てか、。今、空いてるなら探してくれない?」 そういわれた。 恋人の勘なのか、は結構イザークの居場所を見つけるのが得意だ。ガモフ時代もそんな特技を発揮してくれていた。 「わかった。ごめん、、シホ。留守預かってくれる?」 シホは少し難しそうな表情をしたが、 「いいよー。休憩時間が終わってもが戻ってこなかった場合、『エルスマン副官の命令でDr.の留守を預かってました』って主任に言うから。いいでしょ?」 とが言うと 「ああ。俺の名前出してくれて構わないから」 ディアッカが了承し、「悪いな」と言って医務室を後にした。 も白衣を脱いでそのまま医務室を後にする。 しかし、何処を探したら良いのだろう、と思いながら艦内を移動していたがブリーフィングルームの前に差し掛かって足を止める。 この部屋は普段は殆ど使われず、大掛かりな作戦を行うときにパイロットやメカニック、オペレーターが集ってその説明を受けて意見を述べる場となる。 一応、気になってドアを開けると部屋の隅の椅子に銀色に光るものが見えた。 はブリーフィングルームの中へ移動し、その銀色を目指した。 「イザーク」 椅子に腰掛けて腕を組んで俯いている。 寝ているのだろうか。 相変わらず色々一人で抱えているのかもしれない。 不意に引き寄せられた感覚を覚えて、気がつけばの目の前にはアイスブルーの瞳がある。 「どうした?」 「お、起きてたの?!」 驚いて少し大きな声で聞く。なんと言うか、自分はいつの間にかイザークの膝に乗っている状態だ。 「の声で名前を呼ばれたから目が覚めた。まあ、元々そんなに深く眠ってはなかったしな。それで、どうした?こんなところまで」 「えっとね、さっき何か。ディアッカがイザークを探しに来て。が艦内放送掛けて呼び出せばって言ったんだけど、ディアッカは渋ったの。それで、私にもイザークを探してくれって言うから...あの、下ろして」 の言葉の最後についたお願いに対して「イヤだ」と返事をしながらイザークは何かを考え込み、 「どういうことだ?」 と少し大きな声で問う。 「俺が居るって分かったんなら、離せって。ったく...」 不意に聞こえた声には慌ててイザークの肩越しにドアを見る。ディアッカが呆れたように髪を掻き上げていた。 はイザークの肩をパシパシと叩いて抗議をし、イザークも仕方ない、とを抱えていた腕を緩めて立ち上がる。 ディアッカは部屋の中に入ってきて、をちらりと見る。 その視線の言いたいことを察したは「じゃあ、ね」と席を外そうとしたが、イザークに腕を掴まれた。 「俺を探しに来たんだろう。その原因くらい聞いてもバチは当たらないと思うぞ」 イザークのこの言葉がディアッカに説明を促す。 「さっき、アーモリーワンから連絡が入った。ガンダムが3機何者かに強奪されたらしい。詳しい報告はブリッジで確認してくれ」 ディアッカの報告を聞いてイザークの眉間に深い皺が刻まれた。 「わかった」 間を置かずにそう返事をしてを見る。 はディアッカの言葉に驚いて言葉が出ない。 「大丈夫だ」 とイザークはの頬を撫でて一言言う。 「ディアッカ、悪いがハーネンフースを探して彼女にもブリッジに来るよう声を掛けてくれ」 イザークの言葉を聞いてディアッカがを見る。 「まだ医務室にいたら声を掛けるけど、居なかったら...」 「居なかったらシュミレーションルームか、自分の部屋か。あとは...ドッグかな?彼女が居なかった場合ブリッジに連絡してくれ。その3箇所に連絡入れてみるから」 ディアッカに言われては頷き、走って部屋を後にする。 「...ヤな感じがするな」 「そうだな」 が居なくなり、2人はブリーフィングルームを後にしながら呟く。 が医務室に戻ると丁度シホが退出するところだった。 イザークがブリッジに来るように言っていたことを話すと彼女は礼を言ってブリッジに向かう。 「、何かあった?顔、真っ青だよ?」 が心配そうに声を掛ける。 「大丈夫。ちょっと、運動不足かな?久しぶりに走ったから」 何かを誤魔化すようにが言い、はそれ以上を追求しようとしなかった。 休暇中に、デュランダルを前にして胸の中に広がった不安がまた広がる。少しずつ何かに形を変えて現実となっていくような... 「大丈夫だ」という先ほどのイザークの言葉が、少しだけその不安を和らげてくれていた。 |
桜風
07.11.16
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