| アスランの希望により先の戦争で亡くなった仲間たちの墓参りに向かうべく、花屋に寄って墓前に供える花束を3つ購入し、戦没者共同墓地へと向かう。 ミゲル、ラスティ、そして、ニコル。 3人の墓前に花を供え、敬礼をする。 「積極的自衛権の行使?!...やはり、ザフトも動くのか」 「仕方なかろう。核まで撃たれて、それで何もしないというわけにはいかん」 腕組みをしながら静かにイザークが応え、その言葉に、アスランも俯く。 「第一波攻撃のときも、迎撃に出たけどな、俺たちは。奴ら、間違いなくあれでプラントを壊滅させるつもりだったと思うぜ」 遠くで鐘の音が鳴る。 4人は少しの間沈黙していたが、それを破ったのはイラつくように呟いたイザークの一言だった。 「で。キサマは」 「え?」 「何をやっているんだ、こんな所で!」 まっすぐアスランの目を見て言うイザークに対して、その視線を避けるように俯くアスラン。 「オーブは、どう動く!?」 「まだ、分からない」 搾り出すように応えるアスランだったが、 「戻って来い、アスラン」 イザークが静かに訴える。 アスランは驚いたように、少しだけ顔を上げた。 「事情は色々とあるだろうが。俺が、何とかしてやる。だから、プラントに戻って来い。お前は」 「いや、しかし...」 「俺だって、コイツだって。本当だったらとっくに死んだはずの身だ。だが、デュランダル議長はこう言った。『大人たちの都合で始めた戦争に、若者を送って死なせ、そこで誤ったものを罪と言って今また彼らを処分してしまったら、一体誰がプラントの明日を担うというのです。辛い経験をした彼らたちにこそ、私は平和な未来を築いてもらいたい』」 そう言ってイザークは一度言葉を区切る。 「だから、俺は今も軍服を着ている。それしかできることは無いが、それでも何か出来るだろう。プラントや、死んでいった仲間たちのために」 「イザーク...」 「だから、お前も何かしろ」 アスランは静かにイザークの言葉に耳を傾け、 「それほどの力、ただ無駄にする気か」 少し、何かを考えるように、ニコルの墓標に視線を移した。 エレカへ戻る途中、はアスランの服の袖を引く。 「どうしたんだ、」 「ひとつだけ、正直に答えて」 真剣なその眼差しにアスランは思わず頷く。 「ラクス・クラインは地球に、オーブに居るのよね?ホンモノは」 の思いも寄らない質問にアスランは絶句し、「なぜ...」と呟く。 「お願い、正直に答えて」 先ほどと同じ言葉を繰り返す。 アスランはぎこちなく頷いた。 「やっぱり...」とは呟き、目を伏せる。 「何故、彼女が偽者だと...?」 「これ、内緒話としてお墓に入るまで持ってってくれる?」 困惑しながらもの言葉に頷く。 「ウチの母、クライン家と縁があるの。だから、ラクスとは小さい頃何度も遊んだ。けど、彼女のお父さんが最高評議会議長になったり、アスラン・ザラと婚約した頃からはあまり会わなくなった。アスランと婚約してから会ったのは2回くらいかな? まあ、それは良いわ。 双子ってのは聞いてないし、親戚筋にもあんなに彼女そっくりな子は居なかったはず。雰囲気が全然違うしね。だから、確認したかったの。彼女が変わってしまってああなったのか、それとも..別人か。 本人でなかった場合、何故ここにもラクス・クラインがいるのだろうって。 ラクスがオーブに居るってのは公表されてないから突然彼女のそっくりさんがラクス・クラインを名乗って出てきたら誰もが信じると思うの。本当に彼女に近しい人以外は。 でもね、今プラントに居る彼女がラクスだとしたら、オーブにいるラクスは?寧ろ、プラントからしてみれば邪魔にならない?本物と偽者が対峙したとき、本物が勝つわよ。モノが違いすぎる。そうなったら偽者を担ぎ出したプラントとしては体裁が悪い。だったら、本物と対峙させないようにすれば良い。どうやって?ホンモノが、二度と人前に出られなくなれば良い。一生、永遠に」 の言わんとしている事を理解したアスランは視線を向けて眉間に皺を寄せる。 「オーブの、本物のラクスの命が狙われるという事か?」 「極端な話、だけどね」 「しかし、議長がそんな...」 アスランが呆然と呟いているとエレカの前に立っているイザークが 「何をしている!早くしろ!!」 と神経質に叫んでいる。 「ごめんなさーい!」 はそう言いながら今の話は何でもないことのように駆け出す。 ホテルに戻ると、 「あー、アスランは俺が送るから。お前らここで待ってろよ」 と言ってディアッカがアスランと共にエレカを降りる。 エレベーターに乗ってディアッカが口を開いた。 「で、と何を話したんだよ。イザーク宥めるの大変だったんだぞ?」 軽い口調だが、視線が鋭い。 「いや、知らない方がいいことかもしれない。あの時話した事は内緒話として墓の中まで持っていくという約束だし」 アスランが肩を竦めながら答える。 「そっか?んー...まあ、お前が俺に気を遣ってそう言ってくれてるのに、俺は逆のことをしようと思う」 ディアッカの言葉にアスランは「はあ?」と眉間に皺を寄せた。 「、議長が怖いんだと。クルーゼ隊長のときみたいにな」 がラウ・ル・クルーゼを畏れていたことはダークレッドを着ていた仲間たちには周知の事実だった。勿論、ダークレッドだったアスランも知っていることだ。 最初はラスティが仮面が怖いんだろうなどとからかっていたが、そうではないと彼女は否定していた。 そんな中での本国への帰還命令は彼女にとっては有り難いことだったのかもしれない。 そして、戦争が進んでいくうちにクルーゼの世界に対する憎悪が明らかとなっていった。 「まあ、ホント。クルーゼ隊長のときも、今回のも。結構の勘ってだけなんだけどな。理由を聞いてみたけど、よく分かんないって。でも、俺的には信じてもいいかなーって感じはする」 「...イザークには?」 少し考えたアスランが聞くと 「あ、やっぱりお前も俺と同じ事言うな。言わないって。信じるものが揺らいだら迷うから。指揮官が迷ったら、動けなくなるからってさ。の言ってること分かるから、折りを見て俺から話すって言ってるけど。 お前がこれから何を選んでどう動くか。それは分かんないし、お前が決めることだから何かを言おうとは思わない。イザークがもう言っちゃったし。ただ、知っておいた方が良いかと思ったんだ。お前もイザークとは違う方向でまっすぐだからな」 丁度アスランの宿泊している階にエレベーターが止まる。 部屋の前までついて行き、 「んじゃ。もしかしたら、またな?」 そう言って去ろうとするディアッカの腕を掴み、 「ディアッカ、を気に掛けておいてやってくれ。彼女は、知りすぎているかもしれない」 と低い声で訴え、手を離す。 少しの間驚いた表情でディアッカはアスランを眺めていたが 「りょーかい」 と軽く手を挙げてそのままエレベーターへと向かった。 「これって、イザークに言ったほうが良いのか?」 溜息混じりにディアッカは呟いた。 |
桜風
07.12.21
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