| とが休憩時間にパイロットの訓練を見学した。 その日の訓練はシュミレーションを使った模擬戦闘だった。 「へー、意外と」 「凄いね。アスラン」 の呟きにイザークのこめかみはピクリと痙攣する。 それを目敏く見つけたディアッカは心の中で深い溜息を吐いた。また部屋が... 他のパイロットに紛れて全く遠慮することなく見学するメカニックたちを見て意味も無く快く思わない人物たちも居た。 「さん」 挑発的にの名前を呼んだのは女性パイロットの中ではリーダー格の人物だ。 イザークたちが乗艦して以来、ザフトレッドのメンバーに何かとちょっかいを出してきている。 彼らは殆ど適当にあしらっていた。そんな彼らと仲が良いメカニックのたちが気に入らない様子だ。 「あなた、昔はパイロットになりたかったんですって?」 少し馬鹿にしたような口調だ。負け犬、とでも言いたそうな。 「それが何か?」 否定することなくが答える。何処から仕入れた情報か知らないが、間違ってはいない。 がと昔なじみであるディアッカに視線を向けると、彼はその視線を受けてを一瞥してニヤリと笑い、事の行方を見守る。 ちょうどシュミレーション用のコックピットから出てきたアスランたちは何だか今の状況が飲み込めない。 手近いにいたパイロットに声を掛けて説明を受けていた。 「それなのに何で、パイロットにならなかったの?ま、アナタ程度なら油に塗れている姿の方がお似合いでしょうけど」 そう言った彼女に、の同期のザフトレッドは不快を露にする。 パイロットがメカニックをバカにするとは... 「勝負してあげよっか?」 の言葉にその場にいた人物全員が驚いた。勿論、喧嘩を吹っかけた人物さえも。 「そ、そんなこと言って良いの?」 「いいわよ。あなたが、もうパイロットやっていけなくなるけど。そんなの私には全く関係ないし。さ、始めましょ。、これ持ってて」 そう言って腰に巻いているベルトを外す。 メカニックの命ともいえる工具がに渡された。 「おい、」 声を掛けたのはディアッカではなく、ミゲル。 「ミゲルは黙ってて」 そう言ってはそのままシュミレーション用のコックピットに入っていった。 「ミゲルっての知り合いだったの?」 ラスティが聞くと 「そ。まあ、家がご近所でな。、確かに昔っからパイロットになりたかったんだよ」 「けど、MSには乗れない体になった。だろ?」 ミゲルの言葉に続いてディアッカが言う。 「まあ、な。だから、メカニックを目指したんだ。ヘタクソでも上手く乗れるように整備してあげようって」 そんな話をしていると試合開始のブザーが鳴る。 「あ!ちょ、待て!」 突然アスランが慌てだす。 「なに?」 が聞くと 「さっきの。負荷を掛けようと思って設定を随分変えているんだ。慣れてないと...」 アスランが慌てたように言っている間に戦闘をしながらもがキーボードを操作している。 その間、全くの機体に着弾はなく、そのキーボードの操作の合間にが攻撃をすればそれがMSに掠ったりした。 が目の前に出していたキーボードを仕舞う。 背中しか見えないけど、は頭を左右に傾けた。「さて、と」と言っていそうなそんな仕草。 操縦桿を握った途端、のMSは一気に相手との距離を詰めてそのままビームサーベルで真っ二つにする。 派手な爆発が映像として流れた。 は何事もなかったかのようにコックピットから出てくる。 「ありがとう」と言ってに預けた自分の仕事道具を受け取り、再び腰に巻く。 ノロノロと反対側のコックピットから出てきた彼女はさっきとは全く逆の表情だ。自信に満ち溢れていたあの表情は幻だったかのように怯えた目でを見る。 「メカニック如きに負けた気分はどう?アナタ、機体の性能を理解せずにただ振り回してるだけでしょ?そんなのMSが可愛そう。そして、いつか死ぬわよ」 表情を変えずには言い放つ。 「あと、アスラン。アレ何?負荷をかけるにしても、もっとまともなプログラム組んだら?」 あっけらかんと言われてアスランは「あ、ああ。すまない」と何となく謝った。 「な、何でアンタはパイロットじゃないのよ!」 「なれないから。適正検査に通らないからよ」 の言葉に彼女は息を飲む。の視線はとても鋭かった。 「コイツ、ガキの頃結構な高熱出して。それが何日も続いてさ。熱が下がったのは良いけど、どうしてか目の奥に傷がいってるんだ。日常生活に全く支障は来たさない。けど、パイロットみたいに激しい運動てのは無理な傷な?」 ミゲルがの頭に手を置く。 「てことで、パイロットを断念。なら、ヘタクソでもマシにMSを動かせるようにメカニックになるっつって。幼稚舎に通ってるガキのときにそう言ってた」 ディアッカがミゲルの言葉を継ぐ。 「それが無かったら今頃ザフトレッドだよ。アスラン抜いてパイロットクラスで首席すら取れたかもしれない。っつうワケで、アンタは端から相手にならないって事だ。そして、コイツはMSの性能をものっ凄く勉強してるから、かなり頼れるメカニックなわけ。 仕事見に行ってる?自分で調整しようとかしてる?ドックに行けば分かるよ、こいつの仕事の凄さ」 恐ろしく褒め言葉ばかりが並び、は「褒めても何も出ないよ」と思わずディアッカを見上げる。「そっか、そりゃ残念」とディアッカはおどける。 「死ぬ気で訓練したら?シュミレーションだったら死なないんだから」 の言葉に女性パイロットとその取り巻きは逃げるようにシュミレーションルームから出て行った。 「知らなかった...」 が呟く。 「ごめんね、態々言うのもなーって思ってて。それに、大病を患ったって聞いたらコーディネーターとしてどうなんだ!って言われかねないなーって思って。に出会う前の話なんだ」 「ってミゲルと昔からの知り合いだったんだね」 「...そっち?」 の見当はずれな一言には笑いながら突っ込みを入れる。 この話をすると、大抵哀れか蔑みの視線を向けられた。もうそういうのは嫌だと思った。 だから、誰にも言わずにただ、自分が出来る進める道を選んでそこで努力をした。 その結果、得たものが今目の前にある。意外と悪くない。寧ろ、結構上等だ。 「さ、もう行こう。訓練終わっちゃったみたいだし」 そう言ってはの腕を取って部屋を後にする。 何だか凄く気分が良い。 |
桜風
08.2.23
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