| シホが卒業するまで何度かに誘われ、と一緒に食事を摂ったりと親交を深めていった。 そして、卒業間近にシホの配属先が決まった。 は、噂どおりすんなり卒業させてもらえなかった。 卒業式があった日の夜、シホが寮の裏手にあるホールへと足を運んでみた。一度も使われなかったそれは、が言うには卒業記念パーティを開かれた時代もあったらしい。 ホールのテラスの欄干に誰かが座っていた。 足をぶらぶらさせて、空を見上げている。 「?」 月明かりに淡く光るその髪を見て彼女だと気付いた。 「シホ」 は「よ、」と言いながら欄干から飛び降りる。 「卒業、おめでとう」 「ありがとう。その、残念だったわね」 なんと言っていいか分からない。きっとこの言葉で間違いはないと思う。 「そうね、凄く残念。ねえ、シホ。生きてね?」 の言葉にシホは目を見開く。 「...ええ」 はアカデミーに居る間、噂で友人たちの死をいくつも聞いた。 には直接確認をしていない。出来るはずがない。彼女の昔からの知り合いのミゲルは戦死した。 幼馴染のディアッカもMIAだと聞く。 はこの戦争で、何人もの近しい人物との別れを経験している。 それなのに、と再会して以来、はのことを気遣ってばかりだ。 だから、もの前では務めて明るく振舞う。 シホはそんな2人を見て痛々しいと思っていた。 「も、元気で。えーと、イザークさん?に会ったら貴女の話をしてみるわ」 「...いいよ、そんなに気を遣わなくても」 は寂しそうに笑った。 シホは何度か戦闘を経験して、配属先が変わった。 ジュール隊。 『ジュール』。どこかで聞いたと思った。代表評議員に確か、そんな名前の人物がいた事を思い出す。 そして、隊長に着任の挨拶をしたとき、シホは驚いた。 隊長の名前が『イザーク・ジュール』で瞳の色が澄んだ青空と表現してもおかしくない青だった。 しかし、この隊長には『短気で損気』という言葉がしっくり来ない。 でも、やっぱり... そんなことを考えて艦内を歩いていると 「どうした、最近」 と不意に声を掛けられて振り返れば短気で損気の隊長、イザークが疲れた表情をしながらも立っていた。 シホは慌てて敬礼をする。 イザークもそれを返した。 「あの、お聞きしても良いでしょうか?」 シホに言われてイザークの眉間に皺が寄る。 「何だ?」 「・というドクター、ご存知ですか?」 シホの言葉にイザークは驚いて眉を上げる。 「のことを知っているのか!?」 「はい、アカデミーで・を通して知り合いました」 もうひとつ懐かしい名前が出た。 ずっと張り詰めていたイザークの表情が俄かに緩む。 「そうか。アイツらは、元気だったか?」 イザークの問いに、シホは逡巡して、 「表面上は」 と答えた。 その言葉にイザークは少し顔を歪める。 散っていった友人たちの姿が浮かぶ。 「そうか...」 「私が初めてを目にしたときは、青空に向かって両手を伸ばしていました。何かに、触れたそうに」 その言葉を聞いてイザークの表情が曇ったのを目にしたシホは、「失礼します」と敬礼をしてその場を去った。 イザークは窓の外を眺めた。 遙か向こうに小さくプラントが見える。あそこにはが居る。 目を瞑ればの笑顔が浮かぶ。自分を呼ぶ声を思い出す。 しかし、それも少しずつ薄れてきている。 絶対に届かないことを承知でプラントに向かって手を伸ばす。 「遠いな...」 呟いた自分の声が、余計にそれを思い知らせる。 今、守りたいと思うものはひとつ。そして、それだけの力が自分にはある。 だったら、迷う事は無い。 イザークは目を瞑って深く息を吐き、また表情を引き締める。 若き隊長は背筋を伸ばしてブリッジに向かった。 |
桜風
08.3.29
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