| 射撃の合同演習の日、は憂鬱極まりなかった。 本当に当たらないのだ。 の言ったとおり大抵のことができていたため、苦手なものに直面するとどうも腰が引ける。 はぁ、と盛大な溜息を吐いた。 気配がしてが顔を上げるとディアッカがニヤリと笑う。 「から聞いてるから凄い楽しみなんだけど」 は視線を逸らして再び大きな溜息を吐いた。 「そんなに苦手なのか?」 いまいち信じられないといった風にイザークが聞く。共通カリキュラムの授業ではは結構優秀だ。 「もういいよ。私、この先何かあったときナイフで応戦するからいいよ...」 遠い目をしてそう言った。 「あ、さん!」 ニコルがの姿を見つけて声を掛けてくる。 「こんにちは、ニコルくん」 「今日は頑張りましょうね!」 「うん」とは溜息交じりに返事をした。 実習中、ディアッカは笑いを堪えるのに必死で、イザークとニコルは呆然とした。 ギャグか何かだろうか... 本当に当たらない。 教官は「ふざけているのか!」と怒鳴り散らしているが、どうやら本人は至って真面目に射撃の訓練をしているらしい。 だって、眼差しが真剣そのものなのだから。 イザークはふぅ、と溜息を吐いた。 教官に怒鳴り散らされて落ち込みながら射撃場から戻ってきたにアドバイスをしようとしたが、 「。さっきの撃ち方だが...」 何故かアスランがアドバイスを始める。 ギリ、と奥歯を噛み締めるイザークを見てディアッカは大仰に溜息を吐いた。部屋が... その後のイザークの射撃は鬼気迫るものがあった。何処かの誰かさんへのライバル心むき出しだ。 「何々?イザークってばどうしちゃったの?」 オレンジ髪のラスティが興味津々にディアッカに声を掛ける。 「さぁ、どうしちゃったんだろうな...」 イザークがに想いを寄せていることなんて見え見えで、ディアッカはと楽しくその行方を見守っていたのだが。 こういう展開か... ちょっとだけ泣きたくなった。今日も部屋の片付けで夜が更けていく予感がした。 射撃訓練中、一際大きな音が鳴った。 見ると銃が暴発してしまったらしい。 衛生兵志願の生徒が沢山居るというのに、悲鳴をあげるだけの者やら足が竦む者が殆どで結局遠巻きに眺めているだけだった。 射撃の教官が駆け寄って周囲を見渡す。 皆怯えた目をしていた。 まだアカデミーに入って2ヶ月足らずだ。突然こんな大怪我を診るなんて腰が引けるのだろう。 残念ながら今の授業は飽くまで射撃なので医療を心得ている教官は同席していない。 勿論、軍人である自分にも応急処置の心得くらいはあるが... そう思っていたが一人、何でもないことのように近付いてきた生徒が居た。 ・。 先ほど、ふざけているとしか思えないセンスであさっての方向へ銃弾を飛ばしていた生徒だ。 「おい、」 教官に声を掛けられたが返事をせずにそのまま淡々と応急処置をする。 暴発した銃の欠片で肉が削げている手を見ても顔色ひとつ変えない。 皆が呆然と見守る中、応急処置を施し終わったは 「医務室に同行してきます」 そう言って今怪我をしたばかりの生徒に肩を貸して射撃練習場を後にした。 ニコルとディアッカ、アスランは顔を見合わせた。 ちょっと、凄いかも... あさっての方向へ銃弾を飛ばしてもの仕事は怪我人や病人の治療だ。つまり、自分の仕事は出来るということだ。 「ちょっと、見直した」 ディアッカが呆然と呟き、ニコルとアスランも頷く。 イザークだけは嬉しそうに、誇らしげにの背中を見送っていた。 |
桜風
08.1.12
ブラウザバックでお戻りください