月下に咲く花 16





「Dr.

医務室に詰めているとイザークが呼ぶ。

「ジュール隊長?!いつ戻っていらしてたのですか?」

お互い心の中で『気持ち悪い...』と思いつつもそんな他人行儀。


軍事ステーションに戻ってきたのでが看ていた負傷者は病院に移し、今は静かな医務室となっている。

数時間前までは泣き喚いたり呻いたりする兵士の声がこの部屋に響いていた。


「今、来たばかりだ。取り敢えず、呼び出しがあった。一緒に来てくれ」

「はあ?!」

イザークの言葉には胡散臭そうな表情をしながら聞き返す。

「ホント。俺とイザークと。3人で来いってさ」

「ディアッカとイザークは分かるけど。私も?」

イザークの隣でずっと小さく笑いながら立っていたディアッカがフォローをいれ、それでもはイマイチ納得できない。

「ま、いいから。ステーションに居る間は医務室開いてなくても困らないだろう?ほら、行こうぜ」

ディアッカに急かされては白衣を脱ぎ、ダークグリーンの軍服の上着を引っつかんだ。

廊下を歩きながら上着の袖を通す。

「何処に呼び出されたの?」

「評議会。内容はわかんないんだけどな」

ディアッカが答え、

「議長の呼び出し」

と小さくに教える。

泣きそうな顔でがディアッカを見上げて「おなかが痛いから欠席って、無理?」と同じく小さな声で問う。

「無理。つか、って何で議長に気に入られているの?」

「や、分かんない。私としては議長たる者、遠い人のままでいてほしい存在なのに...」

項垂れながらが呟いた。

「何を話してる?!」

少し先を歩くイザークが振り返ってとディアッカに少し鋭い口調で聞く。

「んー、いやな。イザークが戦場を駆けている間もどれだけ恋人の事を案じているかをに教えてあげてたところ」

「だから、イザークはちょっと黙ってて。で、続き」

咄嗟のウソも結構あわせられる2人である。

そして、イザークはというと

「な!?ディアッカ!キサマ!!黙れ!!」

真っ赤になってそれを阻止しようとする。

「え、本当にイザークってばそうなの?」

が聞いてみるとディアッカは楽しそうに頷く。

「うわ、ぜひとも本当に詳しく聞きたいなー」

「後でな」

ディアッカの言葉に「楽しみ!」と呟きはイザークに並んで歩き出す。イザークのご機嫌斜めは色々と周囲に迷惑だ。


評議会に着くと評議会より任務を言い渡される。

今プラントに来ているアスラン・ザラの護衛と監視。

は首を傾げてディアッカは内心溜息を吐く。そして、必死に抑えているが、イザークはかなりご立腹だ。

「それでは目立つから着替えて行きたまえよ」

秘書でも何でも寄越せばいいのに、議長自ら直接任務を命じている状態だ。

3人は敬礼をして承諾し、部屋を後にした。


「ったく。何なんだ、アイツは!」

服を着替え終わってディアッカの運転するエレカに乗り、アスランの滞在するホテルへと向かう。

「アスランって、オーブの代表の護衛とかしてたんじゃないの?」

「そうだな。どうしたんだろうな」

適当に相鎚を打つディアッカ。

「何しに来たんだ、全く!」

「ホントだねー」

憤るイザークにはのんびりと応えた。

アスランのホテルの部屋のブザーをイライラしながらイザークが押す。

後ろでディアッカは諦めモードで溜息を吐き、はウキウキしていた。久しぶりに見られるかもしれない。

ガチャリとドアが開き

「イザーク!?」

アスランが驚きながら訪問者の名前を口にする。

「きっさまー!!」

いきなりアスランの胸倉を掴んでイザークはそのまま部屋の中に入り、ディアッカとも続く。

「良かったな、久しぶりに見れて」

「うん、楽しいよね」

「...それは、だけ」

続いて入りながらそんな会話を交わす2人。

「一体これはどういうことだ!?」

イザークが怒鳴ると

「ちょ、ちょっと待て、おい」

アスランは困惑気味に言いながらもイザークの腕を振りほどく。

「何だって言うんだ、いきなり!」

「それはこっちのセリフだ、アスラン!俺たちは今ムチャクチャ忙しいってのに、評議会に呼び出されて何かと思って来てみれば、貴様の護衛監視だと!?」

「え?」

アスランは初耳だったらしく、驚きの声を漏らす。

「何でこの俺がそんな仕事のために、前線から呼び戻されなきゃならん!」

忌々しげにアスランに訴えるイザークの言葉に

「まあ、しかも隊長だもんね」

が呟き、

「そうだよな」

ディアッカも同意する。

「護衛監視...?」

アスランは理解できないといったように呟き、

「外出を希望してんだろう、お前」

ディアッカがそれをフォローするように漸くアスランに声を掛ける。

「ディアッカ!」

「おひさし。も居るぜ」

と後ろに居るを振り返る。

「久しぶり〜」

ヒラヒラと手を振るにアスランは目を丸くする。

「けどまあ、こんな時期だから。いっくら友好国の人間でも勝手にプラント内をウロウロはできないんだろ?」

部屋の中を少し歩きながらディアッカがこの状況を口にし、

「あ、ああ。それは聞いている。だれか、同行者が付くとは。でも、それが、お前?!」

アスランが応えてイザークを見る。

「そうだ!」

まだご立腹のイザークが肯定し、鼻を鳴らしてそっぽを向く。

「ねえ、そろそろ出ないと。時間ないでしょ?」

に促されて部屋を後にした。


「ま、事情を知ってる誰かが仕組んだって事だよな」

「私がこの中に入ってるってのを思うと、特にね...」

自分たちに今回の任務を命じたその人物を思い浮かべながら諦めたようなそんな口調では呟き、アスランを振り返る。

アスランは少し考えていたが、その誰かを思い当たり、少し頬を緩めた。

エレベーターで1階に降りて

「それで、何処に行きたいんだよ」

とディアッカが聞くと

「これで買い物とかいったら俺は許さんからな」

と恨みがましくイザークが続ける。

「そんなんじゃないよ」

少し呆れたような感情を含んだ声でアスランが応え、

「ただ、ちょっと。ニコルたちの墓に...」

と続ける。

「あまり、来られないからな、プラントには。だから、行っておきたいと思っただけなんだ」

「そっか」が呟き、4人は揃ってホテルを後にした。










桜風
07.12.14


ブラウザバックでお戻りください