月下に咲く花 18





ザフトによる地球への降下作戦が決まった。

ジュール隊はその作戦に名が挙がらなかった。

防衛作戦の方が任務となり、いつでも出撃できるように変わらず軍事ステーションで待機命令が出ている。


アスランが再びザフトの軍服に袖を通したという噂を聞いた。そして、フェイスとなった事も。

元々イザークが口利き等をしなくても議長が推薦していたことを聞いて、ちょっとムカついた反面、納得した。



開戦してしまったお陰でイザークの仕事はてんこ盛りだった。

今度こそ自分の時間がなくなる。

部下に任せられる仕事は極端に減ったし、自分自身、今まで以上に書類に目を通しておきたいと思って山積みの書類を手にとっている毎日で、会議も意外と多い。

深い溜息を吐きながらドックへと向かう。

イザークは隊長だが、それ以前にパイロットだというのに、MSの調整する時間も殆ど無い。

やっと取れた時間をドックで自機の調整に充てようとしている。

「うわぁお、珍しい!」

イザークがドックに入ると突然声が聞こえた。

「何だ。まだ何かしているのか?」

居たのはメカニックで同期のだった。

「まあねー。イザーク、時間取れたの?」

「無理矢理取った、といった感じだな。いい加減、自分で調整したい」

自機のスラッシュザクファントムへ向かいながら応えた。

「あ、ホント?じゃあ、少し時間取れたんだ?手伝うわ」

そう言ってもイザークのMSへと向かう。


イザークはコックピットに入り、は外からサポートを務める。

「休まなくても良いのか?」

手元のキーボードを操作しながらイザークが顔を上げずに聞く。

「んー、さっきコーヒー飲んじゃったから目が覚めた。ついでにクッキーも食べたし」

もモニタから顔を上げずにそのまま応える。

のところか?」

「そ。羨ましいでしょ」

笑いながらが応えると「そうだな」と意外な返事がイザークの口から漏れる。

「うわ、気持ち悪い」

「船酔いか?」

何が気持ち悪いと言っているのか理解した上でイザークが聞く。

のマネ?ヒネリがないね」

「そうか?」

少し笑みを含んだ声でイザークが聞く。

「そうだよ」とも笑いながら応えた。


暫く作業を進めていたが、イザークが手を止め、目を瞑って深く息を吐く。

「休憩できる?」

がコックピットの中を覗きながら聞くと

「そうしよう」

イザークはコックピットから出ることにした。

「待ってて」と言われてMSの前で待ってるとがカップを持って来る。

「はい、どうぞ。ごめん、ちょっと冷めてる」

そう言って差し出したのはコーヒーだ。

「益々眠れなくなるぞ?」

受けとりながらにそう言う。

「大丈夫。眠いときはコーヒーを飲んでも寝れるから」

そして、は少し聞きにくそうに「あの、さ」と切り出す。

「何だ?」

、最近変じゃない?」

遠慮がちに言う。

チラリとを見てイザークはコーヒーを一口飲み、

が言うなら、そうなんだろうな。俺も少し気になっていたんだが、が言いたくないようだから聞いてないんだ。最近は全く顔を合わせることがないしな」

「そっか」

カップに口をつけたままは呟く。

「ディアに聞いたら分かるかな?」

「ディアッカ?何故?」

とディアッカは幼稚舎が一緒だったらしい。

出身プラントは違うが、アカデミーで再会して再び友情を温めている。

「んー、怒んないでよ?」

「良いから言ってみろ」

「別にディアがを狙っているとか、がディアにたぶらかされるとかそう言うのは天変地異が起こってもありえないことだというコトを前提として。
って、どこかディアを頼りにしてる感じしない?」

イザークは舌打ちをしながら「する」と同意する。

「まあ、イザークが頼りないっていう訳じゃないと思うのよ。ただ、何だろう。イザークって馬鹿正直なところあるでしょ?」

「『馬鹿正直』とかって言うな」

半眼になって抗議する。

「んでもって、ディアは結構世渡り上手」

「それは、認める。あいつの長所だし、短所でも有ると思う」

「まあ、お陰で何故か貧乏くじを引いている気がしないでもないけど。まあ、今のところは長所ってのが強い気がするかな?それを踏まえて。適材適所といった感じじゃないかな?」

の言葉にイザークの眉間に皺が寄る。

しかし、ふぅ、と深く息を吐いてコーヒーを飲んだ。

「ま、そうなんだろうな」

イザークの言葉には目を丸くして凝視する。

「何だ?」

気味悪そうな目で見られると、当然の事ながら居心地が悪い。

「イザーク、大人になったね...暴れ出したらどうしよう、って思いながら話してたのに」

「俺は怪獣か」

「その方がまだ納得できたかも。ディアが」

アカデミー時代から寮などでイザークと同室となったディアッカはイザークの癇癪のお陰で色々と苦労を抱えていた。

その英雄譚というべき苦労話を、はいつも楽しそうに聞いていた。

益々ディアッカがへこむのを気にしないで。

「ディアッカを締めて吐かせられれば手っ取り早くて良いんだがな」

「無理でしょうね。意外と義理堅いから」

疲れのせいか、結構酷いことを言っている2人は息を吐き、

「じゃ、もうひと踏ん張りしますか」

「ああ、そうだな」

作業を再開する事にした。










桜風
07.12.28


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